書く、描く、画くの違い【例文80】絵・設計図・グラフはどれを使う?

日本語には「かく」と読む漢字がいくつかありますが、その中でも特に混乱を招きやすいのが「書く」「描く」「画く」の3つです。すべて「かく」と発音するため、使い分けが曖昧になりがちですが、実はそれぞれに明確な意味と使いどころがあります。
たとえば、「絵をかく」は「書く」でしょうか?それとも「描く」でしょうか?また、「設計図をかく」と言うときには、どの漢字がふさわしいのでしょう?
この記事では、次のようなポイントに焦点を当てて詳しく解説していきます。
- 「書く」「描く」「画く」の意味の違い
- 正しい使い方と使い分けのルール
- よくある誤用の例
- 各語の使用例(合計80例)
この記事を読むことで、「かく」の正確な使い分けが身につき、より自然で的確な日本語表現ができるようになります。
目次
「書く」「描く」「画く」の違い

「書く」「描く」「画く」は、すべて「かく」と読む言葉ですが、それぞれ意味や使い方が異なります。違いをしっかり理解すれば、表現がより正確で自然になります。
漢字 | 主な意味 | 具体例 | 使う場面 |
---|---|---|---|
書く | 文字や記号を記す | 手紙を書く、名前を書く | 言葉・情報を文字で伝えるとき |
描く | 絵やイメージを表す | 絵を描く、夢を描く | 絵・図・心の中のイメージを表すとき |
画く | 「描く」とほぼ同じ(古語) | 大志を画く、山水を画く | 古文や文学的な表現で使用(現代では非推奨) |
「画く」は、「描く」とほぼ同じ意味ですが、現在はほとんど使われません。古文や詩など、伝統的・文学的な文脈で登場します。
例:大志を胸に画く(=理想を心に思い描く)
「書く」は、読み取れる形(文字・記号)で内容を伝えることに使います。情報の記録や伝達が目的です。
例:日記を書く、申込書に記入する、黒板に答えを書く
「描く」は、形やイメージ、感情などを視覚的に表す行為に使います。絵や物語、理想像などを表現するときにぴったりです。
例:風景を描く、物語を描く、夢を描く
「書く」の意味

「書く(かく)」とは、文字や記号、数字などを紙や画面に記すことを意味します。自分の考えや情報、気持ちなどを、他の人が読めるように形にする行為です。
たとえば、日記を書く、手紙を書く、黒板に答えを書く、といったように、言葉を「見える形」にして伝えるときに使います。
「書く」が使われる場面
- 日記を書く:その日の出来事や気持ちを記録する
- メールを書く:相手に伝えたいことを文章にして送る
- 黒板に文字を書く:授業中に情報を板書する
- 申込書に名前を書く:必要事項を記入する
- 手紙を書く:気持ちや連絡事項を紙にして伝える
このように、「書く」は情報や気持ちを伝えるために、文字で表すことを中心に使われます。言葉や数字など、読み取れる形で何かを記録する場合は、基本的に「書く」が正解です。
「描く」の意味

「描く(かく・えがく)」とは、絵やイメージ、頭の中の考えを形にして表すことを意味します。線や色を使って何かの「姿・形」を見えるようにする行為です。
たとえば、風景を紙に描く、キャラクターを描く、心の中の夢や理想を描く、といったように、見たもの・思い描いたものを表現する場合に使います。
「描く」が使われる場面
- 風景を描く:自然や景色を絵で表す
- 人物を描く:人の姿を絵にする
- 夢を描く:将来の目標や理想を想像して表現する
- 物語を描く:登場人物の心情や出来事を詳しく表す
- 設計図を描く:物の形や仕組みを図にして示す
このように、「描く」は形やイメージを視覚的に表すときに使われます。実際に絵を描く場合だけでなく、物語や考えを文章で表すときにも使うことがあります。
「画く」の意味

「画く(かく・えがく)」は、「描く」とほとんど同じ意味を持つ言葉ですが、今ではあまり使われない、古い表現です。現代の日常会話や文章では、ほとんど見かけることはありません。
もともとは、「絵や図を描く」「イメージを形にする」といった意味で使われていました。現在は、古文や文学的な文章、歴史的な記述の中で見られることがあります。
「画く」が使われる場面
- 古文や詩の表現:「大志を胸に画く」「山水を画く」など
- 昔の美術の記録:古い時代の絵画について記述する際
- 詩的・格式ばった文体:文学的な雰囲気を出すために使われる
現代では、同じ意味で「描く」を使うのが一般的です。「画く」を使うと読み手にとってわかりづらくなる可能性があるため、通常は避けるのが無難です。
「書く」「描く」「画く」正しい使い方と使い分け

ここでは、「書く」「描く」「画く」のどれを使えばよいか迷いやすい場面について、それぞれの使い分けを具体的に解説します。日常生活や仕事、学習の中でよく出てくる例をもとに、正しい使い方を確認しましょう。
①書く:文字や記号を記すとき
「書く」は、何かを読める形(言語・記号)で記録するときに使います。
使用例:
- レポートを書く
- メモを書く
- 名前を書く
- 黒板に文字を書く
- 契約書を書く
→ 情報を文字で伝えることが目的の場面では、すべて「書く」が適切です。
②描く:形・絵・イメージを表現するとき
「描く」は、線や色、または言葉で何かの形・情景・心情を表すときに使います。
使用例:
- 絵を描く(視覚的なもの)
- 登場人物の心理を描く(文学的な描写)
- 設計図を描く(図面や構造を視覚的に示す)
- 夢を描く(理想や将来像)
- 物語を描く(フィクションや感情の表現)
→ 視覚的・感覚的な表現が目的であれば「描く」を選びます。
③画く:古語・文学表現に限定
「画く」は「描く」とほぼ同じ意味ですが、現代では使うことがほとんどありません。
使用例:
- 詩や古文:「大志を胸に画く」「山水を画く」など
- 歴史や古典美術の文脈:「この画家は自然の美を巧みに画いた」
→ 現代文では基本的に使用しないようにしましょう。通常は「描く」に言い換えるのが安全です。
ポイント
質問 | 適切な漢字 |
---|---|
これは文字ですか?読むためのものですか? | → 書く |
これは絵や図、またはイメージの表現ですか? | → 描く |
詩的・古典的な雰囲気にしたいですか? | → 画く(ただし基本は避ける) |
絵は「書く」と「描く」どっち?

答えは、「描く」が正解です。
理由:
絵は、線や色を使って視覚的に形を表す表現です。「書く」は文字や記号などを読み取れる形で記すことに使われますが、絵は読むものではなく“見るもの”なので、「描く」を使うのが適切です。
設計図は「書く」と「描く」どっち?

設計図の場合は、「描く」が基本的に正しい使い方です。
設計図は、建物や製品、機械などの構造や形状を視覚的に表現する図面です。線や形、寸法などを用いて「視覚的にわかるようにする」という目的があるため、「描く」という漢字がふさわしいとされます。
ただし、実際の業界や職場、教育現場などでは「設計図を書く」という表現も広く使われています。これは慣用的な使い方であり、間違いとは言えないものの、より専門的・正確な表現を求める場合には「描く」が望ましいとされます。
地図は「書く」と「描く」どっち?

地図については、「描く」を使うのが適切です。
地図は、地形や建物の位置関係、道のりなどを視覚的に表した図です。線や形、記号を使って空間の情報を見えるようにするため、「描く」がふさわしい表現となります。
地図を作る行為は、文章を書くのではなく、空間や地形を絵のように表現することです。したがって、「地図を描く」は自然で正しい使い方です。
ただし、日常会話では「地図を書いてくれない?」といった言い回しもよく使われます。これは口語的な表現としては通じますが、正確に言うなら「描く」を使うべき場面です。
図形は「書く」と「描く」どっち?

図形の場合、「描く」を使うのがより正確です。
図形とは、円、三角形、四角形などの形や構造を線で表したものです。つまり、視覚的に「形」を示すためのものであり、言葉や文章ではなく図としての表現が目的になります。そのため、図形を作る行為は「描く」がふさわしいと言えます。
ただし、学校教育や日常の会話の中では「図形を書く」という言い方がよく使われています。これは慣用表現であり、特に初等教育では「文字を書く」と同じ感覚で「図形を書く」と教えることもあるため、間違いとは言い切れません。
しかし、文章や専門的な文脈で正確に表現する場合は、「図形を描く」を選ぶと適切です。
グラフは「書く」と「描く」どっち?

グラフについては、「描く」がより適切な表現です。
グラフとは、数値やデータを視覚的に表現する図です。折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフなど、いずれも線や形、色を使ってデータの傾向や違いを一目で理解できるようにするものです。
このように、目で見て理解する形に表す行為には「描く」を使うのが自然です。たとえば「データの推移をグラフに描く」「結果を視覚的に描く」といった表現がそれにあたります。
一方で、日常会話や学校教育では「グラフを書く」という言い方もよく使われています。これは「ノートに書く」という感覚に近い、慣用的な表現です。ただし、文書やレポートなどの正式な場面では「描く」を使う方が正確で丁寧です。
「書く」の使い方【例文20】

ここでは、「書く」の自然で正しい使い方を20の例文で紹介します。どれも日常生活やビジネス、学習の場面でよく使われる表現です。「文字や記号を記す行為」に注目するのがポイントです。
基本的な使い方
- 毎朝、日記を書くようにしている。
- テストの答案に名前を書くのを忘れた。
- メールで丁寧に謝罪文を書いた。
- 黒板に答えを書いて発表した。
- 履歴書に志望動機を書くのが難しい。
- 申込用紙に必要事項を書いてください。
- SNSに感想を書いたら、たくさんの「いいね」がついた。
- 手帳に予定を書いて管理している。
- レポートを書くのに3時間かかった。
- お礼の手紙を書くのは大切なマナーです。
ビジネス・フォーマルな場面
- 会議の議事録を書くのが私の担当だ。
- 契約書の内容を読みながら署名を書いた。
- 報告書を書く前に、情報を整理しておく必要がある。
- 提案書を書くために、上司と打ち合わせをした。
- メモを書く習慣があると、仕事が効率的になる。
その他の使い方
- 短歌を書くコンテストに応募した。
- 看板に店名を書く仕事を頼まれた。
- 封筒に宛名を書くときは丁寧な字を心がける。
- 習字で「心」という字を書いた。
- ノートに公式を何度も書いて覚えた。
「描く」の使い方【例文20】

「描く」は、絵や図、イメージ、心の中の考えや情景を形にするときに使われる言葉です。視覚的・感覚的な表現に向いており、芸術、創作、比喩表現など幅広い場面で使われます。
絵や図を描く場合
- 子どもが動物の絵を楽しそうに描いている。
- スケッチブックに風景を描いた。
- 美術の授業で人物を描く練習をした。
- グラフィックデザイナーがロゴを描く。
- 漫画家を目指して毎日キャラを描いている。
- タブレットでイラストを描く人が増えている。
- 建築士が新しい建物の設計図を描いた。
- 理想のマイホームを紙に描いてみた。
- 図面を丁寧に描くことが精度につながる。
- 地図を見ながら目的地までのルートを描いた。
イメージ・感情・物語などを描く場合(比喩的表現)
- 小説家が主人公の心の動きを細かく描いている。
- 映画は戦争の悲惨さをリアルに描いていた。
- 計画書に未来のビジョンを明確に描くことが大切だ。
- 彼はいつも壮大な夢を描いて語っている。
- 詩人が自然の美しさを言葉で描く。
- 作家は社会の矛盾を物語に描いた。
- 心の葛藤を繊細に描くのが得意な画家だ。
- ドキュメンタリーで人々の暮らしをリアルに描いていた。
- その物語は希望に満ちた未来を描いていた。
- イメージトレーニングで成功の姿を頭の中に描く。
「画く」の使い方(常用外)【例文20】

「画く(えがく)」は、「描く」とほぼ同じ意味を持つ言葉ですが、現代ではほとんど使われない常用外の漢字表現です。主に古文、詩、歴史的な記述や文学的表現の中で使われるため、日常会話や通常の文章では「描く」を使うのが一般的です。
ここでは、文学的・古典的なニュアンスで「画く」が使われる例文を紹介します。
文学的・詩的な表現
- 詩人は自由の理想を胸に画いた。
- 若き志士は国の未来を心に画いていた。
- 画聖は一筆で山水の景を画いたという。
- 王は新たな都の設計を地図上に画いた。
- 一幅の絵の中に自然の調和を画いた。
- 幻想の世界を夢想して画くことを楽しむ。
- 画伯は筆で心の景色を画いて表した。
- 古の書に、龍が天を舞う様を画いた図がある。
- 士は天下統一の計を密かに画いていた。
- 画僧が静かに仏の姿を紙に画いていく。
歴史・古文調の用法
- 天才軍師が奇策を画いたという記録が残る。
- 古の帝は理想の都を図面に画いた。
- 山河をありのままに画くことを芸術とした。
- 戦国武将は戦略を絵巻に画いて伝えた。
- 士大夫たちは平和の理想を文章に画いた。
- 雅な王朝文化を細密に画いた屏風が現存する。
- 古代中国では、思想を絵に画いて人々に説いた。
- 絵師は都のにぎわいを巻物に画いた。
- 平安絵巻に恋の物語が美しく画かれている。
- 神話の神々を天井画に画いた神殿が今も残る。
注意点
- 現代日本語では「画く」はほとんど使われません。これらの例文は主に文学・古文・歴史作品の読解や創作における参考としてご活用ください。
- 通常の表現では、「描く」に置き換える方が読みやすく、誤解も防げます。
「書く」と「描く」間違えやすい使い方【例文20】

「書く」と「描く」はどちらも「かく」と読むため、日常の中で混同されやすい言葉です。特に、絵や図、イメージを含む場面では誤用が起こりがちです。ここでは、間違いやすい用例を20個取り上げ、正しい使い方とともに解説します。
✅ 正:描く ❌ 誤:書く
- ❌ 絵を書く → ✅ 絵を描く
- ❌ 設計図を書く → ✅ 設計図を描く
- ❌ キャラクターを書く → ✅ キャラクターを描く
- ❌ 地図を書く → ✅ 地図を描く
- ❌ 未来の夢を書く → ✅ 未来の夢を描く(イメージとして表現)
- ❌ 心の中の情景を書く → ✅ 心の中の情景を描く
- ❌ グラフを書く → ✅ グラフを描く(視覚的な表現)
- ❌ 図形を書く → ✅ 図形を描く(形を線で示す)
- ❌ 人物の表情を書く → ✅ 人物の表情を描く
- ❌ アイデアをイメージで書く → ✅ アイデアをイメージで描く
✅ 正:書く ❌ 誤:描く
- ❌ 手紙を描く → ✅ 手紙を書く
- ❌ 名前を描く → ✅ 名前を書く
- ❌ メールを描く → ✅ メールを書く
- ❌ 契約書を描く → ✅ 契約書を書く
- ❌ 試験の答案を描く → ✅ 試験の答案を書く
- ❌ 感想を描く → ✅ 感想を書く
- ❌ 日記を描く → ✅ 日記を書く
- ❌ レポートを描く → ✅ レポートを書く
- ❌ 看板の文字を描く → ✅ 看板の文字を書く
- ❌ SNSの投稿を描く → ✅ SNSの投稿を書く
ポイント
- 形・図・イメージを表すときは「描く」
- 文章・言葉・記録を残すときは「書く」
使い分けの判断に迷ったときは、「それは読めるか?見て感じるものか?」を基準にすると分かりやすくなります。
よくある質問

ここでは、「書く」「描く」「画く」について、読者の方からよく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。使い分けで迷ったときの参考にしてください。
Q1.「夢」は書く?描く?
A. 内容によって使い分けます。
- 将来の理想像やビジョンとしての夢 →「描く」(例:夢を描く)
- 夢の内容を記録する場合 →「書く」(例:夢日記を書く)
Q2.「計画」は書く?描く?
A. 基本的にはどちらも使えますが、目的によって選びましょう。
- 計画を文書にまとめる →「書く」
- 構想やイメージを表現する →「描く」
Q3.「漫画をかく」はどっち?
A. 「描く」が正解です。漫画は絵やイラストを使って物語を表す視覚的な作品なので、「描く」が適切です。
Q4.「図を書く」は間違い?
A. 会話ではよく使われますが、正確には「図を描く」が正しいです。図は視覚的に形を示すものなので、「描く」がふさわしい表現です。
Q5.「画く」はもう使わなくていいの?
A. はい、現代の実用的な日本語では「画く」を使う必要はありません。古文や詩、文学作品の中でのみ使われる表現ですので、基本的には「描く」に置き換えましょう。
Q6. 子どもが「絵を書いた」と言ったら間違い?
A. 完全な間違いではありませんが、正確には「絵を描いた」が正しい表現です。幼い子どもや日常会話ではよく使われますが、作文や文書では「描く」を使いましょう。
Q7. 文章でも「描く」って使えるの?
A. はい、使えます。「感情を描く」「人物像を描く」など、具体的な姿や内面を文章で表現するときに「描く」を使います。
Q8.「イメージをかく」は?
A. 頭の中にあるイメージを表す場合は「描く」が正解です。図や構想など、見える形にするイメージには「描く」を使います。
まとめ
「かく」と読む日本語の漢字には、「書く」「描く」「画く」の3種類がありますが、それぞれ意味や使い方が異なります。
- 「書く」は、文字や記号、言葉など読み取れる情報を記す行為です。日記を書く、名前を書く、報告書を書くなど、文章・言葉が対象です。
- 「描く」は、絵や図、または心の中のイメージや感情など形や姿を表現する行為です。絵を描く、夢を描く、物語を描くなど、視覚的・感覚的な対象に使われます。
- 「画く」は、「描く」とほぼ同じ意味を持つ古い表現で、現代ではほとんど使用されません。文学的・歴史的な文脈に限って登場する言葉です。
使い分けのコツは、「その“かく”は読むものか?見るものか?」という視点で考えることです。文字として読むものであれば「書く」、形やイメージとして見るものであれば「描く」が基本です。
また、日常会話では誤って「絵を書く」「図を書く」などと言ってしまいがちですが、正確な表現を意識することで、文章力や表現力が一段と向上します。
この記事で紹介した例文や解説を参考にして、シーンに応じた適切な「かく」の使い分けを身につけてください。