おはぎとぼたもちの違い|春の牡丹、秋の萩が由来で実は同じもの?

おはぎ

「おはぎ」と「ぼたもち」。日本の伝統的な和菓子として親しまれているこれらの名前、あなたはその違いを正確に説明できますか?

多くの人が、「なんとなく違いは聞いたことがあるけど、はっきりとは分からない」と感じているかもしれません。実は、おはぎとぼたもちは材料や作り方はほとんど同じ。では、なぜ呼び方が違うのでしょうか?そして、どのような時期にどちらを食べるのでしょうか?

本記事では、

  • 「おはぎ」と「ぼたもち」の違い
  • 季節や呼び名に込められた意味
  • お彼岸との関係や由来
  • 基本の作り方や関連する和菓子

などをわかりやすく解説していきます。この記事を読むことで、「おはぎ」と「ぼたもち」のちょっとした豆知識を知ることができ、春や秋のお彼岸、季節の行事をより深く楽しめるようになるはずです。

おはぎとぼたもちは同じもの

あずき

おはぎとぼたもちは、基本的に同じ和菓子です。

どちらも、もち米(またはもち米とうるち米を混ぜたもの)を炊いて軽くつぶし、丸めたものにあんこを包んだものです。使う材料も作り方もほとんど同じで、出来上がる見た目や味にも大きな違いはありません。

この2つが同じものとされる理由は、呼び方が変わるだけで、実際の内容に違いがないためです。たとえば、春と秋など、季節の行事に合わせて名前を使い分ける習慣があるだけで、食べられるもの自体は共通しています。

そのため、「おはぎ」と「ぼたもち」は名前は違っても、中身は同じ和菓子と考えて差し支えありません。

おはぎとぼたもちの違い

おはぎとぼたもち

「おはぎ」と「ぼたもち」は基本的に同じ和菓子ですが、食べる時期・あんこの種類・形状において、違いが見られることがあります。ここでは、それぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。


食べる時期による名前の違い

もっとも広く知られている違いは、季節によって呼び方が変わるというものです。

季節呼び名由来の花
ぼたもち牡丹(ぼたん)
おはぎ萩(はぎ)

どちらも同じ材料・作り方で作られますが、春と秋の年2回のお彼岸の時期に食べられる習慣があり、季節の花にちなんで呼び名が変わります。

春のお彼岸には「牡丹(ぼたん)」の花にちなんで「ぼたもち」と呼ばれ、
秋のお彼岸には「萩(はぎ)」の花にちなんで「おはぎ」と呼ばれます

このように、季節感や風物詩を大切にする日本の文化が、呼び名に表れているのです。


あんこの種類の違い

呼び名の違いに加えて、使われるあんこの種類にも違いが見られることがあります。

  • 春(ぼたもち):こしあんを使うことが多い
  • 秋(おはぎ):粒あんを使うことが多い

この違いには、「あずきの収穫時期」が関係しています。

  • 秋(おはぎ)は、小豆の収穫直後で皮がやわらかく、粒あんにしても美味しくいただけます。
  • 春(ぼたもち)は、冬を越した小豆の皮がかたくなっているため、こしあんにして滑らかに仕上げるのが一般的とされてきました。

ただし、これは地域や家庭によっても異なり、明確なルールがあるわけではありません。


形状の違い

形にも少し違いがあるとされます。

  • おはぎ:やや細長い楕円形(萩の花の形をイメージ)
  • ぼたもち:丸い球状(牡丹の花の形をイメージ)

この形の違いも、咲く花の姿にちなんで名づけられたという説があります。

ただし、現代では家庭や地域によって形状の差があまりなくなっており、「どちらでも好きな形で作る」という方も多いでしょう。

お彼岸に食べるのはどうして?

「おはぎ」や「ぼたもち」と聞くと、多くの人が「お彼岸」の風景を思い浮かべるのではないでしょうか。お彼岸になると、スーパーや和菓子店でもずらりと並ぶ定番のお供え物。では、なぜこの2つの和菓子が、お彼岸と深く結びついているのでしょうか?ここでは、お彼岸の意味や背景、「おはぎ」「ぼたもち」とのつながりをより詳しく解説します。


お彼岸の料理の基本

「お彼岸」とは、春分・秋分の日を中心とした前後3日間を含む7日間に行われる、仏教に由来する日本独自の行事です。この時期、人々は先祖の供養のためにお墓参りをしたり、仏壇にお供え物をしたりするのが一般的です。

お彼岸には、肉や魚を避けた「精進料理」を食べるのが習わしとされており、これは命あるものをいただくことを控え、清らかな心で先祖に向き合うという意味が込められています。その中で、「甘味」として登場するのがおはぎやぼたもち。これには主に2つの理由があります。

小豆の赤は「魔除け」の色

古くから日本では、赤い食べ物には邪気を払う力があると信じられてきました。とくに小豆は、魔除けの象徴として、祝いごとや法事の場に欠かせない存在です。そのため、小豆を使ったおはぎやぼたもちは、先祖を敬い、悪いものから守ってもらうためのお供え物として用いられてきたのです。

ご先祖様の「好きなもの」を供える文化

もう一つの理由が、「好きなものを供える」という日本ならではの“お供え文化”です。おはぎやぼたもちは昔から親しまれてきた家庭の味。「ご先祖様にも食べてほしい」「昔を懐かしんでもらいたい」――そんな想いから、仏壇や墓前に供えられるようになりました。


春のお彼岸:ぼたもちを供える理由

牡丹の花

春のお彼岸(春分の日を中心とした7日間)には、「ぼたもち」が供えられるのが一般的です。

春は、冬を越えて草木が芽吹き、命が再び動き出す季節。自然の再生を祝い、先祖への感謝を込めて、ぼたもちを供えるという風習が生まれました。また、春に使う小豆は、前年の秋に収穫したものを保存して使うため、皮が少しかたくなっていることから、ぼたもちはなめらかな「こしあん」で作られることが多いのも特徴です。

ぼたもちは、ただのおやつではなく、春の訪れとともにご先祖様に思いをはせる、日本人らしいやさしい祈りの形なのです。

ぼたもち


秋のお彼岸:おはぎを供える意味

萩の花

一方、秋のお彼岸(秋分の日を中心とした7日間)には、「おはぎ」が供えられます。

これは、秋の七草のひとつ「萩(はぎ)」の花にちなんで名づけられたもので、秋のお彼岸にふさわしい和菓子として親しまれてきました。萩の花のように控えめで可憐なおはぎは、自然と調和しながら暮らしてきた日本人の感性を映すものでもあります。

また、この時期はちょうど小豆の収穫期にあたり、新物の小豆を使った粒あんが美味しくいただける季節です。小豆には古くから邪気を払う力があると信じられており、お彼岸に赤いおはぎを供えることは、ご先祖様への感謝の気持ちと家族の健康や安全を願う意味が込められています。

「おはぎ」はただの甘いお菓子ではなく、秋の自然の恵みに感謝し、命のつながりを大切にする日本人の心を表した、やさしく奥深い存在なのです。

おはぎ

おはぎやぼたもちはいつから食べられていた?

日本の秋

おはぎやぼたもちは、江戸時代以前から食べられていたとされています。その起源はさらに古く、日本古来の「お供え文化」にさかのぼることができます。

古代の日本では、米や小豆などの作物を神仏に捧げる風習がありました。特に小豆は、赤い色が魔除けや厄払いの力を持つと信じられ、神聖な食材として重要視されていました。このような文化の中で、もち米と小豆を使った食べ物、つまり現在のおはぎやぼたもちの原型が祭事や法要のお供え物として用いられるようになりました。

文献上では、江戸時代中期(18世紀ごろ)に「ぼたもち」という名前が登場し、庶民の間でも行事や特別な日の食べ物として親しまれていたことがわかります。特に「お彼岸に食べる習慣」は、江戸時代後期にはすでに定着していたと考えられています。

つまり、おはぎやぼたもちは単なる和菓子ではなく、信仰や季節の行事と深く結びついた歴史ある食べ物なのです。

おはぎ・ぼたもちの基本の作り方

おはぎ・ぼたもち

ここでは、おはぎ・ぼたもちの基本のレシピを紹介します。家庭でも比較的簡単に作ることができるので、季節の行事や手作りおやつにぴったりです。


材料(約8個分)

▼ごはん部分

  • もち米:2合
  • うるち米(普通のお米):0.5合(混ぜると食感がよくなります)
  • 水:通常の炊飯時と同量

▼あんこ(粒あんまたはこしあん):約400g

  • 市販のものでもOK。手作りする場合は下記参照

▼お好みのトッピング

  • きな粉(+砂糖少々)
  • 黒ごま+砂糖+塩少々

作り方の手順

【1】もち米を炊く

もち米とうるち米を混ぜてよく洗い、30分〜1時間ほど水に浸けた後、炊飯器で炊きます。

【2】ごはんをつぶす

炊き上がったら熱いうちにボウルなどに移し、半分くらい粒が残る程度にすりこぎやしゃもじでつぶします。
※完全につぶすと餅になってしまうので、ほどほどに。

【3】ごはんを分けて丸める

手に水をつけながら、炊いたごはんを8等分し、小さな俵型または丸型に成形します。

【4】あんこで包む/まぶす

  • 粒あん/こしあんを使う場合:ごはんを中に入れる or 外に包むのどちらでもOK
  • きな粉やごまの場合:ごはんに軽く塩をまぶしてから、トッピングをまぶします

こしあん・粒あんの違いと作り方

▷ こしあん(なめらかなタイプ)

  1. 小豆を柔らかくなるまで茹でる(2〜3回湯を変える)
  2. 茹で上がった小豆を裏ごしして皮を取り除く
  3. 濾したあんに砂糖を加え、鍋で煮詰めながら練る

▷ 粒あん(皮も残すタイプ)

  1. 小豆をやわらかくなるまで茹でる
  2. 水を切り、砂糖を加えて煮詰める
  3. 塩をほんの少し加えて風味を調える

保存と日持ちの目安

  • 常温保存は当日中がおすすめ(特に夏場は注意)
  • 冷蔵保存すると硬くなりやすいので、ラップ+密閉容器で
  • 冷凍も可能だが、解凍時に食感が変わる場合あり

手作りならではの楽しさ

おはぎやぼたもちの魅力のひとつに、「手作りならではの楽しさ」があります。手作りすることで、あんこの甘さや量を好みに合わせて調整できるのは大きな魅力です。また、家族や子どもと一緒に作ることで、料理の楽しさや和の食文化にふれる良い機会にもなります。

さらに、春や秋のお彼岸など、季節の行事と結びつけて作ることで、日本ならではの季節感や伝統を自然と感じ取ることができます。もちろん市販のおはぎも美味しいですが、一度は自宅で手作りしてみると、味だけでなく心にも残る体験となるでしょう。

おはぎ以外のお供え餅

落雁

ここでは、特に仏壇や神棚、行事の際に供えられることの多いお餅をいくつかご紹介します。おはぎやぼたもちだけでなく、こうした季節や行事に応じた「供え餅」も、日本の食文化や信仰心を映し出す大切な存在です。

鏡餅(かがみもち)【お正月】

鏡餅は、お正月に神様(年神様)をお迎えするために、神棚や床の間、玄関などにお供えするお餅です。大きさの違う丸いお餅を2つ重ねて、その上に橙(だいだい)や串柿などをのせます。この形には、「家族が仲良く暮らせますように」「代々幸せが続きますように」といった願いが込められています。名前は、昔の銅の鏡に形が似ていることからつけられたと言われています。

月見団子(つきみだんご)【中秋の名月】

月見団子は、秋の満月の夜(十五夜)に、お月さまを見ながらお供えするお団子です。丸い形のお団子を15個、小さな山のように積んで飾ります。これは満月に見立てたものです。「今年もお米がたくさんとれますように」と、自然の恵みに感謝する気持ちが込められています。地域によっては、お団子の代わりに里芋やさつまいもをお供えするところもあります。

草餅(よもぎもち)【春のお彼岸・ひなまつり】

草餅は、春のお彼岸やひなまつりのころによくお供えされるお餅です。よもぎという香りのよい草をまぜて作るため、きれいな緑色をしています。昔から「よもぎは体にいい」「悪いものを追い払う力がある」と考えられていて、健康や安全を願って食べられてきました。仏壇にお供えしたり、家族で食べたりして春を感じる風習のひとつです。

仏供餅(ぶっくもち)

仏供餅は、お盆やお彼岸、命日などに仏壇へお供えするためのお餅です。小さくて丸い形のお餅や、あんこが入ったものなど、見た目はとても素朴です。特別な飾りはありませんが、「ありがとう」「いつまでも大切に思っています」という気持ちをこめて、静かにお供えします。地域によっては、これを落雁や小さなお団子で代わりにすることもあります。

落雁(らくがん)【法事・お供え】

落雁は、お米の粉とお砂糖を使って、型に入れて作る甘くてかわいらしい干菓子です。お餅ではありませんが、法事や毎日のお供えに使われることが多く、特に長く置いておけるのが特徴です。色や形がきれいで、見るだけでも気持ちが和らぎます。ご先祖様への感謝の気持ちを、やさしく伝えるお菓子です。

まとめ

「おはぎ」と「ぼたもち」は、見た目も味もとてもよく似た和菓子。じつは、材料や作り方はほとんど同じで、季節によって呼び方が変わるだけなんです。春は牡丹(ぼたん)になぞらえて「ぼたもち」、秋は萩(はぎ)にちなんで「おはぎ」と呼ばれ、あんこの種類や形にも少し違いがあります。お彼岸にこれらをお供えするのは、小豆が「魔除け」の意味を持っていたから。

そんな昔の人の願いや思いが、今も私たちの食卓に息づいています。ほかにも鏡餅や月見団子など、日本には季節や行事に合わせたおもち文化がたくさん。こうした背景を知って味わえば、いつもの和菓子ももっとおいしく、特別なものに感じられるかもしれませんね。