憶えるとは?意味や使い方【シーン別30例文】完全マスター

「憶える(おぼえる)」という言葉をご存じでしょうか?普段は「覚える」の方がよく使われますが、「憶える」もれっきとした正しい日本語です。実はこの「憶える」という漢字には、記憶や感情に深く関わる独特のニュアンスが込められています。
たとえば、「あの日の風景を今でも憶えている」という表現には、単なる情報の記憶以上に、その場面に対する感情や印象が含まれています。このように、「憶える」は「記憶の中に情感や印象が伴う」場合によく使われるのです。
しかし、「覚える」と「憶える」の違いがはっきり分からないという人も多いのではないでしょうか。両者は意味が似ているため、混同されがちですが、使い分けを理解すれば、文章に深みや説得力を持たせることができます。
本記事では、「憶える」の意味や言い換え表現、英語での表現方法、使用シーン別の例文30選に加えて、「覚える」との違いについてもわかりやすく解説します。日常の言葉遣いから、文章表現、ビジネス文書、創作活動まで、幅広く役立つ内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
「憶える」の意味

「憶える(おぼえる)」とは、「心に深く留める」「感情や印象を伴って記憶する」ことを意味する言葉です。「覚える」と似た意味を持ちますが、ニュアンスには明確な違いがあります。
辞書の定義
- 広辞苑:「心にとどめて忘れないようにする」「思い起こす」
- 大辞泉:「過去のことを思い出す」「記憶する」「忘れないでいる」
ここで重要なのは、「憶える」が単なる暗記や記録ではなく、「心情的な記憶」や「印象に残る出来事」を中心に表すという点です。
「憶える」と「覚える」の違い
- 憶える:感情や印象が色濃く残る記憶(例:初恋の人の顔を憶えている)
- 覚える:情報や知識などを頭に入れる行為(例:英単語を覚える)
たとえば、「彼の言葉を憶えている」と言えば、その言葉が感情的に響いたニュアンスになります。一方で「彼の名前を覚えた」と言えば、記憶した事実としての意味になります。
「憶える」の言い換え(類語)

「憶える」は、心に深く刻まれた記憶や感情を伴う体験を表現する言葉です。そのため、似た意味を持つ日本語の類語や関連語も多く存在します。ここでは、それらの言い換え表現と、それぞれのニュアンスの違いを詳しく見ていきましょう。
類語 | 意味・ニュアンス | 使用例 |
---|---|---|
記憶する | 客観的に記録として心に残す(中立的) | 「試験のために歴史の年号を記憶する」 |
思い出す | 一度忘れかけたことを再び意識に浮かべる | 「ふと昔の友人を思い出した」 |
忘れない | 忘却せずに保持している(消極的記憶) | 「その言葉は今でも忘れない」 |
心に残る | 強い印象として感情的に残っている | 「あの笑顔が今でも心に残っている」 |
忘れがたい | 忘れようとしても記憶から消えない | 「忘れがたい経験となった」 |
印象に残る | 見たり聞いたりしたことが強く意識に残る | 「初対面なのに強く印象に残った」 |
焼きつく | 映像や感情が鮮明に記憶される(やや詩的) | 「夕焼けの光景が脳裏に焼きついている」 |
- 「憶える」は、感情や雰囲気を含んだ記憶に使われ、文学的・感覚的な場面に最適。
- 「記憶する」「思い出す」などはより一般的・論理的な表現。
- 「心に残る」「焼きつく」は視覚的・感情的な強さを表すときに効果的。
「憶える」の英語表現

「憶える」は、日本語独自の繊細なニュアンスを持つ言葉であり、英語に直訳するのが難しい場合もあります。しかし、文脈に応じて適切な英単語を選べば、近い意味で伝えることが可能です。
英単語 | 意味・ニュアンス | 使用例 |
---|---|---|
remember | 一般的に「思い出す」「覚えている」 | I remember his smile clearly.(彼の笑顔をはっきり憶えている) |
recall | 意識的に「思い出す」 | I can recall the exact moment it happened.(それが起きた瞬間を憶えている) |
recollect | やや文語的で丁寧な「思い出す」 | I recollect meeting him at the party.(パーティーで会ったのを憶えている) |
have in mind | 心に留めている、意識している | I have that image in mind even now.(その光景を今でも心に憶えている) |
be engraved in one's memory | 忘れがたいほど印象的な記憶を示す | The memory is engraved in my heart.(その記憶は心に深く刻まれている) |
「憶える」が使われるシーン

「憶える」は、単なる情報の記憶とは異なり、感情や印象が心に残る記憶に用いられる表現です。そのため、使用される場面も、感情的・感覚的な体験に関わるものが中心になります。以下に、代表的な使用シーンを紹介します。
①心に残る出来事・経験
人生の中で印象的だった出来事、特に感情が動いた瞬間を語る場面で「憶える」はよく使われます。
- 例:「初めて一人で旅行した日のことを今でも憶えている」
- 例:「あの時の上司の言葉を、いまでもはっきり憶えている」
②感情を伴う人との記憶
人との出会いや別れ、会話の中で心に響いたことに「憶える」は自然に馴染みます。
- 例:「彼と初めて会った時の緊張感を憶えている」
- 例:「母が笑いながら話していたあの光景を、私は今でも憶えている」
③風景や音、香りなどの感覚的記憶
五感に訴えるような強い印象が残る場面において、「憶える」は非常に効果的です。
- 例:「海辺の潮の香りを、子どものころの記憶として憶えている」
- 例:「秋の落ち葉を踏みしめたときの音を、鮮明に憶えている」
④文学や詩的な表現
「憶える」は小説や詩の中でも、特に感情を重視した記述に用いられます。
- 例:「彼女の背中越しに見た夕焼けを、いつまでも憶えていた」
- 例:「別れ際に交わしたひとことが、心に深く憶えられている」
⑤日常会話の中での丁寧な記憶表現
少しフォーマルに、印象を大事にしたい時にも「憶える」は効果的です。
- 例:「その話は以前どこかで聞いたように憶えています」
- 例:「昔、あなたに同じようなことを言われた気がして憶えています」
「憶える」は、記憶+感情・印象という特性を持つ言葉なので、何かが「強く心に残った」ときに自然に使える表現です。
シーン別「憶える」の例文【30選】
ここでは、「憶える」の実践的な使い方を、さまざまな場面に分けて30例紹介します。心に残る記憶や印象を表す際のニュアンスに注目してください。
感情的な記憶
- 初めて叱られた日の悔しさを、今でも憶えている。
- 大切な人に別れを告げた瞬間の胸の痛みを憶えている。
- 幼いころ、母に抱きしめられた温もりを憶えている。
- 試合に勝ったときの涙が、今でも強く憶えられている。
- あの日の喜びは、一生憶えていたい宝物だ。
人物・出会いに関する記憶
- 彼と初めて目が合った瞬間をはっきり憶えている。
- 昔の恩師の言葉が、今も心に憶えられている。
- 就活で最初に会った面接官の表情を憶えている。
- 初恋の人の笑顔を今でも鮮明に憶えている。
- 親友と出会った日の空の色まで憶えている。
自然・風景の記憶
- 修学旅行で見た夜空の星を今も憶えている。
- 雨上がりの匂いと風の感触を、体が憶えている気がする。
- 幼い頃によく通った川辺の景色を憶えている。
- 雪がしんしんと降っていたあの日の静けさを憶えている。
- 夕焼けに染まった町並みが、心に深く憶えられている。
文化・出来事の記憶
- 初めて舞台で歌った緊張感を、今も憶えている。
- 卒業式での校長先生の話が強く憶えられている。
- 東日本大震災のニュースを見たときの衝撃を憶えている。
- 初めて観た映画の感動を、ずっと憶えている。
- お祭りで感じた人々の熱気を憶えている。
日常生活の中の印象
- 初めて料理に成功したときの嬉しさを憶えている。
- 電車で席を譲ってくれた見知らぬ人の優しさを憶えている。
- 雨の日に傘を貸してくれた友人の笑顔を憶えている。
- 引っ越しの日に泣いた妹の顔を今も憶えている。
- ペットが初めて名前を呼ばれて反応した瞬間を憶えている。
その他
- 大事なプレゼンで緊張して手が震えたのを憶えている。
- 病院の廊下で一晩中祈った夜を憶えている。
- 初めて自分で稼いだ給料をもらったときの誇りを憶えている。
- 祖父の語る戦争の話を、今でも鮮明に憶えている。
- 心から笑った最後の瞬間を、私はいつまでも憶えている。
「憶える」と「覚える」の違い

「憶える」と「覚える」は、どちらも「おぼえる」と読む同音異義語であり、意味も重なりますが、使われ方や含まれるニュアンスに違いがあります。この章ではその違いを表とシーン別でわかりやすく解説します。
項目 | 憶える(憶) | 覚える(覚) |
---|---|---|
読み方 | おぼえる | おぼえる |
意味 | 感情・印象を伴って記憶する | 事実・情報などを記憶する、暗記する |
ニュアンス | 感性的・文学的な印象が強い | 実用的・知識的な印象が強い |
使用頻度 | やや少ない(書き言葉、文芸的) | 一般的に広く使われる(口語も多い) |
使用例 | 「あのときの風景を今でも憶えている」 | 「彼の名前をすぐに覚えた」 |
「憶える」と「覚える」の使い分け
● 感情や印象が残る記憶 → 憶える
- 例:「別れ際の彼女の涙を、今でも憶えている」
- → ここでは記憶に残った感情が主軸
● 勉強・暗記 → 覚える
- 例:「英単語を100個覚えた」
- → 実用的な情報の記憶・習得に「覚える」
● 人の言葉・出来事 → 状況で使い分け
- 例:「彼の言葉を憶えている」(感情を含む)
- 例:「彼の言葉を覚えておきなさい」(知識として)
● 初めての体験や場面 → 憶える が自然
- 例:「初めての出産のときのことは今でも憶えている」
● 手順やスキル → 覚える
- 例:「パスワードの設定方法を覚えた」
※使い分けのコツ
- 情緒的・感情的な記憶 → 憶える
- 知識・情報・方法の記憶 → 覚える
このように、どちらも正しい表現ですが、文脈に合った漢字を使い分けることで、文章に深みと正確さが加わります。
よくある質問

ここでは、「憶える」に関して多くの人が疑問に思うポイントをQ&A形式で解説します。漢字の使い分けや実際の使用場面での迷いを解消しましょう。
Q1. 「憶えている」と「覚えている」はどっちを使うべき?
A:
どちらも正しいですが、文脈により適切な使い分けが必要です。
- 感情や印象が強く残っている場合 → 憶えている
- 単なる事実や情報として記憶している場合 → 覚えている
例:
- 「彼の優しい言葉を憶えている」→ 感情的な記憶
- 「彼の名前を覚えている」→ 事実の記憶
Q2. ビジネス文書やメールで「憶える」を使っても不自然じゃない?
A:
一般的には「覚える」が使われます。「憶える」は文学的で感情のこもった表現なので、ビジネスでは避けるのが無難です。ただし、感謝や思い出を述べるような文脈では、丁寧に使うと印象的になります。
例:
- ×「そのスケジュールは憶えておきます」
- ○「あのときいただいたご配慮を今でも憶えております」
Q3. 学校では「憶える」と「覚える」はどう教わりますか?
A:
多くの学校や教材では、「覚える」の漢字が標準表記として使われています。これは「覚える」が一般的に認知度が高く、教科書などにも広く使われているためです。ただし、国語や古典などでは「憶える」の文学的な使い方も教わることがあります。
Q4. 「憶える」は使わなくても困らない?
A:
日常会話では「覚える」だけで十分伝わります。ただし、文章や表現に深みや情緒を出したいときに「憶える」は非常に効果的です。詩的な表現、感情を込めた回想などに使うことで、読み手の心に響く文章になります。
まとめ
「憶える」は、単に物事を記憶するだけでなく、感情や印象を伴って心に残すという繊細な意味を持つ日本語です。「覚える」とは似て非なる存在であり、使い分けを正しく理解することで、言葉に深みを与えることができます。
特に、文学的な表現や印象的な体験の描写において「憶える」は非常に効果的です。日常ではあまり見かけないかもしれませんが、知っておくことであなたの語彙力と表現力は一段と豊かになります。
本記事では、「憶える」の意味、類語、英語表現、使われるシーン、例文、そして「覚える」との違いまでを網羅的に解説しました。ぜひ、場面に応じて使い分け、自然で魅力的な日本語表現を身につけてください。