「あかし」は「証」?「証し」?迷ったら「証し」!

勉強

「この出来事は、努力のあかしです」。ニュースや小説、スピーチなどで、こういった表現を目にしたことはありませんか?

さて、この「あかし」という言葉、漢字で書くときに迷いやすいのが「」なのか「証し」なのか、という点です。一見、「証」と一文字で書いてもよさそうに思えますが、実はこれ、送り仮名をつけるのが正解なんです。

なぜ「証」ではなく「証し」なのか?この記事では、その理由をわかりやすく解説していきます。言葉は、正しく使ってこそ伝わるもの。「証」か「証し」かで迷ったら、この記事を参考にしてみてくださいね。

「あかし」は「証し」と書く

ポイント

「あかし」という言葉を漢字にする場合、多くの人がまず思い浮かべるのは「証」一文字ではないでしょうか。確かに「証」は意味としてもぴったり合いますし、見た目にもすっきりしています。しかし実は、この表記は正確ではありません

正しくは「証し」と書きます。たとえそれが名詞として使われていたとしても、「証」だけで終わらせず、送り仮名の「し」を付けるのが適切な書き方です。

なぜ送り仮名が必要なのか

なぜ送り仮名が必要なのでしょうか。それは、「証し」という言葉が活用可能な語だからです。たとえば「証します」「証さない」など、動詞的な使い方ができます。このように、形が変わる可能性がある言葉には、送り仮名をつけておくのが日本語の基本ルールです。

ここで、似たような例を挙げてみましょう。「まつり」も「祭」という漢字がありますが、名詞として使うときでも「祭り」と送り仮名を付けるのが一般的です。これも同じ理由で、「祭る」「祭った」など、動詞として活用することがあるからです。

つまり、「証し」は一見すると名詞のように見えても、動詞として使うことができる語。そのため、送り仮名を省略するのではなく、きちんと「し」を添えることで、正確な意味と文法を保つことができるのです。

常用漢字表では「証」は「ショウ」という読みしかない

図書館

「証し」という表記について、もう少し踏み込んで見てみましょう。
日本語の漢字には、文化庁が定めた常用漢字表(じょうようかんじひょう)という一覧があります。これは、日常的な読み書きに使うことが推奨されている漢字と、その読み方をまとめたものです。

この常用漢字表を見てみると、「証」という漢字には音読みの「ショウ」しか記載されていません。つまり、「あかし」という訓読みは、本来この漢字に対応づけられていないのです。

それでは「証し」は誤りなのでは?

それなら、「証し」という表記は間違いなのでは?と思われるかもしれません。しかし、ここが日本語の面白いところです。実は、新聞・放送・公文書などの表記ルールにおいて、「あかし」は例外的に「証し」と漢字で表記することが認められています。

たとえば、新聞各社が従っている「新聞用字用語集」や、NHKの「放送用語の手引」などでは、「あかし」は「証し」と書くのが標準的です。つまり、常用漢字表には載っていなくても、実際の運用では「証し」と漢字で書くのが一般的になっているということです。

日本語の表記ルールには、こうした「実務的な慣習」が存在します。教科書や試験では厳密なルールが求められるかもしれませんが、ニュースや公的文書など、より現実的な場面では柔軟に運用されているのです。

まとめ:迷ったら「証し」が正解

考える人

ここまで、「あかし」は「証」か「証し」か、どちらが正しいのかについて見てきました。

結論としては、「証し」と送り仮名をつけて書くのが正解です。

理由はいくつかありました。まず、「証し」は動詞的な活用が可能な語であり、「証した」「証された」など、使い方に幅があるため、送り仮名を省略するのは不自然です。

また、常用漢字表では「証」に「ショウ」という音読みしか記載がないにもかかわらず、新聞や放送、公文書などでは例外的に「あかし」として「証し」の表記が認められています。さらに、日本語には名詞と動詞を送り仮名の有無で区別するというルールも存在し、「証し」はその仕組みにもきちんと当てはまっています。

つまり、「証」と一文字で書くと、形式的な名詞に限定されてしまい、言葉本来の持つ動きや意味の深みが失われてしまうのです。正確さと読みやすさ、そして意味の伝わりやすさを考えると、やはり「証し」と書く方が適切です。

迷ったときは、「証」ではなく「証し」。送り仮名を付けることで、言葉の本質がより正確に、より豊かに伝わります。これを機に、日常の書き言葉でも意識してみてくださいね。