「覚える」と「憶える」の違い【60例文】使い方を超わかりやすく

昔の写真

「覚える」と「憶える」、この2つの言葉はどちらも「記憶する」「思い出す」といった意味を持っており、日常生活の中で頻繁に使われます。しかし、実際に文章を書くとき、どちらの漢字を使えばよいのか迷った経験はありませんか?

例えば、「人の名前をオボエル」「あのときの感情をオボエル」など、どちらも同じ「オボエル」という読みですが、文脈によって正しい漢字表記が変わるのです。

このような言葉の違いは、日本語を正しく、そして美しく使うために欠かせない知識です。この記事では、「覚える」と「憶える」の意味の違い、使い分けのポイント、そしてそれぞれの使い方を例文とともに丁寧に解説していきます。

特に、

  • 「覚える」と「憶える」の違いがよくわからない
  • 正しい使い方を具体的な例文で知りたい
  • 間違えやすい場面での判断基準が知りたい

という方には、役立つ内容になっています。

この記事を読み終えるころには、自信を持って「覚える」と「憶える」を使い分けられるようになっているはずです。ぜひ最後までご覧ください。

目次

「覚える」と「憶える」の違い

「覚える」と「憶える」は、どちらも「おぼえる」と読みますが、意味や使われる場面には明確な違いがあります。ここでは、それぞれの違いを意味・使われ方・感情の有無といった観点から、表で整理して分かりやすく解説します。

項目覚える(覚)憶える(憶)
主な意味記憶する、習得する、体得する印象や感情とともに記憶にとどめる
使用場面勉強、仕事、作業、スキルなど人との思い出、印象的な出来事、感情
感情の関与基本的に感情を伴わない感情・印象が強く関係する
言葉の性質客観的・実用的主観的・情緒的
使用頻度非常に高い(教育現場、ビジネスなど)やや低い(文学や個人的な表現など)
常用漢字○(常用漢字に含まれる)×(常用漢字ではない)
例文の一例単語を覚える、仕事の手順を覚える初恋の人を今でも憶えている
  • 「覚える」は、知識や技能を実用的に身につける場面で使う
  • 「憶える」は、感情的・個人的な経験を記憶として留める場面で使う
  • 公的な文書や教育現場では「覚える」が推奨される
  • 小説や手紙など、個人的な文章では「憶える」が効果的に使われる

「覚える」の意味

覚える

「覚える」は、知識や情報、技能などを頭の中にとどめておくこと、つまり「記憶する」「身につける」ことを表す言葉です。日常的にもっともよく使われる表記であり、教育現場やビジネス、日常会話の中でも頻繁に登場します。

主な意味

  1. 記憶する
     例:単語を覚える、電話番号を覚える
     → 知識を記憶して、必要なときに思い出せるようにすることを指します。
  2. 習得する・身につける
     例:仕事のやり方を覚える、料理のコツを覚える
     → 実際に経験を通じてスキルとして身につけるという意味合いがあります。
  3. 体感する・感じる
     例:寒さを覚える、恐怖を覚える
     → 状況や環境に対して、心や身体で反応を覚えることを指します。この用法では感情や感覚に近い使い方となります。

特徴と注意点

  • 「覚える」は、比較的客観的・機械的な記憶や習得に用いられます。
  • 感情よりも「記録性」「実用性」が重視される場面で使われます。
  • 学校教育では「憶える」ではなく、必ず「覚える」を使用します。

「憶える」の意味

思い出の写真

「憶える」は、「覚える」と同じく「おぼえる」と読みますが、意味には微妙なニュアンスの違いがあります。「憶える」は、特に感情や印象が伴う記憶、つまり主観的な記憶や経験に深く根付く記憶を表す際に使われる漢字です。

主な意味

  1. 心に深く刻むように記憶する
     例:子どものころの思い出を憶えている
     → ただ知識として記憶するのではなく、感情や情景が伴った記憶を表します。
  2. 忘れられない印象を心に留めている
     例:初めて会ったときの印象を今でも憶えている
     → 一度の体験や感動が心に強く残り、自然に記憶として定着している様子です。
  3. 感情と結びついた記憶
     例:その言葉に怒りを憶えた
     → 感情の発露をきっかけとして記憶や印象が形成されることを示します。

特徴と注意点

  • 「憶える」は、感情・印象・経験など主観的な記憶に使われる傾向があります。
  • 現代では常用漢字ではないため、新聞や学校教育では基本的に使われません。
  • 文学的・叙情的な文脈でよく使われます。

「覚える」と「憶える」の違い・使い分け

ポイント

「覚える」と「憶える」は、どちらも「おぼえる」と読む同音異義語であり、意味や用法に微妙な違いがあります。どちらを使うべきか迷ったときのために、ここでは両者の使い分けのポイントを整理します。

使い分けの具体例

①学習・暗記・スキル習得:「覚える」

  • × 英単語を憶える
  • ○ 英単語を覚える

知識や技能を習得する場面では「覚える」が適切です。「憶える」を使うと、不自然または過度に文学的な印象を与えてしまいます。

②感情的・印象的な記憶:「憶える」

  • × 彼女の微笑みを覚えている
  • ○ 彼女の微笑みを憶えている

「憶える」は、心に深く残った記憶、感情、印象などを表現するのに適しています。記憶の“深さ”や“情緒”を重視する場合に使われます。

③日常的な思い出:どちらでも可(文体による)

  • 例:あの頃の夏休みの出来事を○○ている

このような文では、「覚える」でも「憶える」でも大きな間違いではありません。論理的に淡々と述べたい場合は「覚える」、情緒的に書きたい場合は「憶える」がよいでしょう。

実用的な判断基準

  • 一般的な文書や会話では「覚える」を優先 → 最も広く使われている表記なので、迷ったらこちらを使うと無難です。
  • 感情や回想を強調したいときは「憶える」 → 文学的なエッセイ、小説、詩などでは「憶える」が効果的です。

「覚える」の使い方【例文20】

勉強する人

この章では、「覚える」の基本的な使い方を20の例文とともにご紹介します。「覚える」は学習や習得、さらには感情の発生など、さまざまな場面で活用される非常に汎用性の高い語です。文脈ごとに分類して解説していきます。

① 記憶する・暗記する(学習・知識)

  1. 明日のテストに向けて、漢字を100個覚えた。
  2. このセリフは短いからすぐに覚えられそうだ。
  3. パスワードはメモせずに覚えておいてください。
  4. 小学生のとき、九九を必死に覚えた記憶がある。
  5. 地図を見ただけでルートを覚えられるのはすごい。

② 習得する・身につける(技能・行動)

  1. 彼は半年で日本語をかなり覚えた。
  2. アルバイトを始めて、仕事の流れを覚えた。
  3. バック転を覚えるまでに何か月もかかった。
  4. 入社後、電話対応のマナーをすぐに覚えた。
  5. 料理は見て覚えるものだと教えられた。

③ 感情や印象を抱く(感覚・心理)

  1. 初対面の彼に、なぜか親しみを覚えた。
  2. この小説には強い感動を覚えた。
  3. その場の雰囲気に違和感を覚えた。
  4. 上司の言葉に怒りを覚えたが、ぐっと我慢した。
  5. この匂いに懐かしさを覚えるのはなぜだろう。

④ 身体的・感覚的な記憶(反射的行動など)

  1. ピアノの鍵盤の位置を体で覚えている。
  2. スキーの滑り方は、数回で体が覚えた。
  3. タイピングは練習して指で覚えるのが一番だ。
  4. 自転車に一度乗れるようになると、自然に体が覚える。
  5. 武道では「考える前に体が動くまで覚える」ことが重要だ。

「憶える」の使い方【例文20】

教室

「憶える」は、「覚える」に比べて使用頻度は少ないものの、感情や印象、回想に関わる深い記憶を表現するのに適した語です。文学的、叙情的な表現に向いており、「忘れられない記憶」や「心に残る体験」を語るときに効果的に使えます。ここでは4つの文脈に分けて、例文を紹介します。

① 感情や印象が心に残っている

  1. 初めて会ったときのまなざしを、今でも鮮明に憶えている。
  2. 彼女の優しい声を憶えていると、自然と涙が出てきた。
  3. その景色に、どこか懐かしさを憶えた。
  4. あの夜の月の光に、切ない想いを憶えた。
  5. 見知らぬ街で、なぜか安心感を憶えた。

② 過去の出来事や体験を心に留めている

  1. 小学校の入学式の日の緊張感を、いまも憶えている。
  2. 子どものころに叱られた場面を、なぜか強く憶えている。
  3. 昔住んでいた町の匂いを、ふと憶えることがある。
  4. 旅先で見た海の色を、長い年月が経っても憶えている。
  5. 祖父の大きな手の温もりを憶えている。

③ 忘れられない印象的な経験

  1. 震災の夜の静けさを、私は一生憶えているだろう。
  2. 卒業式での友人の言葉を、深く憶えている。
  3. 手をつないだ瞬間の鼓動を、今でも憶えている。
  4. 初舞台の緊張と達成感は、今でも憶えているほど鮮烈だった。
  5. 一緒に見た最後の夕焼けを、強く憶えている。

④ 文学的・叙情的な表現としての用法

  1. 彼の背中には、どこか影のようなものを憶えた。
  2. 無邪気な笑顔に、かすかな寂しさを憶えた。
  3. 静寂の中に、不気味さを憶えた。
  4. 言葉の裏に、嘘の気配を憶えた。
  5. その絵には、懐かしい記憶の断片を憶えた。

間違えやすい使い方【例文10】

ハテナマーク

「覚える」と「憶える」は意味が似ているため、使い分けが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。ここでは、実際に混同しやすい例や、誤用されがちなケースを中心に、正しい使い方とともに20の例文をご紹介します。

1.

❌ 昔の彼の言葉を覚えている。
✅ 昔の彼の言葉を憶えている。
解説: 言葉の「内容」よりも「感情や印象」に重点がある場合は「憶える」が自然です。

2.

❌ 歌詞を完璧に憶えた。
✅ 歌詞を完璧に覚えた。
解説: 歌詞を記憶し、再現することが目的なので、知識や暗記に使う「覚える」が適切です。

3.

❌ 初めて行った場所の風景を覚えている。
✅ 初めて行った場所の風景を憶えている。
解説: 心に残った印象的な風景なので、感情を含む「憶える」が適切です。

4.

❌ 彼の名前をやっと憶えた。
✅ 彼の名前をやっと覚えた。
解説: 人の名前は記憶すべき「情報」なので、「覚える」を使うのが一般的です。

5.

❌ 危機感を覚える日々が続いている。
✅ 危機感を憶える日々が続いている。
解説: 感情や不安が主観的に残る状態を表すため、「憶える」が適しています。

6.

❌ あの瞬間の緊張感を覚えている。
✅ あの瞬間の緊張感を憶えている。
解説: 印象深い記憶や体験には「憶える」がふさわしいです。

7.

❌ あのレシピは憶えているよ。
✅ あのレシピは覚えているよ。
解説: レシピは具体的な知識や情報なので、「覚える」が適切です。

8.

❌ 彼の態度に違和感を憶えた。
✅ 彼の態度に違和感を覚えた。
解説: 「違和感」は感情的にも見えますが、日常的な心理的反応には「覚える」が自然です。

9.

❌ テストの解き方を憶えておいてください。
✅ テストの解き方を覚えておいてください。
解説: 解法や手順などは暗記するものなので、「覚える」を使います。

10.

❌ 初対面の印象を覚えている。
✅ 初対面の印象を憶えている。
解説: 印象は感情を伴う記憶なので、「憶える」がしっくりきます。

11.

❌ セリフを憶えるのに時間がかかった。
✅ セリフを覚えるのに時間がかかった。
解説: セリフは記憶すべき内容なので、「覚える」が正しい用法です。

12.

❌ あの場所の雰囲気を今でも覚えている。
✅ あの場所の雰囲気を今でも憶えている。
解説: 「雰囲気」は感覚的で印象的な記憶なので、「憶える」が自然です。

13.

❌ 大事な言葉だから憶えておいて。
✅ 大事な言葉だから覚えておいて。
解説: 相手に明確に記憶しておくことを求めるなら「覚える」が適切です。

14.

❌ 彼の笑顔を今でも覚えている。
✅ 彼の笑顔を今でも憶えている。
解説: 感情的な記憶には「憶える」がふさわしい表現です。

15.

❌ 明日の予定を憶えておくよ。
✅ 明日の予定を覚えておくよ。
解説: 予定は情報として記憶する対象なので、「覚える」を使います。

16.

❌ あの出来事の悔しさを覚えている。
✅ あの出来事の悔しさを憶えている。
解説: 「悔しさ」という感情が記憶に残る場合、「憶える」が適しています。

17.

❌ 彼のメールアドレスを憶えている?
✅ 彼のメールアドレスを覚えている?
解説: 具体的な情報を尋ねる場合は、「覚える」を使うのが適切です。

18.

❌ 手術の日をはっきり憶えている。
✅ 手術の日をはっきり覚えている。
解説: 日付やスケジュールは知識情報なので「覚える」が自然です。ただし感情が強ければ「憶える」も可。

19.

❌ 母の歌声を今でも覚えている。
✅ 母の歌声を今でも憶えている。
解説: 心に残る印象的な記憶なので、「憶える」がより情緒的です。

20.

❌ 試験のポイントを憶えておこう。
✅ 試験のポイントを覚えておこう。
解説: 試験に必要な知識や情報は「覚える」で記憶するべき対象です。

「覚える」の類語(言い換え)・英語表現

勉強する人

「覚える」は、知識の記憶、スキルの習得、感覚の体得など多様な場面で使われる便利な語です。ここでは、その場面ごとに使える日本語の類語英語表現を、簡潔な例文とともに紹介します。


「覚える」の類語(言い換え)

類語意味の違い使える場面例例文
暗記する繰り返して記憶する勉強、試験漢字を暗記する。
記憶する記録として覚える公式・名前・数字などパスワードを記憶する。
学ぶ知識を得る、習得する広範囲な学習全般歴史から多くを学ぶ。
習得する技術や能力を身につける実技・作業英会話を習得する。
身につける経験を通じて習得する知識・スキル全般プレゼン技術を身につける。
インプットする情報を取り込むデジタル・学習分野情報をインプットする習慣をつけよう。

「覚える」の英語表現

英語表現意味・ニュアンス例文
memorize正確に記憶する(暗記)I memorized 100 English words.
learn習得する、学ぶHe learned how to cook Japanese food.
remember思い出せる状態にするPlease remember my name.
acquire習得する(少し堅めの表現)She acquired basic computer skills.
retain保持する、記憶を保つIt’s hard to retain all the details.

「憶える」の類語(言い換え)・英語表現

昔のアルバムを見る人

「憶える」は、感情や印象に深く結びついた記憶を表現する言葉です。単に情報を記憶するのではなく、心に残る・思い出す・感じるといったニュアンスが強いため、文学的・叙情的な表現によく用いられます。

ここでは、その特徴に合った日本語の類語英語表現を、例文とともに紹介します。


「憶える」の類語(言い換え)

類語意味の違い・特徴例文
思い出す記憶を呼び起こす昔の友人のことをふと思い出した。
記憶に残る印象的で心に留まりやすいあの夜景は記憶に残っている。
心に刻む深く印象に残り忘れられない先生の言葉を今でも心に刻んでいる。
忘れられない強い感情や経験で記憶が消えないあの失敗は今でも忘れられない。
焼き付く視覚的・感情的に強く残る彼女の涙が目に焼き付いている。

「憶える」の英語表現

英語表現意味・ニュアンス例文
remember思い出す、記憶に残っているI still remember her smile.
recall思い出す(やや堅め)I recall the moment we first met.
recollect思い出そうとする(感情や印象と結びつく)I can still recollect the smell of that day.
stay with me記憶に残る(感情的な余韻)That scene has stayed with me ever since.
unforgettable忘れられない(形容詞)It was an unforgettable experience.

よくある質問

Q&A

「覚える」と「憶える」の違いや使い分けについて、実際によく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。迷いやすい場面での判断基準を、ここでしっかり確認しておきましょう。


Q1. テスト勉強で「漢字をおぼえる」ときは「覚える」?「憶える」?

A:「覚える」が正解です。
テスト勉強や知識の暗記・習得は、情報を記憶する行為であり、感情的な記憶ではありません。よって「憶える」ではなく「覚える」を使います。


Q2. 「忘れられない思い出」は「覚えている」?「憶えている」?

A:「憶えている」が適切です。
感情を伴うような印象深い記憶には「憶える」が合います。とくに「忘れられない」「心に残る」「切ない思い出」などの文脈では、「憶える」が自然です。


Q3. メールやビジネス文書ではどちらを使うべき?

A:原則として「覚える」を使いましょう。
ビジネスや公的な文章では、情緒よりも論理性・明瞭さが重視されます。「憶える」はやや文学的・感情的なニュアンスを含むため、業務連絡などでは避けた方が無難です。


Q4. どちらを使っても意味が通じるときはどう選べばいい?

A:文章の目的と雰囲気で使い分けましょう。

  • 客観的・論理的に書くなら「覚える」
  • 感情的・叙情的に表現したいなら「憶える」
    例えば、「あの時の空の色を覚えている」でも意味は通じますが、「憶えている」とすると、より情緒豊かな印象になります。

Q5. そもそも現代では「憶える」は使わなくてもよいの?

A:使わなくても通じますが、使えると表現力が高まります。
現代の日本語では、ほとんどの場面で「覚える」に統一される傾向があります。しかし、文章表現や創作、エッセイなどでは、「憶える」を使い分けることでより豊かな表現が可能になります。


「覚える」と「憶える」の選択は、読み手への印象を左右する大事な要素です。文脈と目的に合わせて、自然で効果的な表現を選びましょう。

まとめ

「覚える」と「憶える」は、どちらも「おぼえる」と読む日本語ですが、その使い方には確かな違いがあります。

「覚える」は、学習内容の記憶や技能の習得、さらには感情の発生など、幅広く使える万能な語です。一方で「憶える」は、心に残る印象的な記憶や感情を伴う記憶に用いられ、文学的・叙情的な表現に向いています。

例文を通して確認したように、両者の使い分けは文脈によって決まります。ビジネスや学習の場では「覚える」が基本となりますが、感情を表現したい場面や、過去の回想を丁寧に描写したいときには「憶える」がぴったりです。

また、それぞれの言い換えや類語を上手に使えば、文章により豊かな表現力とニュアンスを加えることができます。

この記事を通じて、「覚える」と「憶える」の違いを正しく理解し、日常の中でも自然に使い分けられる力が身についたはずです。日本語をより深く味わい、表現の幅を広げる一助となれば幸いです。