株式会社の読み方|実はカブシキガイシャもカブシキカイシャも正解?

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「株式会社(かぶしきがいしゃ/かぶしきかいしゃ)」——。
ビジネスの場面やニュースで頻繁に耳にする言葉ですが、その正しい読み方について意識したことはありますか?

「カブシキガイシャ」と読む人もいれば、「カブシキカイシャ」と読む人もいて、なんとなく両方使われている印象があるかもしれません。
実際、周囲での使われ方もバラバラで、「どっちが正しいの?」「公式な読み方ってあるの?」と疑問を持つ方も多いようです。

このような疑問は、名刺の作成や登記、銀行振込の際など、正式な表記や読み方が求められる場面で特に気になるポイント。
この記事では、株式会社の正しい読み方を辞書・登記情報・略称・実務の観点から詳しく解説していきます。

この記事を読むとわかること:

  • 「カブシキガイシャ」「カブシキカイシャ」どっちが正解?
  • 法務上・実務上で使われる正式なフリガナ
  • 英語での略称や銀行での記載方法 など

意外と知らない「株式会社」の読み方とその裏側。ぜひ最後までご覧ください!

株式会社の読み方

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「株式会社」という言葉は、日常的によく使われるものの、実は読み方に揺れがある珍しい言葉でもあります。「カブシキガイシャ」と「カブシキカイシャ」、どちらが正しいのか——この章では、辞書や登記情報、実務での実際の使われ方をもとに解説していきます。


実はどちらも正解!辞書での記載

国語辞典や漢字辞典を調べてみると、「株式会社」の読み方としては、「かぶしきがいしゃ」も「かぶしきかいしゃ」も両方記載されている場合がほとんどです。

たとえば、

  • 三省堂『大辞林』
  • 岩波書店『広辞苑』
  • 小学館『日本国語大辞典』

などの辞典では、両方の読み方が併記されています。

これは、日本語には「会社(かいしゃ)」という熟語が一般的である一方、「がいしゃ」という音も誤りではなく通じる読み方として認識されているからです。また、NHKの放送用語でも、「株式会社」は「カブシキガイシャ」と読むのが標準とされており、こちらが放送やニュースで多く使われています。結論としては、どちらも正解ですが、一般的な読み方としては「かぶしきがいしゃ」が多いのが事実です。


登記上の株式会社の読み方(法人番号公表サイト)

次に、より公式な場面での扱いを確認してみましょう。

国税庁の「法人番号公表サイト」では、日本に登記された法人の名称と、そのフリガナが公開されています。実際にこのサイトで株式会社の登記名を検索すると、432件の企業が「カブシキガイシャ」とフリガナを付けて登記されています。一方「カブシキカイシャ」は82件でした。(2025年4月21日時点)

このことからも、登記上の正式な読み方は「カブシキガイシャ」とするのが一般的だと言えるでしょう。

ちなみに、会社の登記時に法人名の読み方の記載が必須となったのは、平成30年3月12日以降の話。商業・法人登記申請書に法人名のフリガナ欄を追加されたことがきっかけです。

「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(平成29年5月30日閣議決定)の別表において,「法人が活動しやすい環境を実現するべく,法人名のフリガナ表記については,(略)登記手続の申請の際にフリガナの記載を求めるとともに,法人番号公表サイトにおけるフリガナ情報の提供を開始」することとされました。
 平成30年3月12日以降,商業・法人登記の申請を行う場合には,申請書に法人名のフリガナを記載していただくこととなりますので,お知らせします。

引用:法務省

「カブシキガイシャ」が多い理由

ノートパソコン

ではなぜ、「カブシキカイシャ」ではなく「カブシキガイシャ」が主流なのでしょうか?その理由にはいくつかの背景があります。まず、メディアでの使用が多い点が挙げられます。テレビ・ラジオ・新聞などのマスメディアで一貫して「カブシキガイシャ」を使用しているため、一般にもその読み方が広まったと考えられます。また、ビジネスの現場でも、「ガイシャ」の方がなじみがあり、「カイシャ」と読むと違和感を持たれることもあります。

何より、「カブシキガイシャ」が一般的に使われる理由の一つとして、日本語における「連濁(れんだく)」という音の変化が深く関係しています。


連濁(れんだく)とは?

連濁(れんだく)とは、複数の単語が合わさって一語になるとき、後ろの語の最初の音が濁音(が・ざ・だ・ば など)に変化する日本語特有の現象です。

例:

  • 手(て)+紙(かみ) → 手紙(てがみ)
  • 山(やま)+道(みち) → 山道(やまみち)
  • 花(はな)+火(ひ) → 花火(はなび)

このように、本来「か」「き」「く」など清音で始まる単語が、前の語と組み合わさることで、「が」「ぎ」「ぐ」といった濁音に変わることがあります。


「株式会社」の場合も連濁が適用される

「株式会社」は、「株式(かぶしき)」+「会社(かいしゃ)」という二つの語から構成されています。このとき、連濁の法則により、「かいしゃ」→「がいしゃ」に変化するのが自然な音の流れとされています。

つまり、

かぶしき+かいしゃ → かぶしきがいしゃ

という変化は、日本語の自然な発音のリズムに従った結果なのです。


なぜ「カブシキカイシャ」は不自然に聞こえるのか?

「カブシキカイシャ」と読むと、文法的には間違いではないものの、日本語話者にとっては語感としてやや硬く、不自然に感じられます。これは連濁の期待が裏切られる形になるため、聞き手の感覚に違和感を生じさせるのです。

また、連濁が適用されていない言い方は、過度に原語に忠実すぎる印象を与え、慣用的な読み方から外れてしまいます。


連濁が「カブシキガイシャ」を後押ししている

  • 日本語の音韻法則「連濁」により、「会社」は「がいしゃ」に変わるのが自然
  • 「カブシキガイシャ」は音の流れがスムーズで言いやすい
  • メディアやビジネス現場でも、この自然な響きが好まれている

このように、「カブシキガイシャ」が多い理由には、単なる慣習だけでなく、日本語の言語構造に基づいた自然な音の変化が関係しているのです。

株式会社のフリガナの書き方とは?

オフィスで働く人

法人名を記載する書類やWebサイト、名刺など、ビジネスのさまざまな場面で「株式会社」のフリガナ(ふりがな)を記載する機会があります。ここでは、実際に使われているフリガナの付け方や注意点を具体的に解説していきます。


登記時に提出するフリガナ

会社を設立する際、法務局へ提出する登記申請書には、商号(会社名)のフリガナの記載が求められます。このとき、特に指定がない限り、株式会社の部分は「カブシキガイシャ」と記載するのが一般的です。

実際、前章で紹介した国税庁「法人番号公表サイト」でも、登録されている法人の約84%が「カブシキガイシャ」となっており、「カブシキカイシャ」として登録されている例が約16%です。

これは、単なる慣習というよりも、法務局や税務署での取り扱いを円滑にするためにも、「カブシキガイシャ」に統一されていると考えられます。とはいえ、不明な点がある際には、法務省や司法書士といった専門家に確認されると安心です。

参考:法務省HP


名刺や書類でのフリガナ記載

ビジネスで使用する名刺や契約書、請求書などでも、会社名にフリガナを振る場合があります。このときも、一般的には以下のような形で記載されます:

株式会社 ○○○○(カブシキガイシャ ○○○○)

また、カッコでくくる代わりに、横書きならカタカナを上に、縦書きなら横に添える場合もあります。

表記の注意点

  • 半角カナは避け、全角カタカナを使用する(正式な文書では特に重要)
  • 「カブシキガイシャ」の部分は、略さずそのまま記載
  • 会社名そのものにひらがなや英語が含まれている場合は、登録されたとおりに記載する

例:

カブシキガイシャ レモン → 株式会社レモン

正しくフリガナを記載することで、会社名の読み間違いを防ぎ、取引先や外部の人にも正確に伝わります。また、同名の企業との区別がしやすくなり、名寄せ(データ統合)や、公的書類の処理もスムーズに進むというメリットがあります。

株式会社の略は?KK?

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「株式会社」という言葉は長いため、特に英文書類や名刺などでは略称が使われることがよくあります。この章では、株式会社の一般的な略称「KK」の意味と背景、そしてなぜ「KG(カブシキガイシャ)」ではないのかについて解説します。


KKは何の略?

株式会社の略として使われる「KK」は、ローマ字の「Kabushiki Kaisha」の頭文字を取ったものです。

例:

  • トヨタ自動車株式会社 →トヨタ自動車KK
  • 任天堂株式会社 →任天堂 KK

「株式会社」は日本語でありながら、「KK」という略称が定着しています。


なぜ「KG」ではないの?

「カブシキガイシャ」と読むのが一般的なら、頭文字は「K」と「G」で「KG」になりそうに思えますよね。ですが、実際には「Kaisha(会社)」の部分が「K」で始まっていると捉えられており、「Gaisha」という発音が日本語特有の連濁による変化と見なされているため、原形を尊重して「KK」と略されるのです。


KKの使用例

■名刺や社外向け資料

名刺や英文の会社概要では、以下のように表記されることが多いです:

ABC株式会社 → ABC Co., Ltd.(ABC KK)

■海外取引での明確化

日本独自の法人形態であることを明示するため、Co., Ltd. だけでなく KK を併記する企業もあります。


海外の同様の略称と比較

他国の法人形態にも、同様の略称が存在します:

国・地域法人形態略称
日本株式会社KK
アメリカCorporationInc. / Corp.
イギリスPrivate Limited CompanyLtd.
ドイツ有限会社(GmbH)GmbH

ただし、「K.K.」は日本語の「株式会社」のローマ字表記の略であり、英語圏の人にとっては意味が伝わりにくい場合があります。そのため、「株式会社」という言葉を直訳するのではなく、英語圏で一般的な「Co., Ltd.」や「Corporation」などの表現を用いるケースもあります。

銀行振込時の記載「カ)」

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銀行で法人宛に振込をする際、振込先名義に「カ)〇〇〇〇」などのような表記を見かけたことはありませんか?これは法人名をカタカナで入力する際の銀行独自のルールに基づいた略式表記です。この章では、「カ)」という表記がなぜ使われるのか、どう読むべきか、注意点について詳しく解説します。


「カ)」は何の略?

振込明細書などで表示される「カ)」は、「株式会社」の略記です。
具体的には:

  • トヨタジドウシャ (カ → トヨタ自動車株式会社
  • カ)ツムラ→ 株式会社ツムラ

このように、「株式会社」は振込名義欄で「カ)」という省略記号で表現されることが一般的です。


なぜ「カブシキガイシャ」ではなく「カ)」?

銀行システムには、いくつかの制限があります:

1. 文字数制限

銀行の振込先名義の欄には、最大30文字程度までという制限があります。そのため、「カブシキガイシャ」とフルで入力してしまうと、会社名の本体部分が入りきらないことがあります。

2. 機種依存文字・濁点の制限

銀行端末では、濁点付きの文字や一部の記号をうまく扱えないことがあり、よりシンプルで汎用的な文字(全角カタカナ・括弧など)が使われます。

3. 業界の慣習

金融機関間での処理効率のため、略称のフォーマットが標準化されており、株式会社は「カ)」、有限会社は「ユ)」とされることが一般的です。


他の法人種別の略記例

銀行の振込名義では、他の法人形態も略して表記されます。

法人形態銀行での略記例
株式会社カ)
有限会社ユ)
合同会社ド)
医療法人イ)
学校法人ガ)

このように、法人種別に応じて先頭に1文字+カッコ閉じの形で略称が使われます。


注意点:入力ミスに気をつけよう

銀行振込の際、名義と1文字でも違うとエラーになったり、振込が保留されることもあります。
特に以下の点に注意しましょう:

  • 「カ)」は全角カタカナ+全角カッコで入力
  • 会社名の正式な名義は、請求書や見積書などを確認
  • 相手に確認せずに自己判断で入力しない

まとめ

「株式会社」の読み方には、「カブシキガイシャ」と「カブシキカイシャ」の2通りがありますが、どちらも間違いではありません。とはいえ、辞書や国の登記情報、ビジネス慣習などを総合的に見ると、「カブシキガイシャ」が圧倒的に多く使われています。その理由の一つが、日本語の音の法則「連濁(れんだく)」で、自然な発音として「かいしゃ」より「がいしゃ」が選ばれるからです。

また、英語表記では「Kabushiki Kaisha」の頭文字を取って「KK」と略されるのが一般的。銀行振込の際には、文字数制限などの理由から「カ)」という略記が用いられています。これらの表記や略し方には、日本語と実務の知識が反映されており、正確に理解することがビジネスでも役立ちます。正式な読み方や表記に迷ったときは、「カブシキガイシャ」を選べば安心です。