「少しずつ」「少しづつ」どっち?【例文30】正しい使い方と使い分け

少しずつ

「少しずつ」と「少しづつ」、あなたはどちらの表記を使っていますか?日常会話やSNS、ビジネスメールなど、さまざまな場面で目にする言葉ですが、いざ正しい表記となると不安になる人も多いのではないでしょうか。

この2つの表現は、発音上はほとんど同じに聞こえますが、実は明確なルールが存在しています。「少しずつ」は正しい表記、「少しづつ」は誤りとされることもあるのです。

とはいえ、「少しづつ」という表記が完全に間違っているわけではなく、歴史的な背景や言語の変遷を知ることで、なぜ現在「少しずつ」が正解とされているのかを理解できます。

本記事では、

  • なぜ「少しずつ」が正解なのか
  • 「ずつ」と「づつ」の使い分けのポイント
  • 平安時代から現代に至る言語の変化
  • 実際の使用例(ビジネス、私的、SNS)を30個紹介
  • よくある質問や誤用への注意点

を丁寧に解説していきます。読み終えるころには、表記に迷うことなく「少しずつ」を正しく使えるようになるはずです。ぜひ最後までご覧ください。

目次

「少しずつ」と「少しづつ」どっちが正解?

少しずつ上る

結論から言うと、現代の正しい表記は「少しずつ」です。「少しづつ」という表記は誤りとされることが多く、特にビジネス文書や公的な文章では避けるべきとされています。

なぜ「少しずつ」が正しいのか?

その理由は、「現代かなづかい」という国が定めた正書法(せいしょほう:正しい書き方のルール)にあります。

現代かなづかいのルール:

  • 昭和21年(1946年)に「当用漢字表」と「現代かなづかい」が公布されました。
  • このとき、「づ」と「ず」の使い分けが明確に定められました。
  • 「ずつ」と表記するのが正しく、「づつ」は誤用とされることになったのです。

「ずつ」と「づつ」の違いってなに?

「ず」と「づ」は、どちらも濁音で発音はほとんど同じように聞こえますが、以下のような使い分けがあります。

文字用例備考
いくつずつ、何回ずつ助数詞に付くときは「ずつ」
づく(続く)、つづみ(鼓)元の語が「つ」+「つ」や、「つ」+濁音のときは「づ」になることが多い

つまり、「少しずつ」は「少し」に対して「ずつ(=一つひとつ分ける)」という助数詞が付いた形なので、「ずつ」と書くのが正しいわけです。

「少しづつ」は絶対に間違い?

必ずしもそうとは限りません。日常的な会話や、SNSなどのカジュアルな場面では、「少しづつ」と書いても伝わりますし、誤解を招くことも少ないでしょう。しかし、正式な文書、論文、記事、履歴書などでは「少しずつ」と書くのがマナーです。

「少しずつ」と「少しづつ」正しい使い方と使い分け

ポイント

前章でお伝えした通り、現代の正しい表記は「少しずつ」です。しかし、実際の言語使用では「少しづつ」と書かれている場面も少なくありません。この章では、それぞれの表記が使われやすい場面や注意点について詳しく解説します。

「少しずつ」が正しい使い方とされる理由

「ずつ」は、助数詞として使われる場合の正式な表記です。助数詞とは、「1つずつ」「順番ずつ」などのように、ものを分ける・区切る意味で使われる言葉です。

例:

  • 正: 一人ずつ意見を聞く。
  • 正: 書類を三枚ずつ配ってください。

この用法が「少しずつ」にも当てはまるため、「ずつ」が正しい表記となるのです。

「少しづつ」の使われ方とその背景

「少しづつ」は、発音上は「少しずつ」とほぼ同じであるため、特に話し言葉インターネット上のテキストではしばしば見られます。

よく見かける場面:

  • SNSの投稿(Twitter、Instagramなど)
  • ブログやエッセイなど、ややカジュアルな文章
  • 会話文の再現やセリフの表現(口語)

例:

  • (SNSの投稿)「ダイエット、少しづつ頑張ってる💪」
  • (小説の会話文)「…うん、少しづつなら前に進めそう。」

このように、「少しづつ」は文脈によっては“やわらかい印象”や“親しみ”を出すために、あえて使われるケースもあります。ただし、文法的には間違いであることを念頭に置く必要があります。

使い分けのポイントまとめ

シーン推奨表記理由
ビジネス文書少しずつ公的な場では正しい文法が求められる
論文・レポート少しずつアカデミックな文章では誤表記は減点対象に
SNS・私的文章少しづつでも可口語的・感情的な表現として許容されることも
小説・セリフ少しづつでも可話し言葉として自然に見える

「少しずつ」と「少しづつ」の歴史的背景

薬師寺

現在、「少しずつ」が正しい表記とされていますが、「少しづつ」という表記がまったくの誤りというわけではありません。実はこの「づつ」は、日本語の歴史の中で長いあいだ使われてきた正統な表記でもあるのです。

この章では、平安時代から現代に至るまで、「ずつ/づつ」がどのように使われてきたのかを時代ごとに見ていきましょう。


平安時代:「づつ」が一般的だった時代

平安時代(794年〜1185年)には、「づつ」という表記が一般的でした。この時代のかなづかいでは、現在のような「ず」「づ」の明確な区別がなかったため、語感に従って「づつ」が自然に使われていました。

例:

  • 『源氏物語』や『枕草子』など、古典文学には「づつ」が頻出
  • 「ひとつづつ」「とおづつ」など、連続性や配分のニュアンスを持つ語に多く用いられた

この頃は「正しい表記」の概念そのものが緩やかで、口語に近い音感を大切にしていたことが背景にあります。


江戸時代:「づつ」と「ずつ」が混在

江戸時代(1603年〜1868年)になると、印刷文化が発達し、書き言葉のルール化が進み始めました。それでも、表記の揺れは多く見られました。

  • 「づつ」と「ずつ」が文献ごとに混在して使われている
  • 「俳句」や「川柳」などでは音の響きやリズム重視で「づつ」が選ばれることが多い

例:

  • 「一人づつ」「少しづつ」など、やや古風で柔らかい響きが好まれた

明治時代:言語の標準化が進む

明治時代(1868年〜1912年)には、言文一致運動(げんぶんいっちうんどう)が起こり、話し言葉と書き言葉を統一しようという動きが活発になります。

  • 小学校教育の普及により、「標準語」の意識が浸透
  • 「づつ」の表記が依然として使われていたが、一部では「ずつ」の表記も見られるようになる

この時期にはまだ統一されたルールはなく、辞書や教科書によって表記が異なる場合もありました。


戦後:1946年に「ずつ」が正式表記に

太平洋戦争後、日本政府は日本語の表記法を見直し、1946年に「現代かなづかい」を制定しました。

ここで、はじめて「ず」と「づ」の使い分けが明文化されます。

具体的な変更点:

  • 「ずつ」と書くのが正しい
  • 「づつ」は誤りとされる

これにより、学校教育、メディア、出版物などでは「少しずつ」が正式な表記として扱われるようになりました。


まとめ:時代によって正解が変わってきた

時代主な表記備考
平安時代づつ古典文学では一般的
江戸時代づつ・ずつ混在音の響きを重視
明治時代づつ(主流)教育現場ではまだ混在
戦後以降ずつ(正式)現代かなづかいにより統一

歴史をたどると、「づつ」はかつての正しい表記だったことが分かります。しかし、現代においては「ずつ」を使用するのが原則です。

「少しずつ」と「少しづつ」【例文30】

少しずつの料理

この章では、「少しずつ」(正しい表記)と「少しづつ」(口語的・非公式な表記)が、実際にどのような場面で使われているのかを例文で具体的に紹介します。今回は使用場面を3つに分け、それぞれ10例ずつ、合計30の例文をご紹介します。


ビジネスシーンでの「少しずつ」(例文10)

ビジネスでは正確な表記が求められるため、「少しずつ」を使うのが基本です。

  1. 今後も業務の効率化を少しずつ進めてまいります。
  2. 予算の範囲内で少しずつ設備を更新していきましょう。
  3. 顧客対応のマニュアルを少しずつ見直しています。
  4. 売上は少しずつ伸びてきています。
  5. チームの意識改革も少しずつ成果が出始めました。
  6. 海外展開は少しずつ段階的に進める予定です。
  7. 会議での発言も少しずつ増えてきましたね。
  8. クレーム対応力を少しずつ高めるための研修を行います。
  9. 社内ルールを少しずつ見直して改善に努めています。
  10. 新人教育は少しずつステップアップ方式で行っています。

私的なシーンでの「少しずつ」(例文10)

日常会話やプライベートな文章でも、「少しずつ」は自然に使われます。

  1. 毎日少しずつ運動するようにしています。
  2. 部屋の片づけを少しずつ進めてるんだ。
  3. 料理のレパートリーを少しずつ増やしてるよ。
  4. 貯金を少しずつ頑張ってるところです。
  5. 英語の勉強、少しずつだけど続けてるよ。
  6. 体調が少しずつ良くなってきました。
  7. 趣味の写真も少しずつ上達してきた気がする。
  8. 子どもが少しずつ言葉を覚えてきました。
  9. 心の整理も少しずつできてきたかな。
  10. 将来の夢に向けて、少しずつ準備しています。

SNSやカジュアルな文章での「少しづつ」(例文10)

SNSや口語的な表現では、「少しづつ」の形があえて使われることもあります。感情的なトーンや親しみやすさを演出できますが、あくまでカジュアルな場面での使用にとどめましょう。

  1. やっと気持ちが少しづつ落ち着いてきた。
  2. 人間関係って少しづつ変わっていくよね。
  3. 新しい職場にも少しづつ慣れてきた感じ。
  4. コツコツ少しづつ頑張るのが自分のスタイル。
  5. ダイエット少しづつだけど効果出てきた!
  6. 昔よりも少しづつ自信が持てるようになった。
  7. 生活を少しづつ整えていきたい。
  8. 夢に向かって少しづつ前進中!
  9. 気づいたら少しづつ周りが変わってきた気がする。
  10. 苦手なことも少しづつ克服できるようになりたい。

注意:SNSや日常会話では伝わりやすさ・親しみやすさを重視して「少しづつ」と書いてもOKですが、ビジネスや公的な文書では「少しずつ」に統一しましょう。

「ずつ」と「づつ」の誤用に注意

はてなマーク

「ずつ」と「づつ」は発音がほとんど同じため、書き間違いや変換ミスが非常に起きやすい表現です。この章では、よくある誤用パターンとその防止策について詳しく解説します。


なぜ誤用が起きるのか?

1. 発音が同じため

日本語では「ず」と「づ」の発音はほとんど区別されません。特に「連濁(れんだく)」と呼ばれる音便の影響で、音だけ聞いて書くと誤ることがあります。

2. IME(日本語入力ソフト)の自動変換

パソコンやスマートフォンの日本語変換システム(IME)では、文脈によっては「づつ」に変換されることがあります。特に「すこしづつ」と仮名入力して確定すると、意図せず誤表記になってしまうことも。

3. 書き慣れていない

文章を書く機会が少ない人や、かなづかいに不慣れな人にとっては、「ずつ」「づつ」のどちらが正しいのか判別しにくくなります。


よくある誤用の例と修正ポイント

誤った表記正しい表記コメント
少しづつ進む少しずつ進む正しい助数詞表記は「ずつ」
一人づつ順番に一人ずつ順番に助数詞+副詞は「ずつ」に統一
二枚づつ配る二枚ずつ配る「ずつ」は数量に関わる副詞で使用

誤用を防ぐためのチェックリスト

✅ ビジネスや公式文書では「ずつ」に統一されているか?
✅ 変換時に「づつ」になっていないか確認する習慣を持つ
✅ 校正ツール(例:Wordの文法チェック機能)を活用する
✅ 辞書や国語辞典で確認するクセをつける
✅ 「ずつ」は「ず(連続)」+「つ(単位)」の意識を持つと覚えやすい


学校や試験でも要注意!

国語の授業や入試・資格試験などでも、「ずつ」「づつ」の表記はチェック対象です。とくに記述式の問題で誤字と判定される可能性がありますので、以下のように意識しておくとよいでしょう。

  • 「ひとつずつ」「順番ずつ」「少しずつ」はセットで覚える
  • 書き取りや作文で「づつ」と書かないように注意する

まとめ: 「ずつ」と「づつ」の違いは見た目は小さくても、文章全体の信頼性や印象に大きく影響します。特にビジネスや学術の場では、「少しずつ」が正解であることを意識し、誤変換やうっかりミスを防ぐよう心がけましょう。

よくある質問

Q&A

「少しずつ」と「少しづつ」について、実際に多くの方から寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。言葉の使い方に迷ったときは、ぜひこの章を参考にしてください。


Q1:「少しづつ」は完全に誤りなのですか?

A:文法上は誤りですが、会話やSNSでは許容されることもあります。

「現代かなづかい」では、「ずつ」が正しい表記です。つまり、正式な文書・レポート・論文などで「少しづつ」と書くのは誤用とされます。

しかし、日常会話やSNS、創作物(小説、ブログなど)では、「少しづつ」と書かれていても伝わる上に、柔らかい印象を与えることもあるため、口語的なニュアンスを出したいときには意図的に使われることもあります。


Q2:昔の文献では「づつ」って書かれてるけど、それは間違いなの?

A:当時の表記としては正解です。

たとえば平安時代や江戸時代の文献には「ひとりづつ」「とおづつ」などの表記が登場します。これはその時代における正しい仮名づかいであり、現代の基準で「誤り」と断じるのは誤解です。

現代では「少しずつ」が正解ですが、歴史的な用法として「づつ」があったことは事実であり、日本語の豊かな変遷を物語っています。


Q3:スマホやパソコンで変換すると「づつ」になるんですが…?

A:IME(入力ソフト)の変換ミスによるものです。

たとえば、スマホで「すこしづつ」とローマ字入力すると、「づつ」が候補に出ることがあります。これは文脈を判断せずに機械的に変換しているだけなので、最終的には自分で「少しずつ」に修正する必要があります。

✅対処法:

  • 入力時に「ずつ」と打ち直す
  • よく使う表現は辞書登録しておく
  • 文書作成時は一括で「づつ」→「ずつ」変換を実行

Q4:文章全体で統一していれば「づつ」でも問題ないですか?

A:非公式な文書であれば、統一されていれば伝わりますが、推奨はされません。

たとえばブログやエッセイで、意図的に「少しづつ」と表記しているケースもあります。ただし、その場合でも読者が違和感を覚える可能性があるため、原則としては「少しずつ」に統一するのが無難です。

特に複数人で書く文書、校正が入るような原稿では、表記ルールを守ることが信頼性につながります。

まとめ

「少しずつ」と「少しづつ」、見た目はわずかな違いですが、その使い方には明確なルールがあります。

現代日本語の正しい表記は「少しずつ」です。これは1946年に定められた「現代かなづかい」に基づいており、助数詞的な用法として「ずつ」を使うことが正解とされています。

一方で、「少しづつ」という表記は、かつては広く使われていた歴史的な形であり、平安時代から明治時代までは一般的でした。現在では文法上の誤りとされることが多いものの、SNSや日常会話などカジュアルな場面では使われることもあり、親しみややわらかさを表す表現として許容されることもあります。

この記事では、以下のポイントを解説しました:

  • 「少しずつ」が正しい理由
  • 「づつ」が使われていた歴史的背景
  • 実際の使用例30パターン(ビジネス/私的/SNS)
  • よくある誤用と防ぎ方
  • よくある質問へのQ&A

言葉は時代とともに変化しますが、正しい知識を身につけることで、より信頼性のある、読みやすい文章が書けるようになります。今後、文章を書く際は「少しずつ」を正しく使いこなしましょう。