「いい」は間違い?「よい」との違い・使い分けを100例文で解説!

日本語には、「よい(良い)」と「いい」という、同じ意味を持つ言葉があります。どちらも「善い」「正しい」「素晴らしい」「適切である」といった意味合いで使われますが、その使い分けには微妙なニュアンスの違いや、文体・場面に応じたルールがあります。
たとえば、学校の作文やビジネス文書などの書き言葉では「よい(良い)」が好まれる一方で、日常会話やSNSなどの話し言葉では「いい」の方が自然に使われる傾向にあります。
また、漢字として表記できるのは「良い」であり、「いい」という語は常用漢字表には含まれていません。これは、公的文書や出版物などにおいて表記のルールを守る必要がある場面では特に重要なポイントです。
この記事では、以下のような構成で「よい(良い)」と「いい」の違いと使い分けについて、例文100個を交えながら徹底解説していきます。
目次
「よい(良い)」と「いい」の使い分け

「よい」と「いい」は、どちらも形容詞「良い」の異なる言い方で、意味そのものは共通しています。ただし、使う場面や文体によって自然な使い分けがなされています。
「よい」は文語的な響きがあり、改まった印象を与えるため、ビジネス文書や公的な案内、丁寧なあいさつ文など、フォーマルな場面でよく用いられます。一方、「いい」は話し言葉的で、日常会話やくだけた文章の中で多く見られます。柔らかく、親しみやすい語感が特徴で、口語的な場面に適しています。
このような違いは、以下の表で整理すると分かりやすくなります。
比較項目 | よい | いい |
---|---|---|
言語的な性格 | 文語的、正式 | 口語的、くだけた印象 |
使用場面 | 公的文書、ビジネス文書、改まった挨拶など | 日常会話、SNS、カジュアルな文章 |
印象 | 丁寧・上品・落ち着いた | 親しみやすい・自然体・柔らかい |
表記の傾向 | 「良い」「よい」 | 「いい」(ひらがな表記が一般的) |
慣用句・定型表現 | よい子/よいお年を/よい週末を | いい天気/いい気分/いい加減にして |
たとえば、メールで「ご都合のよい日時をお知らせください」と書けば、丁寧で礼儀正しい印象になりますが、友人との会話で「ご都合のいいときで大丈夫だよ」と言えば、親しみのある、自然な表現になります。
また、表現によってはどちらか一方の形が定着している場合もあります。「よい子」「よいお年を」のようなあいさつ言葉や教育的な場面では「よい」が定番ですが、「いい天気」「いい人」といった日常的な言い回しでは「いい」の形が自然です。
文体全体のトーンも選び方に影響します。かしこまった内容や真面目な文章では「よい」が適しており、軽快な文章や会話文では「いい」を使うと自然です。どちらを使っても文法的には誤りではありませんが、読み手に与える印象が変わるため、使い分けの意識は大切です。
常用漢字表において「いい」は認められていない

「よい」と「いい」は同じ意味を持つ形容詞ですが、文化庁が定める「常用漢字表」では、『良い』の読みとして「よい」は認められている一方、「いい」は正式な読みとしては認められていません。
つまり、「良い」という漢字を使う場合、公的な文書や学校教育の場では「よい」と読む・書くことが求められます。たとえば、テストや作文で「いい天気」と書くときに「良い天気」と表記したい場合、「良い」と書いて「よい」と読むのが正式です。「いい」という読みはあくまでも口語的な発音であり、話し言葉やくだけた文章では使われますが、漢字と結びつけて表記することは推奨されていません。
このため、「良い」は“よい”と読むのが基本であり、「いい」はひらがなで書くのが原則とされます。
表記 | 常用漢字表での扱い | 推奨される使用場面 |
---|---|---|
良い(よい) | ✅ 正式な読み | 公的文書・教育現場など |
いい | ❌ 非常用の読み | 日常会話・口語文 |
「よい(良い)」の意味と使い方(例文50個)

「よい(良い)」は、「善い」「優れている」「正しい」「適している」など、ポジティブな評価を表す形容詞です。文語的で丁寧な響きがあり、書き言葉やフォーマルな場面で多く使われます。
また、「良い」と漢字で書かれることが多く、ビジネス文書、公的文書、学校教育などで推奨される表現です。この章では、以下の5つのカテゴリに分けて「よい(良い)」の例文を50個紹介します。
【1】挨拶・礼儀に関する例文(10個)
- 本日はお越しいただき、誠にありがとうございます。よい一日をお過ごしください。
- 年末にはご挨拶を兼ねて、「よいお年をお迎えください」と言うのが慣例です。
- 先生に出会えたことは、私にとってよいご縁でした。
- あなたの今後のご活躍とよい健康をお祈り申し上げます。
- この機会がよい転機となることを願っております。
- ご提案いただいた内容は、非常によいものでした。
- 本日は天候にも恵まれ、よい会となりました。
- どうぞよい週末をお迎えください。
- ご家族の皆様にもよいことがありますように。
- 卒業おめでとうございます。よい未来が待っています。
【2】ビジネスシーンでの使用例(10個)
- 本件は、当社にとってよい機会と捉えております。
- ご意見は、今後の改善に向けたよい参考になります。
- 顧客満足度の向上は、よい企業評価に直結します。
- 新製品に対する反応は、総じてよいものでした。
- この方針転換がよい結果をもたらすことを期待しています。
- 上司からよい評価をいただきました。
- 部下に対するよい指導とは、まず傾聴することです。
- 成果を出すには、よいチームワークが不可欠です。
- 社内コミュニケーションの改善がよい影響をもたらしました。
- これを機によい取引関係を築いてまいりましょう。
【3】文語的な使い方・書き言葉での例文(10個)
- 人の道を踏み外さずに生きることは、よい生き方である。
- 世の中がよい方向に進んでいると感じる。
- 誠実な行いは、必ずよい結果につながる。
- よい行いは、やがて自分に返ってくるものだ。
- よい言葉には、人の心を癒す力がある。
- 教育とは、よい人格を育てる営みである。
- よい制度とは、多くの人に利益をもたらすものである。
- 我々が今すべきことは、よい未来の礎を築くことだ。
- 努力は報われる、よい例を私は知っている。
- 正しい判断は、よい情報と冷静な分析から生まれる。
【4】教育や評価に関する例文(10個)
- この作文は構成がしっかりしていて、よい出来です。
- 生徒たちはよい態度で授業に参加していました。
- 成績がよい子には共通点があります。
- この指導方針は、生徒にとってよい影響を与えています。
- よい習慣は、小さな積み重ねから生まれます。
- 先生の話をよい姿勢で聞くことができていました。
- 他者への思いやりは、よい人間関係を築く鍵です。
- 学びの場には、よい刺激が必要です。
- この取り組みは、教育現場にとってよいモデルとなるでしょう。
- 努力がよい結果につながったことは大変喜ばしいです。
【5】一般生活やフォーマル以外の使用例(10個)
- 適度な運動は健康によい影響を与えます。
- 早寝早起きは、よい生活リズムを作ります。
- よい睡眠をとることで集中力が高まります。
- この薬は胃によい成分が含まれています。
- 家族と過ごす時間は、心によい栄養となります。
- 自然の中で過ごすのは、心身にとってよいことです。
- この香水は、よい香りが長く続きます。
- これは長く使えるよい製品です。
- よい友人に出会えたことは、人生の宝です。
- 環境によい取り組みが求められています。
「いい」の意味と使い方(例文50個)

「いい」は、「よい」の口語形(話し言葉)であり、日常会話やカジュアルな文体で非常によく使われる表現です。文法的には「よい」の変化形のひとつですが、現代日本語では「いい」の方が圧倒的に使われる機会が多く、親しみやすく柔らかい印象を与えるのが特徴です。
この章では、「いい」を使った表現を5つのカテゴリに分け、実際の会話やシーンをイメージしながら例文を紹介します。
【1】日常会話での使用例(10個)
- 今日のごはん、すごくいい匂いがするね。
- このカフェ、雰囲気がいいからまた来たいな。
- あの映画、評判通りめっちゃ**よかった(いい)**よ!
- この靴、歩きやすくていい感じ。
- 今日の天気、ほんとにいいね!
- その服、色合いがいいよ。似合ってる。
- 週末はのんびりして、いい休みになったよ。
- なんか、今日めっちゃいい日だなあ。
- あの先生、教え方が分かりやすくていいと思う。
- お風呂入ったら、気持ちいい〜。
【2】感情・気持ちを表す場面(10個)
- それ、ほんとにいい話だね。泣きそうになったよ。
- この音楽聴いてると、なんだかいい気分になる。
- 久しぶりに友達と話せて、いい時間だった。
- 旅行の思い出が、今でもいい記憶として残ってるよ。
- おばあちゃんの料理って、やっぱりいい味してるなあ。
- なんか今日は、すごく気持ちがいいよ。
- この景色、本当にいいところだね。
- あの人の笑顔って、見てるだけでいい気持ちになる。
- ちょっと疲れたけど、やり切ったからいい気分!
- 思いが伝わったみたいで、いい気持ちになった。
【3】カジュアルな表現・SNSで使える言い回し(10個)
- 今日のランチ、まじでいい感じだった🍝
- この写真、光の入り方がいい✨
- 推しのビジュ、今日も最高にいい👏
- 久々にのんびりできて、いい休日になった☀
- 今日のコーデ、自分で言うのもなんだけどいい感じ笑
- この曲、夜に聴くとめっちゃいい。
- 天気もいいし、気分もいいし、外出ようかな。
- このアイス、見た目も味もいいしかない!
- ドラマの展開が神だった…。脚本ほんといい!
- あのカフェ、静かでWi-Fiもあって、めっちゃいい場所だった☕️
【4】子どもや若者がよく使う表現(10個)
- このゲーム、グラフィックがいい!
- 今日の給食、メニューがいい感じ!
- 明日テスト休みとか、マジでいいんだけど!
- この先生、優しくて説明もうまくていい〜。
- お母さんのカレー、やっぱりいい味してる!
- 夏休みの自由研究、うまくできていい感じ!
- スマホの新機能、けっこういいじゃん。
- 修学旅行、まじでいい思い出になったわ。
- お兄ちゃんの友だち、なんかいい人だったよ。
- この動画、ネタがいいね、笑ったわ〜。
【5】許可・肯定の表現としての「いい」(10個)
- 明日、ちょっと早退してもいいですか?
- それ、使ってもいいよ。
- この服、着ていってもいい?
- 質問してもいいですか?
- もう帰ってもいい時間かな?
- このやり方でいいと思いますよ。
- 無理しなくていいんじゃない?
- そこまで頑張らなくてもいいよ。
- 自分のペースで進めていいんだよ。
- 「ありがとう」って言えるのは、とってもいいことだね。
「よい(良い)」「いい」の敬語表現

「よい/いい」という言葉を敬語として使うには、そのまま使える場合と、別の表現に言い換えるべき場合があります。
特にビジネスシーンや目上の人への会話では、「いいですか?」「いいと思います」などのフランクな言い回しを、より丁寧な敬語表現に置き換えることが大切です。
◆ 敬語での主な言い換えパターン
カジュアルな表現 | 敬語への言い換え | 補足・使い方の例 |
---|---|---|
いいですか? | よろしいでしょうか? | 許可を求める丁寧な言い回し |
いいと思います | よろしいかと存じます 差し支えないかと存じます | 判断を丁寧に述べたいとき |
いい経験でした | 貴重な経験をさせていただきました | 感謝・敬意をこめた表現 |
いい結果が出ました | 望ましい成果が得られました | フォーマルな報告時に使える表現 |
もう行っていい? | 出発してもよろしいでしょうか? | ビジネスシーンや接客時など |
この商品、いいですね! | 魅力的な商品でございます | 接客・営業トークなどで丁寧に |
◆ ポイント
- 「よろしいでしょうか」「存じます」は丁寧で無難な敬語表現。
- 「いい/よい」をそのまま使うのは、限定的(例:「よいお年を」など)。
- 抽象的な形容詞(いい)を、具体的な敬語表現に置き換えるとフォーマル度が増す。
- カジュアル表現を使うと、丁寧さに欠ける印象を与えることがあるため注意。
「よい(良い)」「いい」を使ったことわざ・慣用句

「よい/いい」という言葉は、古くからことわざや慣用句にも多く用いられてきました。
こうした表現は、日常会話でも自然に使えるだけでなく、日本語の文化的背景や価値観を反映していることが多いため、語彙力や表現力を高めるのにとても役立ちます。
この章では、「よい」「いい」を含む代表的なことわざ・慣用句10選を紹介し、それぞれの意味と使い方を解説します。
「よい/いい」を使ったことわざ・慣用句10選
表現 | 意味・解説 | 例文 |
---|---|---|
良薬は口に苦し(りょうやくはくちににがし) | 本当にためになること(忠告など)は、聞くのがつらいことが多い | 厳しい先生の指導も、後になれば「良薬は口に苦し」だと感じた。 |
良いか悪いかは時が決める | 結果が出るまでは物事の善し悪しは判断できない | 今はつらいけど、将来どうなるか分からない。「良いか悪いかは時が決める」よね。 |
悪事千里を走る、良事門を出ず | 悪い噂はすぐ広まるが、良いことはなかなか知られない | 助けたことは誰にも知られないけど、失敗はすぐに広まる。悪事千里を走る、良事門を出ずだな。 |
良縁に恵まれる(りょうえんにめぐまれる) | 良い人間関係・結婚相手に出会うこと | この出会いは人生で一番の良縁に恵まれた瞬間だった。 |
良心が咎める(りょうしんがとがめる) | 自分の行動に対して罪悪感を感じること | 嘘をついた後、良心が咎めて眠れなかった。 |
いい気になる | 自分が褒められて、調子に乗ること | 少し褒められただけでいい気になってはいけないよ。 |
いい加減にする | 適当で無責任な態度をとること | いつまでもだらだらして、いい加減にしなさい! |
いいところを突く | 相手の核心を的確に指摘すること | 彼の発言はいいところを突いていた。 |
いい顔をする | 全員に好かれようとして八方美人になること | 上司にも部下にもいい顔をしようとして失敗した。 |
いいところ取り | 都合のいいところだけ取って、責任を取らないこと | 彼はいつもいいとこ取りばかりしてずるい。 |
ポイント
- 「よい」を使う表現は、比較的古風・文学的・教訓的な印象を持つ(例:「良薬は口に苦し」)
- 「いい」を使う慣用句は、現代的で会話向け(例:「いい加減にする」「いいところを突く」)
- 場面に応じて表現を使い分けることで、より自然で説得力のある文章や会話ができる
まとめ
「よい(良い)」と「いい」は、意味は同じでも使い分けが重要な言葉です。文章やフォーマルな場面では、「よい」「良い」と表記することで、落ち着いた印象や丁寧さを表現できます。一方で、会話やカジュアルな文章、SNSなどでは「いい」を使うことで、自然で親しみやすい表現になります。
また、「良い」は常用漢字として認められている一方で、「いい」は常用漢字表に含まれておらず、書き言葉で使うには不適切な場合もあるため注意が必要です。敬語や慣用句にも「よい/いい」を使った多くの表現があり、使い分けによって文章の印象や相手への伝わり方が変わります。
場面や目的に応じて、正しく柔軟に使い分けることで、より伝わる、心地よい日本語表現ができるようになるでしょう。