前提とは?意味や使い方【シーン別30例文】

私たちが日々交わす会話や議論、そしてビジネス上のやり取り。その中には、言葉にされない「共通理解」や「当然のこと」として受け止められている情報がたくさんあります。このような、物事を進めるために“あらかじめ成立している条件や考え”を、「前提」と呼びます。
たとえば、「明日は会議がある」という話の背後には、「全員が明日出社することを前提にしている」といった情報が潜んでいます。このように、「前提」は私たちの思考や行動、コミュニケーションの土台を支える非常に重要な要素です。
しかしながら、「前提」の意味や使い方を深く理解していないと、認識のズレや誤解を招くこともあります。特にビジネスの場面では、前提を誤ることで大きなトラブルに発展することも。
この記事では、「前提」の基本的な意味から言い換え表現、英語での表現方法、そして実際の使用シーンにおける具体的な例文までを丁寧に解説していきます。初学者にもわかりやすいように、用語の説明も交えながら進めていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
「前提」の意味

「前提(ぜんてい)」とは、ある物事が成り立つための土台となる条件や考え方のことを指します。つまり、ある主張や行動を成立させるために、あらかじめ認めておく必要がある条件・事実のことです。
辞書における定義
たとえば『広辞苑』では、「ある事が成り立つためのもとになる条件。議論・判断などの出発点となる事柄」と説明されています。これは、前提が単なる背景情報ではなく、物事の「出発点」としての性格を持っていることを示しています。
ビジネスにおける「前提」
ビジネスの場では、「このプロジェクトは予算1000万円を前提として進める」といった形で使われます。この場合、「予算が1000万円であること」がプロジェクト実施の前提条件であり、それが崩れると計画自体を見直さなければならなくなります。
日常生活における「前提」
日常会話でも、「みんなが集まる前提で話を進めていたのに…」のように使われます。このように、前提は話し手の「当然そうなるはず」「そのつもりだった」という意図を示すものです。
論理・学術における「前提」
論理学や学術の分野では、「前提」は議論や証明の出発点を意味します。たとえば、「AがBであると仮定する」という命題があったとき、「AがBである」は前提として扱われ、その前提をもとに結論を導いていきます。
「前提」の言い換え(類語)
「前提」という言葉はさまざまな場面で使われますが、文脈によってはより適切な表現や、ニュアンスの異なる言い換え語を使うことで、伝えたいことがより正確になります。以下に、「前提」の主な言い換え表現と、それぞれの意味・使い分けについて解説します。
仮定(かてい)
意味:事実ではないかもしれないが、ある条件を一時的に成り立つものとして考えること。
使い方:「もし明日雨が降ると仮定したら、イベントは中止になる」
違い:「仮定」はあくまで“仮の条件”として置くものであり、「前提」ほど現実性や確実性を持たないことが多いです。
条件(じょうけん)
意味:ある物事が成立するために必要な取り決めや制限事項。
使い方:「契約を結ぶ条件として、納期を守ることが求められる」
違い:「条件」は外的・客観的なルールや基準を指すことが多く、「前提」はもっと主観的・思考的な出発点であることが多いです。
前置き(まえおき)
意味:本題に入る前に述べる説明や背景の話。
使い方:「少し前置きが長くなりましたが、本題に入ります」
違い:「前置き」は発言や文章の流れを整えるための“導入部”であり、「前提」は話の“土台”として機能する点が異なります。
基礎(きそ)
意味:何かを築くための基本的な要素や仕組み。
使い方:「この理論は物理学の基礎に基づいている」
違い:「基礎」は物理的・構造的な土台を指すこともあり、「前提」より広く一般的な意味で使われます。
これらの類語をうまく使い分けることで、文章や会話の正確さと説得力が格段に高まります。
「前提」の英語表現
「前提」は英語でもよく使われる概念で、特にビジネスや論理的議論の場では頻出です。主な英訳としては、「premise(プレミス)」と「assumption(アサンプション)」の2語が代表的です。ここではそれぞれの意味と使い分け、例文もあわせてご紹介します。
premise(プレミス)
意味:ある議論や理論が成り立つための前提となる根拠、出発点。
使い方:
- The argument is based on the premise that all people are created equal.
- (この議論は、すべての人が平等に創られているという前提に基づいている)
補足:「premise」は論理や議論の文脈でよく使われる、より“客観的で論理的な前提”を指す表現です。
assumption(アサンプション)
意味:ある事実や状況を正しいと“仮定して”受け入れること。必ずしも確実とは限らない前提。
使い方:
- We are working on the assumption that the project will start next month.
- (プロジェクトが来月開始されるという前提で進めています)
補足:「assumption」は“推測的・仮定的”な要素が強く、現実とは限らない場合にも使われます。
その他の関連表現
- condition(条件):This offer is valid under the condition that payment is made in advance.
- prerequisite(必須条件、前提条件):Knowledge of basic math is a prerequisite for this course.
これらを文脈によって使い分けることで、英語でも正確かつ自然な表現が可能になります。
「前提」が使われるシーンと例文【30選】

「前提」という言葉は、私たちが日常生活やビジネス、教育・学術の現場で使うさまざまな場面に登場します。ここでは、その使用シーンごとに具体的な例文を示しながら、「前提」の使われ方を解説します。
ビジネスシーン
ビジネスにおいては、業務を円滑に進めるために「前提条件」の明確化が重要です。前提が食い違うと、重大なトラブルにもつながりかねません。
- この提案は、既存システムを利用することを前提に作成しています。
- 来月の売上が前年同月並みという前提で予算を組みました。
- チーム全員がフルリモートで働くことを前提に会議のスケジュールを調整しました。
- この契約は、顧客の納期厳守が前提です。
- 全社員が参加することを前提としたイベントです。
- 競合他社が同様の機能を提供していないことを前提に、差別化戦略を立てました。
- このシステムは、一定以上のネット回線速度があることを前提としています。
- 社外秘であることを前提に、資料を共有してください。
- 業務の引き継ぎが完了していることを前提に、退職手続きを進めます。
- 社長の承認を前提とした予算案です。
日常会話
私たちの会話の中でも、「前提」は“当然のこと”や“思い込み”として無意識に使われています。そこには、暗黙の了解や期待が含まれています。
- 雨が降る前提で傘を持って出かけたけど、全然降らなかったね。
- 明日みんなが来る前提で料理の準備をしてるよ。
- 電車が定刻通りに動く前提で出発時間を決めたけど、遅れてた…。
- 君がやってくれる前提で話を進めてたから、正直焦ったよ。
- この話、秘密にしてくれる前提で話していい?
- 今日の試合は勝つ前提で応援するよ!
- みんな理解している前提で授業が進んでるけど、正直ついていけない…。
- 結婚を前提にお付き合いしたいと思っています。
- 子どもが寝ている前提で話し合おう。
- 渋滞がない前提で1時間後に着く予定です。
学術・教育・論理的文脈
学術や教育の現場では、「前提」が議論や研究の出発点として重要な役割を果たします。正しい前提の設定は、正確な結論を導くための鍵です。
- この仮説は、遺伝が主な要因であるという前提に立っています。
- すべての人が理性的であるという前提は、現実とは異なる。
- 本研究は、対象者が18歳以上であることを前提としています。
- 演習問題は、関数の基礎を理解していることが前提です。
- 論理的に考えるには、まず正しい前提を設定することが重要です。
- 過去のデータを正確とする前提で分析を行いました。
- この証明は、公理AとBを前提に成り立ちます。
- 授業では日本語の理解力があることを前提に進めています。
- 政治理論は、国家という概念の存在を前提に構築されています。
- 「前提が違う」とは、そもそも話し合いの出発点が食い違っているという意味です。
よくある質問

「前提」という言葉は便利で汎用性が高い一方、誤解や混乱を招きやすい場面も少なくありません。ここでは、「前提」に関するよくある疑問について、わかりやすくお答えします。
Q1. 「前提条件」と「前提」は何が違うの?
A:
「前提」と「前提条件」は似ていますが、ニュアンスが少し異なります。
- 前提:物事が成り立つために“当然とされている”土台・出発点。
- 前提条件:ある物事を進める上で、明確に“必要とされる条件”。
例)「プロジェクトの成功には、顧客の協力が前提です」→ 一般的に当然の想定
「プロジェクトの成功には、顧客の協力が前提条件です」→ 必ず満たすべき条件として明示
Q2. 「前提が間違っている」とはどういう意味?
A:
「前提が間違っている」というのは、議論や行動の出発点となる考えや条件が現実に即していない、もしくは誤解に基づいているということです。
たとえば、「このシステムは全員がPCを持っていることを前提に設計されています」が、実際にはPCを持っていない人が多かった場合、「前提が間違っていた」ということになります。
Q3. なぜ前提を確認することが大切なの?
A:
前提が共有されていないと、相互理解にずれが生じ、議論がかみ合わなかったり、プロジェクトが失敗に終わったりする可能性があります。
特にビジネスや教育の場面では、「当然と思っていたことが、実は共有されていなかった」というケースが非常に多いため、「前提の確認」は円滑な進行や成果に直結します。
Q4. 論理的思考における「前提」とは?
A:
論理的思考では、結論を導くための出発点として「前提」が使われます。正しい前提を置かなければ、正しい結論にたどり着くことはできません。
例:「AならばB」「Aである」→ よって「Bである」
ここで「Aである」が間違っていれば、結論「Bである」も成り立たなくなります。
まとめ
「前提」は、私たちの思考や会話、意思決定の基盤となる重要な要素です。ビジネス、日常、学術など、さまざまなシーンで使われるこの言葉は、誤解なく共有されることで、円滑なコミュニケーションと正確な判断を可能にします。
本記事では、「前提」の意味から類語、英語表現、使用シーン、具体例30選、さらにはよくある質問まで網羅的に解説しました。「前提」という概念を正しく理解し、実際の会話や文書で適切に活用することで、あなたの伝える力と理解力は一段と深まるでしょう。