精勤賞とは?皆勤賞との違い|廃止傾向にある理由

学校や職場などで目にする「精勤賞」や「皆勤賞」という言葉。表彰の場面でよく登場するこれらの賞は、「休まずに通った」「真面目に取り組んだ」ことに対して与えられるものですが、その違いや意義についてはあまり詳しく知られていないのが現状です。
一見すると似たような意味に見える精勤賞と皆勤賞ですが、実はその内容や表彰の条件にははっきりとした違いがあります。また、時代の変化とともに、これらの賞が見直されている場面も増えています。
この記事では、精勤賞と皆勤賞の意味や違いをはじめ、学校や職場での扱われ方、自衛隊における「精勤章」との違いまで、詳しく解説していきます。
精勤賞とは?

意味や条件
精勤賞(せいきんしょう)とは、「休みが少なく、真面目に通ったことを評価して与えられる賞」です。学校や企業などで一定の出席・出勤率を保ち、規律を守って活動した人に対して授与されます。
精勤賞の主な特徴
- 皆勤賞よりも柔軟な基準
精勤賞は、多少の欠席や遅刻があっても、一定の基準を満たしていれば受賞できます。例えば、1年間に3日以内の欠席ならOKというように、組織ごとに細かく条件が定められていることが多いです。 - 「継続して努力したこと」を重視
皆勤賞が「一度も休まないこと」を評価するのに対し、精勤賞は「継続的な努力や態度」を重視します。たとえば、体調不良でやむを得ず休んだとしても、それ以外の日に誠実に通っていれば表彰の対象となることがあります。 - 対象者の範囲が広い
精勤賞は、幼稚園児から社会人まで幅広い年齢層に適用される表彰制度です。特に企業では、「勤怠の安定性」や「勤労意欲の高さ」の証として評価される場合もあります。
具体的な条件の例
区分 | 精勤賞の条件例 |
---|---|
幼稚園 | 登園率90%以上(月単位または年間) |
小学校・中学校 | 年間欠席日数3日以内、遅刻・早退合計5回以内 |
高校 | 欠席3日以内で「学年精勤賞」、3年間で「3カ年精勤賞」 |
企業 | 欠勤0〜1日以内、遅刻・早退合計3回以内、服務態度良好 |
※上記の条件は一例であり、学校や地域、企業によって異なります。
このように、精勤賞は「完璧ではないが、安定して努力したこと」を認める賞です。無理なく表彰の対象になるため、児童・生徒、従業員のモチベーション維持にも役立つとされています。
企業における具体的な評価ポイント
- 月間・年間を通しての安定した勤務
- 欠勤日数が0〜1日以内(有給休暇は除外)
- 遅刻・早退の回数が規定以内(例:3回以内)
- 無断欠勤・懲戒歴がないこと
- 勤務態度や報告・連絡・相談などの基本行動が良好であること
企業によっては、精勤賞に金銭的報酬(精勤手当)が付与されることもあり、社員のモチベーション維持や職場の規律向上を目的としています。
皆勤賞とは?

意味や条件
皆勤賞(かいきんしょう)とは、「一定の期間中に一度も休まず、遅刻や早退もせずに通学・通勤した人」に対して贈られる賞です。特に学校生活においては、学期末や年度末に表彰されることが一般的で、努力と健康を称える意味合いがあります。
皆勤賞の主な条件
- 欠席・遅刻・早退が「一切ない」こと
皆勤賞の最大の特徴は、たとえ1日でも欠席があれば対象外になる点です。多くの学校や企業では、遅刻・早退も含めて一度も記録がないことが求められます。例えば、風邪で半日休んだ場合や、通院で数時間抜けた場合も対象外になることがあります。 - 強い自己管理能力が求められる
自己管理だけでなく、生活リズムや時間管理の能力も試されるため、皆勤賞を取るにはかなりの努力が必要です。 - 身体状態や家庭の事情による欠席も対象外
病気、ケガ、忌引きなど正当な理由がある場合でも、基本的には皆勤賞の対象にはなりません。ただし、例外として柔軟に判断される学校も一部あります。
具体的な条件の例(学校の場合)
学校区分 | 皆勤賞の条件例 |
---|---|
小学校・中学校 | 年間で欠席・遅刻・早退がゼロ |
高校 | 3年間無欠席で「3カ年皆勤賞」などもあり |
幼稚園 | 1学期・1年間の無欠席が対象(園によって異なる) |
皆勤賞の意義
- 規律正しい生活の証明
毎日同じ時間に登校・出勤できるということは、生活リズムが整っている証でもあります。 - 継続力や責任感を評価
社会人においては、勤怠の安定性が評価されることもあり、賞与や昇進に影響するケースもあります。
ただし、無理をして出席・出勤を続けることで、体調を悪化させたり、他人に感染症をうつしてしまう懸念もあるため、近年はその運用方法について見直しが進んでいます。
精勤賞と皆勤賞の違い

精勤賞と皆勤賞は、どちらも「通学・通勤の継続的な努力」を評価する表彰制度ですが、実際には評価される基準や目的が大きく異なります。ここでは、それぞれの違いをわかりやすく比較していきます。
条件の違い
項目 | 精勤賞 | 皆勤賞 |
---|---|---|
欠席の有無 | 一定の欠席は許容される | 欠席は一切不可 |
遅刻・早退 | 許容される場合あり | 一切不可 |
例外的な事情(病気・忌引きなど) | 柔軟な対応あり | 基本的に対象外 |
難易度 | 中程度 | 高い(非常に厳格) |
表彰の意図・目的の違い
- 精勤賞:
継続的に努力して通い続けたこと、態度や姿勢の誠実さを評価。
体調不良や家庭の事情などを考慮しつつ、「よく頑張ったこと」を称える。 - 皆勤賞:
一度も休まず、すべての日に出席・出勤したという事実を重視。
高い自己管理能力と身体状態を証明する手段として評価される。
精勤賞と皆勤賞、どちらが優れている?
これは一概に言えません。どちらもそれぞれの基準に基づいて「努力のかたち」を表彰しており、状況や価値観によって評価のされ方が異なります。
- 精勤賞は、少しの欠席があっても真面目に通った姿勢を評価する柔軟な制度。
- 皆勤賞は、「完璧な出席」を達成するという明確で厳格な目標。
受賞者のモチベーションや組織の方針に応じて、どちらが適切かを見極めることが大切です。
精勤賞や皆勤賞が廃止傾向にある理由

かつては広く普及していた精勤賞や皆勤賞ですが、近年では「見直し」や「廃止」に踏み切る学校や企業が増えてきています。その背景には、社会の価値観の変化や、福祉を重視する考え方の広まりがあります。
理由①:無理な出席・出勤を助長する
皆勤賞や精勤賞を目指すあまり、体調不良でも無理に登校・出勤する人が出てくるケースがあります。これが以下のような問題を引き起こします。
- 病気を我慢して登校する児童・生徒の増加
風邪などの感染症でも「休むと賞がもらえない」と無理に登校するケースがあり、集団感染のリスクが高まります。 - 職場でも“休まないこと”が評価されがち
体調を崩しても「精勤手当が減るから出社する」といった行動が助長され、長期的には生産性の低下や健全な職場のリスクにつながります。
理由②:身体や多様性への配慮が求められている
現代社会では、心身の状態や個人の事情に配慮した働き方・学び方が重視されています。そのため、「休むこと=悪」という価値観に基づく表彰制度には疑問の声が上がっています。
- メンタルヘルスへの配慮
心の不調で休んだ日が原因で表彰されないことが、本人にとって大きなプレッシャーになることもあります。 - 家庭環境や障がいへの配慮
例えば、家族の介護、持病による通院、経済的事情による欠席など、「休まざるを得ない理由」を抱える子どもも少なくありません。
理由③:真の努力を評価する仕組みではないとの指摘
「たまたま体調を崩さなかっただけで受賞できた」「遅刻しないようにする努力は評価されないのか」といった声もあり、単純な出席記録だけで努力を測る制度には限界があるという指摘も増えています。
こうした理由から、近年では以下のような変化が見られるようになっています。
- 精勤賞・皆勤賞の廃止や縮小
- 「がんばり賞」「努力賞」など、個々の状況に応じた表彰制度への移行
- 学校や企業での体調第一の方針の強化
表彰制度は、本来は「努力を称える」ものであるべきです。制度そのものも、時代に合わせて見直されることが求められています。
精勤賞はどこで使われている?

精勤賞は、学校から企業まで、幅広い場面で活用されています。特に、一定の出席・出勤状況を評価する目的で、教育機関や組織の中で制度化されていることが多いです。以下、それぞれの機関における活用例を紹介します。
幼稚園・保育園
- 月ごとの登園状況を評価
幼稚園や保育園では、「1か月間休まず登園した子ども」に精勤賞や皆勤賞が贈られることがあります。
→ 賞状やメダル、スタンプなど、子どものやる気を引き出す形式が多い。 - 年間表彰もあり
年度末に「年間を通してよく登園した子」として精勤賞を贈る園もあります。
※幼児期は体調の変化が激しいため、近年では無理をさせない方向へシフトしています。
小学校・中学校・高校
- 学期末・年度末に表彰
学校行事の一環として、終業式などで精勤賞が授与されます。
→ たとえば、「欠席が3日以内」「遅刻・早退が5回以内」などが条件。 - 皆勤賞との併用
皆勤賞と並行して精勤賞が用意されていることが多く、「惜しくも皆勤を逃したけれど頑張った生徒」を評価する意味で導入されています。 - 高校では3カ年精勤賞も
3年間通じて安定した出席状況が続いた生徒に対して「3カ年精勤賞」を授与する学校もあります。
大学
- 表彰制度自体が少ない
大学では出席の有無が成績に直接反映される講義もあるものの、出席に対して精勤賞などの表彰制度を設けている例は非常に少ないです。 - 研究活動や成績に重きを置くため
大学では勤怠よりも成果・成果物(論文、プレゼン、成績)などを評価する文化が強いためです。
企業・職場
- 精勤手当というかたちで評価
多くの企業では「精勤手当」として、出勤状況の良い社員に金銭的なインセンティブを支給しています。
→ 月ごとや年ごとに「欠勤なし」「遅刻・早退なし」が条件。 - 表彰制度として精勤賞を導入する企業も
長期勤続者に対する「永年勤続表彰」とは別に、「1年間無遅刻無欠勤」などを基準とした精勤賞が設けられているケースもあります。 - 働き方改革との両立が課題
現代では、リモートワークやフレックス制度も普及しており、「出勤数」だけでは評価が難しくなっている背景もあります。
自衛隊で表彰されるのは精勤章

精勤賞と精勤章の違い
「精勤賞」と似た言葉に精勤章(せいきんしょう)というものがありますが、これはまったく別物です。特に自衛隊では、勤続年数や服務状況に応じて精勤章という正式な章(勲章のようなもの)が授与されます。
ここでは、精勤賞と精勤章の違いについて整理しておきましょう。
精勤章とは?
- 防衛省・自衛隊の表彰制度の一つで、自衛官の勤務実績を称えるもの。
- 一定の年数、服務に問題なく職務を全うした隊員に対して授与される。
- 規則的な勤怠だけでなく、規律の遵守や職務遂行の優秀さなども評価基準に含まれる。
- 実際には、金色・銀色・銅色のバッジのような形で授与され、制服に着用できる。
精勤賞との主な違い
比較項目 | 精勤賞 | 精勤章 |
---|---|---|
使用機関 | 学校・企業など民間 | 自衛隊(防衛省) |
性質 | 出席・出勤状況の表彰 | 勤務実績に基づく公式表彰 |
対象 | 児童・生徒・社員など | 自衛官(職業軍人) |
授与形式 | 表彰状・副賞など | 制服に着用する徽章(バッジ) |
評価要素 | 欠席・遅刻の少なさ | 勤続年数・服務態度・職務実績など |
混同に注意
「精勤賞」と「精勤章」は名称が似ているため混同されがちですが、制度の目的も対象者も大きく異なるものです。特に「章」がつく場合は、より公式で厳格な制度であることが多く、単なる皆勤や精勤とは別の次元の評価と言えるでしょう。
よくある質問(FAQ)

ここでは、「精勤賞」「皆勤賞」について、読者の方からよく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。
Q1. 欠席の理由が病気でも、皆勤賞はもらえないの?
A. 原則としてもらえません。
皆勤賞は「1日も欠席・遅刻・早退がないこと」が前提です。病気や通院、忌引きなど、やむを得ない事情があった場合でも、皆勤賞の基準からは外れてしまうのが一般的です。
ただし、学校や組織によっては、医師の診断書がある場合に「特別皆勤賞」として柔軟な対応をしているケースもあります。
Q2. 精勤賞と皆勤賞、どちらの方が評価されやすいですか?
A. 状況によります。
皆勤賞は「一度も休まなかった」という厳格な評価ポイントがあるため、一部では高く評価されることもあります。ただし、無理な出席を助長するという懸念もあるため、最近では精勤賞の方が現実的かつ健全的な努力として好まれる傾向にあります。
Q3. 精勤賞や皆勤賞は履歴書に書いてもいいの?
A. 一般的には書かなくてもOK。ただし例外あり。
学校での皆勤賞・精勤賞は、履歴書に記載する必要は通常ありません。ただし、高校時代に「3カ年皆勤」などの実績があれば、面接時の話題として有効なこともあります。
企業の精勤賞(社内表彰)については、業績表彰などとあわせて記載しても問題ありません。特に、真面目な勤務態度をアピールしたい場合には役立つこともあります。
Q4. 精勤賞や皆勤賞は賞品や金銭がもらえるの?
A. 学校では記念品、企業では手当がつく場合も。
学校では賞状や文具などの記念品が多く、金銭が支給されることはまれです。一方、企業では「精勤手当」として毎月一定額が給与に加算される制度があり、金銭的なメリットがあります。
Q5. リモートワークでも精勤賞は対象になるの?
A. 就業規則によります。
出社が前提の精勤賞制度では、リモートワークは対象外とされる場合があります。ただし、近年では勤務状況を柔軟に評価するため、リモート勤務日も「出勤扱い」としてカウントする企業が増えています。詳しくは所属する組織の就業規則を確認しましょう。
まとめ
精勤賞と皆勤賞は、一見似ているようでいて、その意味・条件・目的に明確な違いがあります。皆勤賞は「1日も休まず、遅刻も早退もない完璧な出席」を評価するもので、非常に厳格な基準が設けられています。一方、精勤賞は「多少の欠席はあっても、真面目に通い続けた努力」を柔軟に評価する制度です。
近年では、無理な出席を防ぐためにこれらの表彰制度を見直す動きが広がっています。病気や家庭の事情で休むことが当たり前に受け入れられる時代になりつつあり、「休まないこと」が絶対的な美徳ではなくなってきたのです。
それでも、精勤賞・皆勤賞は、個人の努力や誠実さを見える形で評価するという意味では、今も多くの学校や職場で一定の役割を果たしています。今後は、誰もが安心して努力できる環境づくりと、より多様性に対応した評価の仕組みが求められていくでしょう。