「時季」とは?「時期」との違い|ビジネスでの使い方も【例文60】

「時季(じき)」と「時期(じき)」――この二つの言葉は、読み方も同じで非常によく似ているため、多くの人が混同して使いがちです。たとえば、「就職活動のじき」「桜が咲くじき」など、日常会話でも頻繁に登場する語ですが、それぞれの意味や使い方には明確な違いがあります。
特に、ビジネスシーンや文章を書く場面では、適切な言葉を選ぶことが求められるため、「なんとなく」で使っていると、誤解を招いたり、伝わりにくい文章になったりすることもあります。
この記事では、以下のような疑問に答えていきます。
- 「時季」と「時期」はどう違うの?
- どんな場面でどちらを使えばいいの?
- 間違いやすい使い方や例文は?
- ビジネスで正しく使うにはどうすれば?
さらに、60個の具体的な例文を通して、「時季」と「時期」の使い方を徹底的にマスターできるように構成しています。
記事を読み終える頃には、両者の違いを理解し、自然に使い分けられるようになるはずです。
目次
「時季」の意味

「時季(じき)」とは、特定の季節や気候、自然現象が見られる期間を指す言葉です。「季節感」や「自然の移ろい」に関連して使われることが多く、四季のある日本ならではの表現とも言えます。
ポイント
- 「季節」とほぼ同義で使われる
- 気候や自然の変化に強く結びついている
- 一般に、花、収穫、風物詩などの季節的な事象と一緒に用いられる
たとえば、
- 桜の咲く時季
- 梅雨の時季
- 紅葉の時季
- 暑中見舞いを出す時季
といったように、季節そのものや、その季節ならではの出来事を表すときに使います。
また、「時季」は「時節(じせつ)」「季節(きせつ)」と似た意味合いを持ちますが、やや口語的・情緒的なニュアンスが強く、文章に自然の情感を与える役割も果たします。
「時期」の意味

「時期(じき)」とは、ある物事が起こる・進行する・判断されるなどの、特定の時間的な区切りやタイミングを指します。季節に限らず、人生の節目や社会的な流れ、ビジネスの計画などあらゆる分野で使用される、非常に汎用性の高い言葉です。
ポイント
- 抽象的・計画的な時間帯を示す
- 季節に限定されず、目的や行動の適切なタイミングを表す
- ビジネス文書・ニュース・アナウンスなど、あらゆる場面で使用可能
例えば、
- 試験の時期
- 決断の時期
- インフルエンザが流行する時期
- 商品の販売開始時期
などのように、何かが行われる・変化する・始まる「タイミング」や「期間」に焦点を当てる言葉です。
また、「時期」は、具体的な月日を明示せずに「その頃」や「適切なタイミング」を表すため、会話・文章の両方で非常に柔軟に使えます。
「時季」と「時期」の違い

「時季」と「時期」は、どちらも「ある一定の時間の流れ」を示す言葉ですが、その意味合いや使われる場面に明確な違いがあります。下の比較表をご覧ください。
項目 | 時季(じき) | 時期(じき) |
---|---|---|
意味 | 季節に関連した特定の期間 | 物事の進行や判断のタイミング |
用途 | 気候・自然・風物詩 | 行動・判断・計画 |
使用範囲 | 主に四季や自然現象に限定される | 抽象的で多様なシーンに対応 |
ニュアンス | 情緒的・感覚的 | 論理的・実務的 |
例文 | 桜の咲く時季 台風の時季 | 進学の時期 退職を考える時期 |
- 「時季」は、「この時季は花粉が多い」「夏の時季には祭りが各地で開かれる」といったように、自然や季節感を伴う内容で使われます。
- 一方、「時期」は、「就職の時期を考えている」「プロジェクト開始の時期を調整中」といったように、出来事の段階や判断のタイミングに使われます。
- 一部の文脈では両方が使えそうに見えても、自然さや文脈の整合性を考慮すると適切な選択が求められます。
- 例:
- ✕ 時季を見て退職する
- 〇 時期を見て退職する
- 例:
「時季」と「時期」の使い分け

「時季」と「時期」は、どちらも「じき」と読み、意味が似ていることから混同されやすいですが、使い分けには明確な基準があります。
ここでは、「どんな場面でどちらを使うべきか?」を、具体的な視点から解説します。
①自然や季節感が関係するなら「時季」
「時季」は、四季や自然現象、気候に関する話題に限定して使われます。特に、情緒や風情を感じさせる場面でよく登場します。
✔ 使う場面の例:
- 季節の花や行事(桜、紅葉、花火大会など)
- 自然現象(台風、梅雨、花粉など)
- 季節限定の食べ物・イベント
例文:
- この時季は、毎年アレルギーがひどくなる。
- 夏の時季はスイカが食べたくなる。
②行動・判断・計画の段階なら「時期」
「時期」は、物事が進行するタイミング、決断のタイミング、予定される出来事など、抽象的・実務的な話題に幅広く使えます。
✔ 使う場面の例:
- 進学、転職、結婚など人生の節目
- 計画、戦略、判断、実行のタイミング
- 企業やプロジェクトの動向
例文:
- 転職を考える時期に来た。
- 販売開始の時期を再検討しています。
③迷ったら「季節」か「タイミング」かで判断
質問 | 該当すれば… |
---|---|
季節に関係している? | → 時季 |
物事の進行・判断に関係している? | → 時期 |
ビジネスでの「時季」「時期」の使い方

ビジネスシーンにおいては、言葉の選び方ひとつで伝わり方や印象が大きく変わります。「時季」と「時期」もその一例です。
結論から言うと、ビジネスでは「時期」が圧倒的に使用頻度が高く、「時季」は限定的な場面でのみ使用されます。
「時期」が使われるビジネスシーン
「時期」は、予定・調整・報告・判断など、あらゆる文脈で汎用的に使えます。
シーン | 例文 |
---|---|
企画 | 商品発売の時期を見直す必要があります。 |
営業 | キャンペーンの実施時期についてご相談させてください。 |
経営判断 | 事業撤退の判断時期を慎重に見極めます。 |
人事 | 異動の時期は未定です。 |
会議 | 進捗報告の時期を前倒しにします。 |
- 明確な季節や自然とは無関係な内容に使う
- 決定や調整を表すときは、必ず「時期」
「時季」が使われるビジネスシーン
「時季」は、主に季節性のある商品・イベント・販促活動などに関連して使われます。
シーン | 例文 |
---|---|
季節商戦 | 夏の時季に向けた売上対策を強化する。 |
小売・販売 | 冬の時季には防寒商品の売上が伸びます。 |
観光業 | 紅葉の時季は宿泊予約が集中します。 |
「時季」の使い方【例文20】

この章では、「時季」の正しい使い方を20個の例文でご紹介します。いずれも、季節・自然・風物詩に関わる文脈での使用例です。
春の時季
- 桜の咲く時季になると、毎年花見に出かけます。
- 春の時季は、新生活が始まる節目ですね。
- この時季は、花粉症に悩まされる人が多いです。
- 新緑がまぶしい時季になりました。
- 入学式が行われる時季は、気候も穏やかです。
夏の時季
- 暑中見舞いは夏の時季の風物詩です。
- スイカやかき氷が美味しい時季になりました。
- 台風が増える時季には備えが必要です。
- 夏の時季は、冷房の効いた室内に逃げたくなります。
- お盆の時季には帰省ラッシュが起こります。
秋の時季
- 紅葉の美しい時季がやってきました。
- 秋の時季は、食欲が増すという人が多いです。
- この時季には、栗やさつまいもが旬を迎えます。
- 秋祭りの時季になると、地域がにぎわいます。
- 過ごしやすい時季なので、散歩が楽しいです。
冬の時季
- インフルエンザが流行るのは、冬の時季が多いです。
- 年末年始の時季は、慌ただしさを感じます。
- この時季になると、街がイルミネーションで彩られます。
- 雪が降り始める時季には、防寒対策が必要です。
- お鍋が恋しくなるのも、冬の時季ならではですね。
ポイントまとめ:
- 「時季」は、自然現象・季節感・風物詩と結びついた文脈で使用。
- 「いつの時季か(春夏秋冬)」が文中で想像できるのが特徴。
- 「季節の情緒」を伝えたいときに効果的です。
「時期」の使い方【例文20】

この章では、「時期」の正しい使い方を、計20個の例文を通してご紹介します。「時期」は、物事の進行や判断、予定、変化のタイミングを表すときに使われます。
人生の節目に関する例
- そろそろ転職を考える時期に来た。
- 結婚の時期は、タイミングが重要だと思います。
- 子どもの進学の時期に合わせて引っ越しを検討中です。
- 親の介護を始める時期が来たと感じている。
- 留学の時期をいつにするか悩んでいます。
ビジネスや仕事に関する例
- 事業拡大の時期を慎重に見極める必要があります。
- プロジェクト開始の時期が少し遅れています。
- ボーナス支給の時期についての問い合わせが増えています。
- 今は新製品の発売に向けた準備時期です。
- 上司との面談の時期が近づいています。
季節・日常的な話題に関する例
- 花粉症の時期はマスクが手放せません。
- インフルエンザが流行する時期に突入しました。
- 年末の忙しい時期ですが、体調管理に気をつけてください。
- 引っ越しの時期は春が人気です。
- 冬のボーナスの時期が楽しみです。
判断・計画・戦略に関する例
- 今は大きな買い物をする時期ではないと思います。
- 投資を始める時期としては今が良いかもしれません。
- サービス終了の時期については検討中です。
- 適切な時期を見計らって発表します。
- 自己紹介の時期を見失ってしまった。
ポイントまとめ:
- 「時期」は物事の段階や行動のタイミングを示す。
- 「季節」に関係なく、人生設計やビジネス判断にも幅広く対応可能。
- ビジネス文書やフォーマルな会話でも非常に使いやすい表現。
間違えやすい使い方【例文20】

この章では、「時季」と「時期」の使い分けを間違えやすい例を取り上げ、誤用例と正しい例のセットで20パターン紹介します。違いを具体的に確認し、自然な日本語感覚を身につけましょう。
①自然・季節 vs. 行動・判断
誤用例 | 正しい例 | 解説 |
---|---|---|
✕ 就職活動の時季が始まった | 〇 就職活動の時期が始まった | 行動・計画に関する話なので「時期」 |
✕ 転職を考える時季に来た | 〇 転職を考える時期に来た | 季節とは関係ないため「時期」が自然 |
✕ 車の買い替えを検討する時季です | 〇 車の買い替えを検討する時期です | 購入の判断なので「時期」 |
✕ 留学の時季を考えています | 〇 留学の時期を考えています | タイミングの話なので「時期」 |
②季節の話に「時期」を使ってしまう
誤用例 | 正しい例 | 解説 |
---|---|---|
✕ 桜が咲く時期になると気分が明るくなる | 〇 桜が咲く時季になると気分が明るくなる | 自然の季節感なので「時季」 |
✕ 紅葉が美しい時期になりました | 〇 紅葉が美しい時季になりました | 四季の風物詩に関する表現なので「時季」 |
✕ 夏の時期はかき氷が食べたくなる | 〇 夏の時季はかき氷が食べたくなる | 季節感のある話題は「時季」 |
✕ 梅雨の時期になると洗濯が困る | 〇 梅雨の時季になると洗濯が困る | 気候の話なので「時季」 |
③微妙なケース(どちらも可能だが、ニュアンスに注意)
誤用例(不自然) | より自然な例 | 解説 |
---|---|---|
✕ 花粉症の時季がつらいです | 〇 花粉症の時期がつらいです | 病気の流行や対策には「時期」が適切 |
✕ 商品の販売時季をずらしました | 〇 商品の販売時期をずらしました | 計画に関する話なので「時期」 |
✕ 退職の時季を決めかねています | 〇 退職の時期を決めかねています | 判断・行動に関することなので「時期」 |
④よくある混乱パターン(文脈によって判断)
文例 | 正しい語 | 解説 |
---|---|---|
風邪が流行る◯◯ | 時期 | 季節感はあるが、「流行」はタイミングを示すため「時期」 |
冬にしか楽しめない料理の◯◯ | 時季 | 季節限定の話なので「時季」 |
会社説明会の開催◯◯ | 時期 | イベントの予定は「時期」 |
夏祭りが各地で開かれる◯◯ | 時季 | 季節行事に関係しているため「時季」 |
「時季」の類語(言い換え)・英語

「時季」という言葉は、四季や自然の流れに関係する表現です。同様の意味で使える日本語の類語や、英語での言い換え表現を紹介します。
日本語の類語・言い換え表現
類語 | 意味・ニュアンス | 使用例 |
---|---|---|
季節(きせつ) | 一年を四つに分けた気候の周期 | 春という季節が好きです。 |
時節(じせつ) | 時の流れとともに訪れる特定の期間(少し文語的) | 季節の変わり目の時節ですね。 |
折(おり) | 特定の時期や機会(やや丁寧) | 梅雨の折にお見舞い申し上げます。 |
季(き) | 時季の略語・文語的に使われることがある | 今は寒い季です。 |
英語での言い換え表現
英単語 | 意味 | 使用例(英語) | 使用例(和訳) |
---|---|---|---|
season | 季節、時節 | Spring is the season of new beginnings. | 春は新しい始まりの時季です。 |
time of year | 年間の特定の時期 | This time of year, the cherry blossoms bloom. | この時季は桜が咲きます。 |
seasonal period | 季節的な期間 | The seasonal period brings heavy rain. | この時季には大雨が降ることが多いです。 |
「時期」の類語(言い換え)・英語

「時期」は、計画、判断、進行、変化などのタイミングを指す表現です。ここでは、同じような意味で使える日本語の類語と英語表現をシンプルにまとめて紹介します。
日本語の類語・言い換え表現
類語 | 意味・ニュアンス | 使用例 |
---|---|---|
タイミング | 物事を行う最適な瞬間 | 転職のタイミングを見計らっている。 |
段階(だんかい) | 進行中の物事の途中の時点 | 計画はまだ初期の段階です。 |
頃(ころ) | ある大まかな時の範囲 | 冬の頃に発表される予定です。 |
フェーズ | 英語由来の言葉で、段階や局面(ビジネス用語として一般化) | いまは準備のフェーズにあります。 |
英語での言い換え表現
英単語 | 意味 | 使用例(英語) | 使用例(和訳) |
---|---|---|---|
time | 時間・時点 | It's not the right time to decide. | 今は決断する時期ではありません。 |
period | 一定の期間 | We are in a transitional period. | 私たちは移行の時期にいます。 |
phase | 段階・局面 | This is the planning phase. | これは計画の時期(フェーズ)です。 |
timing | タイミング | Good timing is key to success. | 成功には良い時期(タイミング)が重要です。 |
よくある質問(FAQ)

ここでは、「時季」と「時期」に関して、読者がよく疑問に思うポイントをQ&A形式でわかりやすく解説します。
Q1:「時季」と「時期」は入れ替えて使っても大丈夫?
A:原則として入れ替え不可です。
一部の場面で意味が通じることもありますが、違和感を与えたり、誤解される恐れがあります。
- ×「就職活動の時季」→ ○「就職活動の時期」
- ×「紅葉の時期」→ ○「紅葉の時季」
ポイント:
「季節・自然の移ろい」=時季
「物事の進行・タイミング」=時期
Q2:「時季外れ」と「時期外れ」の違いは?
A:意味は似ていますが、使う場面が異なります。
- 時季外れ:本来の季節ではないこと(自然・風物詩に関連)
- 例:時季外れの雪
- 時期外れ:予定やタイミングがずれていること(計画・行動に関連)
- 例:時期外れの申請
Q3:「この時季」「この時期」の違いは?
A:話している内容によって選びましょう。
- 「この時季は寒くなりますね」→ 季節・気候の話
- 「この時期は忙しくなります」→ 年度末や繁忙期などの業務スケジュールの話
Q4:「時節」と「時季」は同じ?
A:ほぼ同義ですが、「時節」はやや文語的でフォーマルな響きがあります。
- 「時季」は口語的で、自然な会話や説明で使いやすい。
- 「時節」は、手紙やフォーマルな文面でよく使われます。
- 例:時節柄ご自愛ください。
Q5:英語で「時期」と「時季」をどう言えばよい?
A:以下のように使い分けます。
- 時季 → season / time of year
- 例:Cherry blossom season(桜の時季)
- 時期 → time / period / phase
- 例:The decision-making phase(判断の時期)
まとめ
「時季(じき)」と「時期(じき)」は、同じ読み方を持ちながらも、意味や使い方に明確な違いがある言葉です。
「時季」は、桜の開花、紅葉、梅雨、台風、雪といった自然や季節の移り変わりを表す場面で使われます。情緒や風情を伴う表現が多く、日本語ならではの美しさを感じさせる言葉です。
一方、「時期」は、就職活動、転職、販売開始、判断、プロジェクトの進行など、物事の進行・計画・タイミングに関連する文脈で幅広く使われます。ビジネス文書や報告書、日常会話でも頻繁に登場し、より実務的・論理的なニュアンスを持っています。
正しく使い分けるためには、「その話題は季節と関係しているのか? それとも行動や判断のタイミングを示しているのか?」という観点から考えるのが効果的です。
本記事では、意味の違いを明確にし、例文60個を通して実践的な使い分けを紹介しました。ぜひ、今回の内容を参考にして、日常生活やビジネスの中で、自然に「時季」と「時期」を使い分けられるようになってください。