組織別「敬称(呼び方)・書き方・名乗り方」できる人のビジネスマナー

ビジネスの現場では、相手や組織を正しく呼び、名乗ることが信頼関係を築く第一歩です。特に、日本のビジネスマナーにおいては、敬称の使い方や名乗り方ひとつで、相手に与える印象が大きく変わります。
たとえば、企業の代表者に「社長様」と呼びかけるのは過剰で、逆に失礼にあたる場合もあります。また、自社を「御社」と呼んでしまうと、自己評価が高すぎるように受け取られることもあります。正確な呼び方を知らずに使ってしまうと、相手を不快にさせたり、信頼を損なったりするリスクがあるのです。
本記事では、さまざまな組織における正しい「敬称(呼び方)」「書き方」「名乗り方」について解説します。これを読むことで、迷わず、失礼なく、ビジネス上のやり取りをスムーズに進められるようになります。
それでは早速、各組織ごとのマナーについて詳しく見ていきましょう。
組織別「敬称(呼び方)・書き方・名乗り方」

一般企業
- 敬称(呼び方):御社(おんしゃ)
→ 相手の会社を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴社(きしゃ)
→ 相手の会社を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当社(とうしゃ)、弊社(へいしゃ)
→ 自分の会社を指すときに使います。
銀行
- 敬称(呼び方):御行(おんこう)
→ 相手の銀行を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴行(きこう)
→ 相手の銀行を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当行(とうこう)、弊行(へいこう)
→ 自分の銀行を指すときに使います。
信用金庫
- 敬称(呼び方):御庫(おんこ)
→ 相手の信用金庫を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴庫(きこ)
→ 相手の信用金庫を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当庫(とうこ)、弊庫(へいこ)
→ 自分の信用金庫を指すときに使います。
郵便局
- 敬称(呼び方):御局(おんきょく)
→ 相手の郵便局を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴局(ききょく)
→ 相手の郵便局を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当局(とうきょく)、弊局(へいきょく)
→ 自分の郵便局を指すときに使います。
組合
- 敬称(呼び方):御組合(おんくみあい)
→ 相手の組合を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴組合(きくみあい)
→ 相手の組合を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当組合(とうくみあい)、弊組合(へいくみあい)
→ 自分の組合を指すときに使います。
協会
- 敬称(呼び方):御協会(おんきょうかい)
→ 相手の協会を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴協会(ききょうかい)
→ 相手の協会を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当協会(とうきょうかい)、弊協会(へいきょうかい)
→ 自分の協会を指すときに使います。
社団法人・NPO法人
- 敬称(呼び方):御法人(おんほうじん)
→ 相手の法人(社団法人やNPO法人)を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴法人(きほうじん)
→ 相手の法人を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当法人(とうほうじん)、弊法人(へいほうじん)
→ 自分の法人を指すときに使います。
財団
- 敬称(呼び方):御財団(おんざいだん)
→ 相手の財団を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴財団(きざいだん)
→ 相手の財団を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当財団(とうざいだん)、弊財団(へいざいだん)
→ 自分の財団を指すときに使います。
機構
- 敬称(呼び方):御機構(おんきこう)
→ 相手の機構を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴機構(ききこう)
→ 相手の機構を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当機構(とうきこう)、弊機構(へいきこう)
→ 自分の機構を指すときに使います。
学校(小・中・高校)
- 敬称(呼び方):御校(おんこう)
→ 相手の学校を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴校(きこう)
→ 相手の学校を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当校(とうこう)、弊校(へいこう)
→ 自分の学校を指すときに使います。
学園
- 敬称(呼び方):御学園(おんがくえん)
→ 相手の学園を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴学園(きがくえん)
→ 相手の学園を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当学園(とうがくえん)、弊学園(へいがくえん)
→ 自分の学園を指すときに使います。
学院
- 敬称(呼び方):御学院(おんがくいん)
→ 相手の学院を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴学院(きがくいん)
→ 相手の学院を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当学院(とうがくいん)、弊学院(へいがくいん)
→ 自分の学院を指すときに使います。
大学
- 敬称(呼び方):御学(おんがく)
→ 相手の大学を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴学(きがく)
→ 相手の大学を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:本学(ほんがく)、当大学(とうだいがく)、弊学(へいがく)
→ 自分の大学を指すときに使います。
幼稚園・保育園
- 敬称(呼び方):御園(おんえん)
→ 相手の幼稚園・保育園を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴園(きえん)
→ 相手の園を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当園(とうえん)、弊園(へいえん)
→ 自分の園を指すときに使います。
図書館
- 敬称(呼び方):御館(おんかん)
→ 相手の図書館を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴館(きかん)
→ 相手の図書館を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当館(とうかん)、弊館(へいかん)
→ 自分の図書館を指すときに使います。
教会・寺院・神社
- 敬称(呼び方):御教会(おんきょうかい)、御寺院(おんじいん)、御社(おんしゃ)
→ 相手の宗教施設を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴教会(ききょうかい)、貴寺院(きじいん)、貴社(きしゃ)
→ 相手の施設を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当教会(とうきょうかい)、当寺院(とうじいん)、当社(とうしゃ)
→ 自分の宗教施設を指すときに使います。
病院
- 敬称(呼び方):御院(おんいん)
→ 相手の病院を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴院(きいん)
→ 相手の病院を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当院(とういん)、弊院(へいいん)
→ 自分の病院を指すときに使います。
ホテル
- 敬称(呼び方):御ホテル(おんほてる)
→ 相手のホテルを口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴ホテル(きほてる)
→ 相手のホテルを文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当ホテル(とうほてる)、弊ホテル(へいほてる)
→ 自分のホテルを指すときに使います。
旅館
- 敬称(呼び方):御旅館(おんりょかん)
→ 相手の旅館を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴旅館(きりょかん)
→ 相手の旅館を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当旅館(とうりょかん)、弊旅館(へいりょかん)
→ 自分の旅館を指すときに使います。
レストラン
- 敬称(呼び方):御店(おんみせ)
→ 相手のレストランを口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴店(きてん)
→ 相手の店舗を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当店(とうてん)、弊店(へいてん)
→ 自分の店舗を指すときに使います。
新聞・雑誌
- 敬称(呼び方):御社(おんしゃ)
→ 相手の出版社や新聞社を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴社(きしゃ)、貴紙(きし:新聞)、貴誌(きし:雑誌)
→ 相手の媒体を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当社(とうしゃ)、弊社(へいしゃ)、本紙(ほんし)
→ 自分のメディアを指すときに使います。
放送局
- 敬称(呼び方):御局(おんきょく)
→ 相手の放送局を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴局(ききょく)
→ 相手の放送局を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当局(とうきょく)、弊局(へいきょく)
→ 自分の放送局を指すときに使います。
スーパーマーケット・小売店
- 敬称(呼び方):御店(おんみせ)
→ 相手の店舗を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴店(きてん)
→ 相手の店舗を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当店(とうてん)、弊店(へいてん)
→ 自分の店舗を指すときに使います。
官公庁
- 敬称(呼び方):御庁(おんちょう)、御省(おんしょう)
→ 相手の官公庁(省庁・地方自治体など)を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴庁(きちょう)、貴省(きしょう)
→ 相手の官公庁を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当庁(とうちょう)、弊庁(へいちょう)
→ 自分の所属庁を指すときに使います。
弁護士事務所
- 敬称(呼び方):御事務所(おんじむしょ)
→ 相手の法律事務所を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴事務所(きじむしょ)
→ 相手の事務所を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当事務所(とうじむしょ)、弊事務所(へいじむしょ)
→ 自分の事務所を指すときに使います。
NPO法人
- 敬称(呼び方):御法人(おんほうじん)
→ 相手のNPO法人を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴法人(きほうじん)
→ 相手のNPO法人を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当法人(とうほうじん)、弊法人(へいほうじん)
→ 自分の法人を指すときに使います。
財団法人
- 敬称(呼び方):御財団(おんざいだん)
→ 相手の財団法人を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴財団(きざいだん)
→ 相手の財団法人を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当財団(とうざいだん)、弊財団(へいざいだん)
→ 自分の財団法人を指すときに使います。
独立行政法人
- 敬称(呼び方):御法人(おんほうじん)
→ 相手の独立行政法人を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴法人(きほうじん)
→ 相手の独立行政法人を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当法人(とうほうじん)、弊法人(へいほうじん)
→ 自分の独立行政法人を指すときに使います。
社団法人
- 敬称(呼び方):御法人(おんほうじん)
→ 相手の社団法人を口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴法人(きほうじん)
→ 相手の社団法人を文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当法人(とうほうじん)、弊法人(へいほうじん)
→ 自分の社団法人を指すときに使います。
NGO
- 敬称(呼び方):御団体(おんだんたい)
→ 相手のNGOを口頭で指すときに使います。 - 書き方:貴団体(きだんたい)
→ 相手のNGOを文書で指すときに使います。 - 名乗り方:当団体(とうだんたい)、弊団体(へいだんたい)
→ 自分のNGOを指すときに使います。
迷ったら「私ども」が便利!

ビジネスで「自社」や「自分たち」をどう表現するか迷ったとき、非常に便利で失礼のない言い回しが「私ども(わたくしども)」です。
「私ども」の使い方と利点
- 万能な敬語表現:「私ども」は自分たちの組織やチームをへりくだって表す丁寧な表現で、業種・立場を問わず幅広く使えます。
- 口頭・文書の両方で使用可:電話や会話だけでなく、メールやビジネス文書にも使えます。
- 初対面・不明確な関係でも安心:相手に対して必要以上に自己主張せず、丁寧な印象を与えます。
使用例
- 「私どもは○○の業務を専門にしております。」
- 「私どもでよろしければ、お手伝いさせていただきます。」
- 「ご不明点がございましたら、私どもまでお問い合わせください。」
「弊社」「当社」「本法人」などは、組織の種類や相手との関係性によって適切な選択が求められますが、「私ども」であればその心配がありません。特に若手社員や業界経験が浅い方にとっては、安心して使える表現です。
よくある質問

Q1. 「御社」と「貴社」はどう使い分ければいいですか?
A.「御社(おんしゃ)」は口頭で使う敬称、「貴社(きしゃ)」は文書で使う敬称です。どちらも相手の会社を敬って呼ぶ表現ですが、使用場面が異なります。
- 電話や対面での会話 → 「御社」
- メールや手紙、契約書 → 「貴社」
間違って逆に使っても致命的ではありませんが、細かいマナーができていると好印象です。
Q2. 敬称は重ねてもいいの?
A.基本的に敬称の重ね使いはNGです。たとえば、「○○部長様」「○○様へ」などは冗長で不自然な印象を与えます。
正しくは:
- 「○○部長」または「○○様」
- 「○○先生」または「○○教授」など
一つの敬称を選んで使うのがマナーです。
Q3. 自社を指すとき「当社」と「弊社」の使い分けは?
A.どちらも自分の会社を指しますが、相手や文脈によって使い分けるとより丁寧です。
- 当社:比較的フラットな表現で、社外・社内の両方に使用可能。
- 弊社:より丁寧で謙譲のニュアンスが強く、主に社外向けに使用します。
例:
- 社内文書 →「当社の方針により~」
- 社外向けメール →「弊社では、〇〇サービスを提供しております。」
Q4. NPO法人や財団法人にも「御社」「貴社」でいいの?
A.一般的には「御社」「貴社」よりも「御法人」「貴法人」の方が丁寧で適切です。NPOや社団法人、財団法人などの非営利組織は企業ではないため、「社」の敬称がややズレた印象になります。
迷う場合は、「貴団体」「当団体」なども柔軟に使える選択肢です。
まとめ
組織ごとの「敬称」「書き方」「名乗り方」は、ビジネスマナーの基本でありながら、意外と奥が深い分野です。正確な表現を使い分けることで、相手への敬意を示し、信頼関係の構築にもつながります。
迷ったときは「私ども」など汎用的な丁寧表現を活用し、状況に応じて適切な言葉を選ぶ意識を持ちましょう。特にメールや文書では、誤った敬称を使うと失礼になりかねません。
本記事を参考に、どんな相手にも自信を持って対応できる表現力を身につけましょう。