「以降」と「以後」の違い【50例文】使い分けガイド

「以降」と「以後」、どちらも「ある時点より後」を表す言葉ですが、使い分けに迷うことはありませんか? たとえば、「4月1日以降」と「4月1日以後」、どちらが正しいのか判断がつきにくいという声をよく耳にします。
日本語には似た意味を持つ表現が数多くありますが、その微妙なニュアンスの違いによって、意味や印象が変わってしまうこともあります。特にビジネス文書や公的な文言では、誤った使い方をすると信頼性にも関わりかねません。
本記事では、「以降」と「以後」の基本的な意味を整理し、その違いを表を使って分かりやすく比較します。また、実際の使い方を20例ずつ、さらに間違えやすい例文も10個取り上げ、合計50の例文で徹底的に解説します。
記事を読み終える頃には、場面に応じた適切な表現を使いこなせるようになるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
目次
「以降」と「以後」の違い

「以降」と「以後」はどちらも「ある時点より後」を意味しますが、その使われる場面やニュアンスに違いがあります。以下の表で比較してみましょう。
項目 | 以降 | 以後 |
---|---|---|
意味 | ある時点を含んでそれより後 | ある時点を境にしてそれより後 |
起点の扱い | 起点を含むことが明確 | 起点を含む場合もあるが、含まないこともある |
使用場面 | 日付・手順・スケジュールなど、具体的・実務的な文脈 | 決意・心構え・方針転換など、抽象的・感情的な文脈 |
例文 | 「4月1日以降に適用されます」 「この作業以降の工程は〜」 | 「この失敗以後、注意を払います」 「以後、気をつけます」 |
よく使われる言い回し | 「○○以降の予定」「手順A以降」 | 「以後、〜ない」「この件以後」 |
英語にすると | after(含む) | from now on / thereafter(やや抽象的) |
ポイント
- 「以降」は、会議の日程や業務手順など、具体的な時間や工程の連続に使うのが自然です。
- 「以後」は、ある出来事をきっかけにして意識や行動が変わるような文脈に向いています。
両者の違いは非常に微妙ですが、文脈を意識することで自然な使い分けができるようになります。
「以降」の意味

「以降(いこう)」とは、「ある時点を含んで、それより後」を意味する言葉です。時間的な起点を含んだ上で、その後の時系列全体を指すときに使われます。
ポイント
- 「以降」は、起点となる日時や出来事を含む意味合いが強い
- 日時、出来事、手順など、具体的な基準点が明確なときに使う
- 「〜以降は〜する」といった形で、段階的な流れを示すことが多い
例
- 「4月1日以降、新体制が始まります」
→ 4月1日も新体制の開始日に含まれる - 「この手順以降の作業は慎重に行ってください」
→ この手順を含めてその後の作業を指している
つまり、「以降」は「起点を含む連続した流れ」を意識した表現と言えるでしょう。
「以後」の意味

「以後(いご)」とは、「ある時点を境にして、それより後」を意味する言葉です。「以降」と似ていますが、ニュアンスに違いがあります。
ポイント
- 「以後」は、起点となる時点を含まない・含む両方の用法があるが、一般的には起点を境目とするイメージ
- 感情的・抽象的な文脈で使われることが多い
- 「以後〜ない」「以後気をつけます」のように、態度や行動の変化を強調する場合にもよく使われる
例
- 「この件は今後の課題とし、それ以後は同様の対応を避ける」
→ その出来事を機に方針が変わる - 「以後、二度とこのようなことがないようにします」
→ 起こった出来事を教訓にし、未来への決意を表している
つまり、「以後」は「起点を教訓・基準として、その後の状態や変化を重視する」表現と言えるでしょう。
「以降」と「以後」の使い分け

「以降」と「以後」は非常によく似た言葉ですが、正確に使い分けるためには文脈と意図するニュアンスをしっかり意識することが大切です。以下に、使い分けの判断ポイントと具体例を紹介します。
使い分けポイント
判断基準 | 「以降」を使う | 「以後」を使う |
---|---|---|
起点を明示的に含めたい | ○ | △(曖昧になりやすい) |
時間や日付を扱う | ○ | △(やや不自然) |
出来事・体験を境目にする | △ | ○ |
態度・行動の変化を表す | △ | ○ |
業務・事務的な表現 | ○ | △(やや硬い) |
感情や誓いの表現 | △ | ○ |
使い分け例
✅「以降」が適切なケース
- イベント開催日、スケジュール、処理の順番など
例:「5月1日以降、すべての申請は新様式をご利用ください」
→ 5月1日も含めて、それ以降が対象
✅「以後」が適切なケース
- 態度や感情の変化、人生の転機
例:「この出来事以後、彼は全く別人のようになった」
→ 出来事をきっかけに人生が変わったことを強調
⚠️ 曖昧な場合の対処法
起点を含むかどうかを明確にしたいときは、「〜当日を含む」「〜を除く」といった補足を入れると誤解を避けられます。
「以降」の使い方【例文20】

「以降」は、日付・時間・順序など、具体的な起点を含んでそれより後のことを表す際によく使われます。以下に、ビジネス・日常生活・公式文書など、さまざまな場面に対応した例文を20個紹介します。
ビジネスシーンでの使い方
- 新制度は 4月1日以降 に適用されます。
- この通知以降は、旧ルールは無効となります。
- 会議は 13時以降 に順次開始されます。
- 出張報告は 来週以降 に提出してください。
- 契約締結以降 の手続きについては別途ご案内します。
- 納品以降のクレームには対応しかねます。
- システムは 今月以降 に段階的に移行予定です。
日常生活での使い方
- 雨が降り出したのは 夕方以降 でした。
- 夕食以降 に間食を控えるようにしています。
- 夏休み以降は毎日ランニングを始めた。
- 映画鑑賞以降、その監督のファンになった。
- この体験以降、考え方が変わった気がする。
- 通院以降は体調が安定しています。
- 引っ越し以降、通勤がかなり楽になった。
書面などでの使い方
- 4月10日以降の手続きについてはこちらをご参照ください。
- 本件については 本通知以降の連絡をご確認ください。
- 規定改正以降 の申請については、新様式をご利用ください。
- この契約は 更新日以降も自動継続されます。
- システム変更以降 に不具合が報告されています。
- 商品到着以降、7日以内にご連絡ください。
「以後」の使い方【例文20】

「以後」は、ある出来事や時点を境に、その後の変化や継続、態度の変化などを強調する際に使われます。やや抽象的・感情的な文脈でよく登場します。
ビジネス・公的な場面での使い方
- この規定は 発令以後 に発効されます。
- 契約終了以後 は、一切の権利義務は消滅します。
- 支払い期日以後 の入金は遅延扱いとなります。
- 提出日以後、修正は受け付けられません。
- 本通知受領 以後、内容をご確認ください。
- 出向以後、彼の業務態度が一変した。
- 業務停止命令 以後 の損失は補償対象外です。
日常・感情を伴う表現での使い方
- あの事故 以後、運転には人一倍気を遣うようになった。
- 結婚以後、生活のリズムが変わった。
- あの一言 以後、彼とは話していない。
- 退職以後、趣味の時間を大切にしています。
- あの出来事 以後、自分を見つめ直すようになった。
- 病気以後、健康管理に目覚めました。
- あの映画を観た 以後、人生観が変わった。
態度・誓い・決意を示す使い方
- 以後、このようなミスがないようにします。
- 以後、時間には厳守します。
- 以後、慎重な判断を心がけます。
- 彼は 以後、一切その話題に触れなかった。
- 以後、同様の行為は慎んでください。
- 以後、この件については関与しません。
間違えやすい使い方【例文10】

「以降」と「以後」は似ているため、誤用されるケースも少なくありません。この章では、間違った使い方の例と、正しい言い換えをセットで紹介します。違いを感覚的にも理解しやすくなるはずです。
🔹 例文1
誤:この事故以降、彼は運転を避けるようになった。
正:この事故以後、彼は運転を避けるようになった。
→ 出来事を境にした行動の変化なので「以後」が自然。
🔹 例文2
誤:明日の17時以後にご来社ください。
正:明日の17時以降にご来社ください。
→ 時刻を含めた時間指定には「以降」が適切。
🔹 例文3
誤:この通知以後、規則が変わります。
正:この通知以降、規則が変わります。
→ 文書の効力開始日などの事務的内容には「以降」を。
🔹 例文4
誤:このトラブル以降、チームの雰囲気が悪くなった。
正:このトラブル以後、チームの雰囲気が悪くなった。
→ 出来事が変化の原因になっている場合は「以後」。
🔹 例文5
誤:更新は4月10日以後に行ってください。
正:更新は4月10日以降に行ってください。
→ 日付ベースの操作やスケジュールには「以降」が自然。
🔹 例文6
誤:この経験以降、彼は別人のようだ。
正:この経験以後、彼は別人のようだ。
→ 経験をきっかけにした変化は「以後」。
🔹 例文7
誤:15時以後に荷物が届く予定です。
正:15時以降に荷物が届く予定です。
→ 時間を基準にした到着予定は「以降」が正解。
🔹 例文8
誤:あの出来事以降、考えが変わった。
正:あの出来事以後、考えが変わった。
→ 出来事を起点とする心境の変化には「以後」。
🔹 例文9
誤:資料提出以後、追加対応をお願いします。
正:資料提出以降、追加対応をお願いします。
→ 業務フローや手順には「以降」を用いる。
🔹 例文10
誤:今回の件以降、発言には注意します。
正:今回の件以後、発言には注意します。
→ 反省や決意を表す場合は「以後」がしっくりきます。
「以降」と「以後」の類語・英語

類語
表現 | 意味・使い方 |
---|---|
以来(いらい) | 過去のある時点から現在まで継続している |
その後 | ある出来事のあと、しばらくしてからの状況 |
後日 | ある出来事のあと、別の日(未来のある時点) |
英語
日本語 | 英語 | 補足 |
---|---|---|
以降 | after / on or after | 「after April 1st」など。日付や時刻に対応。 |
以後 | from now on / thereafter | 「from now on」は未来志向、「thereafter」はややフォーマル。 |
以来 | since | 「since April 1st」で「4月1日以来ずっと」 |
よくある質問

Q1. 「以降」と「以後」はどちらがフォーマルですか?
A. どちらもフォーマルな表現ですが、「以降」はビジネス文書や公式通知など、実務的な場面で使われることが多く、よりかしこまった印象があります。一方、「以後」はやや感情や態度の変化に寄った表現で、注意・忠告・決意などに使われやすいです。
Q2. 会議案内などの日程案内ではどちらを使うべきですか?
A. 明確な日時を含む場合は、「以降」が適切です。
例:「4月10日以降に再度ご連絡ください」
→ 4月10日を含め、それ以後の日程すべてが対象であることが明確です。
Q3. 「以後に〜する」と「以降に〜する」はどう違いますか?
A. ニュアンスの違いがあります。
- 「以降に〜する」は、ある日以降に予定・処理などを段階的に行う場合に使います。
- 「以後に〜する」は、過去の出来事を踏まえて今後の方針や対応を示す場合に使われます。
例:
- 「申請は4月1日以降に受付開始」 → 実務的な案内
- 「このトラブル以後には慎重な確認を徹底する」 → 態度・行動の変化
まとめ
「以降」と「以後」は、どちらも「ある時点より後」を表す言葉ですが、使い方や意味には微妙な違いがあります。
「以降」は、日付や時刻、作業の手順など具体的で実務的な文脈で使われ、起点を含んでその後すべてを指す場合に適しています。たとえば、「4月1日以降」「この作業以降」というように、事務的な場面やビジネス文書でよく使われます。
一方で「以後」は、出来事や経験などを境に感情や態度の変化、継続的な影響を表す際に用いられます。たとえば、「この経験以後」「以後、気をつけます」といったように、抽象的・感情的な文脈で使うのが自然です。
この記事では、「以降」「以後」の意味の違いから、使い分けのポイント、間違えやすい例文、さらには英語表現や類語まで幅広く解説しました。
合計50の例文を通して、それぞれの使い方の感覚がつかめたのではないでしょうか。
最後にポイントをまとめます:
- 具体的・実務的な内容には「以降」
- 出来事や気持ちの変化を表すなら「以後」
- 迷ったら、「起点を含めるなら以降」「境目として意識するなら以後」
正しく使い分けることで、文章の伝わりやすさと信頼性が大きく向上します。ぜひ、日常や仕事の中で実践してみてください。