「要約」と「概要」の違い|それぞれの書き方・例文も解説

「要約」と「概要」という言葉、どちらも「内容を短くまとめる」といった意味で使われることが多く、混同されがちです。しかし、実際にはその役割や使い方に明確な違いがあります。それぞれを正しく理解し、適切な場面で使い分けることは、文章力の向上だけでなく、情報を正確に伝えるためにも非常に重要です。
たとえば、大学のレポートやビジネス文書を作成する際に、「要約」と「概要」の違いが曖昧なまま文章を書くと、読み手に誤解を与えてしまうこともあります。一方で、両者の特徴をきちんと押さえれば、説得力のある文章が書けるようになります。
本記事では、「要約」と「概要」の意味や違いをわかりやすく解説し、それぞれの具体的な書き方や活用例も紹介します。実際に使える例文も豊富に掲載しているので、実務にもすぐ役立てられる内容となっています。
目次
「要約」と「概要」の違い

「要約」と「概要」はどちらも「情報を短くまとめる」という点では共通していますが、その目的や表現の仕方には明確な違いがあります。以下に、両者の違いをわかりやすく整理します。
項目 | 要約 | 概要 |
---|---|---|
目的 | 内容の本質や論理構造を伝える | 内容の全体像や構成を伝える |
情報の深さ | 重要な情報に深く立ち入る | 内容を広く浅く扱う |
表現の仕方 | 主張や根拠などの要点を圧縮 | 内容をざっくり紹介 |
使用場面 | 論文・レポート・読書感想など | 企画書・商品紹介・Webサイトなど |
■ 具体例で比較
- 要約の例(レポート)
「本レポートでは、環境問題に対する消費者意識を調査し、エコ商品選択に大きな影響を与える要因として“価格感”と“ブランド信頼”が重要であると結論づけた。」 - 概要の例(レポート)
「このレポートは、環境意識と消費行動の関係について調査し、分析結果を基に今後のマーケティング施策を考察している。」
■ 選び方のヒント
- 内容の要点をしっかり伝えたいとき → 要約
- 内容の大まかな全体像を示したいとき → 概要
目的や読者のニーズに応じて、「要約」と「概要」を適切に使い分けることが、伝わる文章作成の第一歩です。
「要約」の意味
「要約(ようやく)」とは、ある文章や話の中から重要なポイントを抽出し、簡潔な形でまとめることを指します。「要」は“重要な部分”、“約”は“縮める”という意味であり、「要約」は“重要な点を縮めてまとめる”という行為です。
要約には以下のような特徴があります:
- 情報の取捨選択が必要
- 原文の中で、何が重要で何を省略すべきかを見極める力が求められます。
- 正確性が重視される
- 元の主張や論理を歪めずに、要点を正しく伝える必要があります。
- 簡潔さが求められる
- 読み手が短時間で内容を把握できるよう、短く分かりやすくすることが重要です。
「概要」の意味
「概要(がいよう)」とは、ある内容の全体像を大まかに説明したものを指します。漢字のとおり、「概(おおまか)」と「要(要点)」から成り立ち、「物事の大まかな要点や枠組み」を示すときに使われます。
概要には次のような特徴があります:
- 全体の構成を示す
- 詳細な説明や具体例ではなく、「全体としてどういった内容か」をざっくり伝える役割があります。
- 導入や説明資料でよく使われる
- 読者や聞き手にまず概要を伝えることで、興味を引いたり、全体像を把握しやすくしたりします。
- 情報の深さよりも幅が重要
- 内容を網羅的に触れることを重視し、個々の細かい情報や論理展開には立ち入りません。
「要約」が使われるシーン

「要約」は、文章の主旨や論理展開を簡潔に伝える必要がある場面で活用されます。情報の取捨選択と整理力が求められるため、主に「内容の理解を深めたい」「伝える力を高めたい」といったニーズに応えるものです。以下に、代表的な使用シーンを紹介します。
■ 学術・教育分野
- レポート・論文の要約(アブストラクト)
研究の目的、方法、結果、考察を簡潔にまとめる。 - 授業の復習・ノートまとめ
授業内容の理解と記憶の定着のために要点を抽出する。 - 読書感想文や書評
本の要旨を要約し、そのうえで自分の感想や意見を述べる。
■ ビジネスシーン
- 会議議事録の要約
長時間の会議内容を要点だけ抜き出し、関係者に共有する。 - 報告書・プレゼン資料
長いデータや分析内容を簡潔にまとめ、読み手の理解を助ける。 - 上司や関係者への報告
内容を短く、かつ正確に伝えることで意思疎通が円滑に。
■ 情報発信・個人利用
- SNSやブログ投稿
文章や記事を端的に要約し、興味を引く見出しや導入として使う。 - 動画や書籍のまとめ記事
コンテンツ全体の理解を促し、短時間で情報を伝える手段として活用。
「要約」は読み手に配慮した情報の整理術であり、伝える力を高めるための基本スキルでもあります。
「概要」が使われるシーン

「概要」は、内容の詳細に立ち入らず、全体像や構成をざっくり伝えるために使われます。特に「はじめに」や「導入部分」としての役割が大きく、読み手に「これから何を扱うのか」を把握してもらうことが目的です。以下は代表的な活用シーンです。
■ ビジネスシーン
- 企画書・提案書の冒頭
提案の趣旨、背景、目的などを簡潔に記述し、本文の導入部として機能。 - 商品やサービスの紹介文
新製品の特徴、用途、利点などを一目で理解できるようにまとめる。 - 会社・プロジェクトの概要説明
事業内容やプロジェクトの骨組みを簡潔に提示し、相手の理解を促す。
■ 広報・Webコンテンツ
- Webサイトの「会社案内」「サービス概要」ページ
初めてサイトを訪れた人に、何を提供しているのかを素早く伝える。 - イベントやセミナーの紹介文
日程・場所・対象・内容の概要を掲載し、参加者の判断材料にする。 - パンフレットやカタログ
文字数制限がある中で、概要的に商品・活動内容を説明する。
■ 学術・研究活動
- 学会ポスターの「概要」欄
研究の全体像や目的を一目で伝え、興味を持ってもらうための導入部分。 - 講義資料の冒頭説明
講義の流れや目的をざっくりと伝え、学習意欲を喚起する。
■ その他の例
- 動画やコンテンツの紹介文
動画内容を短い文章で要点だけ紹介することで視聴を促す。 - イベントのプロモーション文
詳細なプログラムの前に、全体のテーマや魅力を要約して提示。
「概要」は“読者の第一印象を決める情報”とも言えるため、分かりやすく簡潔に、かつ興味を引く内容にすることがポイントです。
要約の書き方の手順

レポートの要約では、原文の主張や構成を正確に理解し、その中で最も重要なポイントを簡潔に伝えることが求められます。以下は、レポートを要約するための基本的な手順です。
ステップ1:原文を丁寧に読む
まずはレポート全体を通読し、内容や論理展開を把握します。主張や議論の流れ、結論がどこにあるかを意識して読みましょう。
ステップ2:要点を抽出する
読みながら、次の3つをメモしておくと効率的です:
- 問題提起や背景
- 論の展開(調査・分析・考察など)
- 結論や提言
この段階では、不要な細部や例は省き、論理の柱だけを押さえます。
ステップ3:構成を考える
要約文も「序論 → 本論 → 結論」の流れで構成すると、読みやすくなります。元のレポートと同じ構造を保つことで、理解しやすく、内容の整合性も高まります。
ステップ4:簡潔に文章化する
抽出した要点を短くまとめ、論理的に整った文章にします。冗長な言い回しを避け、主語と述語を明確にして書きましょう。目安としては、元の文量の10〜30%に収めるのが理想です。
ステップ5:見直し・推敲する
最後に、次の点をチェックして修正します:
- 原文の意図が正しく伝わっているか?
- 論理のつながりは明確か?
- 表現が簡潔かつわかりやすいか?
必要であれば、他者に読んでもらい、理解しやすいかを確認するのも有効です。
概要の書き方の手順

概要を書く目的は、レポート全体の構成や内容を「ざっくりと」伝えることにあります。読む人が本文を読む前に全体像を把握できるようにすることが重要です。以下は、概要を書く際の具体的な手順です。
ステップ1:内容の流れを把握する
レポート全体を通して読み、「何を問題として」「どう分析し」「どんな結論に至ったのか」という流れを大まかに理解します。
ステップ2:構成を整理する
レポートが「序論・本論・結論」のどのような構成になっているかを確認します。概要ではそれぞれの部分から、1~2文ずつ程度で要点を抽出するイメージです。
ステップ3:各要素を短く書く
以下の4要素を意識して、簡潔に書きましょう:
- 背景・目的(なぜこのテーマを選んだのか)
- 方法(どのように調査・分析を行ったか)
- 結果(何が明らかになったのか)
- 結論・示唆(何を主張しているか、今後の課題など)
※詳細なデータや議論の深堀りは省略します。
ステップ4:全体を滑らかにまとめる
それぞれの要素を1つの自然な文章としてつなげ、読みやすい文体で記述します。ですます調・である調の統一にも気を配りましょう。
ステップ5:読み手目線で確認する
最後に、概要だけ読んでレポートの内容が「おおよそ理解できるか」を確認します。第三者に読んでもらうと、より客観的なフィードバックが得られます。
シーン別「要約」の例文【20選】

以下は、日常やビジネスなどさまざまな場面で使える「要約」の例文20選です。内容の本質と論理構造を簡潔に伝える文章を厳選しました。
学術・教育
- 研究要約:「本研究はA手法を用いてB現象を評価し、Cの関係性を明らかにした。」
- 授業ノート要約:「○○理論は、××の法則に基づき、**現象を効果的に説明するフレームワークです。」
- 読書感想要約:「著者は△△を主張し、その根拠として××という実験データを引用しています。」
ビジネス
- 会議議事録要約:「今週の会議では、新規製品の市場投入日を8月1日とし、価格設定や販促戦略が議論されました。」
- 報告書要約:「先月の売上は前年比+8%、特にWeb広告の効果が業績を牽引しました。」
- 企画書要約:「本企画は若年層向けのサブスクサービスで、ユーザー獲得数を半年で20%増加させることを目的としています。」
情報発信・レビュー
- ブログ記事要約:「この記事では、初心者向けに○○の導入手順と活用メリットを画像付きで解説します。」
- 商品レビュー要約:「このイヤホンは音質がクリアで、連続再生10時間と軽量設計が評価されています。」
- アプリ説明要約:「このアプリは短時間の瞑想を促進し、睡眠の質向上に効果があると示されています。」
プレゼン・スピーチ
- プレゼン要約:「課題→提案内容→期待される成果という流れで、専門性と実現可能性を示します。」
- スピーチ要約:「地域貢献の重要性について語り、過去の成功事例を共有し、今後の展望を提示します。」
Eメール・報連相
- メール報告要約:「会議は7月10日午前10時から本社3階会議室で実施予定です。」
- 進捗報告要約:「プロジェクトは予定通り30%進捗。今週中にデザイン案を提出予定です。」
就職・自己PR
- 志望動機要約:「貴社の技術力に共感し、自身の開発経験を活かして〇〇領域で成長したいと考えています。」
- 職務経歴要約:「営業担当として年間1億円の売上達成、新規顧客50社獲得に貢献しました。」
日常・会話
- 口頭での要約:「要するに、コスト削減と品質向上が課題、次の施策は価格再検討と工程改善です。」
- ニュース要約:「政府が新たな子育て支援策を発表。補助金対象が拡大されました。」
- 旅行報告要約:「ホテルは快適で、現地グルメも充実していました。」
その他
- イベント報告要約:「セミナーは参加者100名超、Q&Aでは〇〇業界の課題が多く挙がりました。」
- サービス紹介要約:「この英会話サービスは、AI添削付きで短時間学習に特化しています。」
シーン別「概要」の例文【20選】

以下は、企画書・サービス紹介・イベント案内などの場面で使える「概要」の例文20選です。内容の大枠や構成をざっくり伝える文章を厳選しました。
ビジネス・企画書
- 事業企画概要:「本企画では、若年層向けに新しいオンライン教育サービスを展開します。」
- 提案書概要:「本提案は企業向けにコスト削減施策と働き方改革支援を目的としています。」
- 商品紹介概要:「新製品は軽量設計で持ち運びに便利、さらに高性能バッテリーを搭載しています。」
- プロジェクト概要:「本プロジェクトは、2025年に国内5地域での市場テストを予定しています。」
- マーケティング戦略概要:「デジタル広告を中心に認知拡大を図り、半年でユーザー数を30%増加させる計画です。」
広報・Webコンテンツ
- 会社概要文:「当社は○○業界で10年以上の実績を持ち、B2B向けソリューションを提供しています。」
- サービス概要文:「このサポートサービスでは、24時間対応のヘルプデスクを利用できます。」
- Webサイトイントロ:「当サイトでは、初心者向けにスマホ活用法を分かりやすくまとめています。」
- イベント概要:「次回セミナーは7月20日開催。業界最新動向について専門家が講演します。」
- パンフレット文:「旅行プランは、都市観光と自然体験を組み合わせた3泊4日のコースです。」
学術・研究
- 学会ポスター概要:「本研究はA地域におけるB因子の変動を調査し、影響要因を検討しています。」
- 講義冒頭概要:「本講義では○○の歴史を追いながら、現代への応用を学びます。」
- 教材イントロ概要:「本教材は初学者向けにデータ分析の基礎を体系的に解説しています。」
- 論文序論概要:「本論文はC因子の影響を検証し、新しい評価手法を提案します。」
イベント・案内
- イベント案内概要:「本イベントは、地域交流とビジネス創出を目的としたセミナー&ネットワーキングです。」
- ワークショップ概要:「撮影技術の基礎を実演しながら学ぶ、少人数制のワークショップです。」
- セミナー概要:「初心者向けにマーケティングの基本と成功事例を紹介する90分講座です。」
- オンライン講座概要:「この講座は動画と宿題で学ぶ構成、全6回で完結します。」
日常・個人利用
- 旅行プラン概要:「2泊3日で京都の歴史名所とグルメスポットを巡る旅程です。」
- 読書会案内概要:「月例読書会では、選定本を参加者が持ち寄り、感想や意見を共有します。」
よくある質問

ここでは、「要約」と「概要」に関してよく寄せられる疑問にお答えします。
Q1. 「要約」と「概要」、どちらを書くべきか迷ったときは?
A. 読み手に全体像をざっくり伝えたい場合は「概要」、重要なポイントや主張を正確に伝えたい場合は「要約」を使いましょう。目的に応じて選ぶのが基本です。
Q2. 書く文字数に目安はありますか?
A. 「要約」は元の文章の10〜30%程度、「概要」は全体の構成が把握できる程度(100〜200字程度)が一般的です。ただし、媒体や用途に応じて調整しましょう。
Q3. 両方書く必要がある場合はどうすればよい?
A. まず「概要」で全体像を伝え、その後に「要約」で詳しく説明するという構成がおすすめです。プレゼン資料やレポートの冒頭ではこの形式がよく使われます。
Q4. 要約や概要に主観や感想を入れてもいい?
A. 基本的には客観的な情報に徹するべきです。感想や意見は要約・概要の後に独立したパートとして書くのが適切です。
Q5. AIを使って作成しても問題ありませんか?
A. 学習や仕事の効率化には有効ですが、提出物や評価対象の文書では、自分の理解で書くことが重要です。AIの出力を元に再構成・編集するのがおすすめです。
まとめ
「要約」と「概要」は一見似ているようで、実際には役割や使い方が大きく異なります。「要約」は内容の本質を簡潔に伝える手法であり、「概要」は全体像をざっくり示す説明です。
それぞれの意味や使われるシーン、書き方の手順を理解することで、文章力や情報整理力が格段にアップします。この記事を参考に、目的に応じて「要約」と「概要」を使い分け、説得力のある文章作成を目指しましょう。