「飛ぶ」「跳ぶ」「翔ぶ」の違い【70例文】使い方はこれで完璧!

飛躍する人

日本語には、同じ読み方でも異なる意味や使い方を持つ漢字が多数存在します。その中でも、「とぶ」と読む「飛ぶ」「跳ぶ」「翔ぶ」の3つの漢字は、特に混同しやすい代表例です。

一見するとどれも「空中を移動する」というイメージがありますが、それぞれの漢字には明確なニュアンスや使い分けのルールがあります。例えば、「鳥が飛ぶ」は「飛ぶ」や「翔ぶ」どちらでも使えそうに思えるかもしれませんが、場面や意図によって最適な漢字が異なるのです。

このような微妙なニュアンスの違いを理解し、正しく使い分けられるようになると、文章表現の幅が一気に広がります。また、メールやレポート、作文、ブログ記事など、さまざまな場面で読み手により洗練された印象を与えることができます。

本記事では、それぞれの「とぶ」の意味と使い方を丁寧に解説し、合計70の例文を通して実践的に学べるよう構成しています。最後まで読み進めていただければ、「飛ぶ」「跳ぶ」「翔ぶ」の違いは完璧に理解できるようになります。

目次

「飛ぶ」の意味

「飛ぶ(とぶ)」という漢字は、もっとも広く一般的に使われる表記です。空中を移動するイメージを持ち、日常会話からニュース記事、ビジネス文書まで幅広いシーンで使用されます。

「飛ぶ」には主に以下のような意味があります。

①空中を移動する(物理的な移動)

もっとも基本的な意味で、「鳥が空を飛ぶ」「飛行機が飛ぶ」のように、物体や生物が空を移動する様子を表します。

例:

  • カラスが空高く飛んでいった。
  • 飛行機が滑走路から飛び立つ。

②瞬間的な移動・移動の比喩(抽象的な使い方)

物理的な移動だけでなく、時間や空間、情報、記憶の飛躍的な移動にも使われます。

例:

  • 話が飛んでしまって、よく分からなかった。
  • ページを飛ばして読んでしまった。
  • 時間が飛ぶように過ぎた。

③消失・離脱する

何かが急になくなったり、どこかへ行ってしまったりする場合にも「飛ぶ」が使われます。

例:

  • ボールが庭の外に飛んでいった。
  • 脳からすっかり記憶が飛んでしまった。
  • 火花が飛んで火事になった。

④状態や場所が急に変わる

位置や状況が一気に移動・変化することも「飛ぶ」で表現されます。

例:

データがネット上に飛んだ(=漏洩した)。

怒りで我を忘れて理性が飛んだ。

「跳ぶ」の意味

なわとびを跳ぶ子ども

「跳ぶ(とぶ)」は、地面などの接地面から一時的に体を浮かせる「ジャンプ」や「はねる」動作を表す漢字です。「飛ぶ」と異なり、跳ねる動作に焦点が当たっており、人間や動物、時にはボールや虫などの跳躍に使われます。

「跳ぶ」の主な意味は以下の通りです。

①地面からジャンプする動作

自らの力で地面を蹴って体を一時的に空中に持ち上げる動き。「飛ぶ」と似ていますが、目的や動作の主体性に違いがあります。

例:

  • 子どもが元気よく跳びはねている。
  • 高く跳べるようになった。

②スポーツや体操における跳躍動作

「跳ぶ」は、スポーツの文脈で多用される語で、記録や技術に関連する跳躍を表すときに使います。

例:

  • 幅跳びで7メートル跳んだ。
  • ハードルを軽々と跳び越えた。

③感情や勢いによる動作

嬉しさや驚きなどによって体が自然に跳ねるような動きにも使われます。

例:

  • 嬉しさのあまり跳び上がった。
  • 突然の大きな音に驚いて跳んだ。

④跳ねるように進む動作

継続的な跳躍で前に進むような動作にも使います。動物の動きや、軽快な進み方を表すときに適しています。

例:

  • ウサギがぴょんぴょん跳んでいる。
  • 子どもがリズムよく跳びながら歩いていく。

「翔ぶ」の意味

イーグルが翔ぶ

「翔ぶ(とぶ)」は、他の「飛ぶ」「跳ぶ」と比べるとやや文語的・詩的な表現として使われる漢字です。実際の使用頻度は高くありませんが、小説や詩、キャッチコピーなどではよく見かける表現です。

意味としては「飛ぶ」と近いのですが、「自由さ」「雄大さ」「優雅さ」などのニュアンスが加わる点が特徴です。

①空高く雄大に飛行する

「翔ぶ」は、単なる飛行ではなく、空を大きく自由に、悠々と飛ぶ様子を表現します。鳥や飛行機に使われる場合でも、詩的な情景や感動的なイメージが強調されます。

例:

  • 鷹が青空を翔ぶ。
  • 白鳥が湖上を翔んでいた。

②自由や理想を象徴する

現実の飛行に限らず、「心が翔ぶ」「夢が翔ぶ」など、精神的な自由や理想の追求など、抽象的・象徴的な使い方がされます。

例:

  • 若者の心は未来に翔んでいる。
  • 翔ぶような気持ちで旅に出た。

③詩的・文学的な演出

物語や詩、あるいはブランド名・作品タイトルなどに使われることも多く、洗練された印象を与えるための表現手法として重宝されています。

例:

  • 『翔べ!ガンダム』(アニメ作品のタイトル)
  • 翔んで埼玉(映画タイトル)

④名前に使われることも多い

「翔」は人名にもしばしば用いられ、「翔太」「翔平」「翔子」など、自由さや飛躍のイメージを込めた名付けに好まれています。

「飛ぶ」「跳ぶ」「翔ぶ」の違い・使い分け

虫眼鏡

「飛ぶ」「跳ぶ」「翔ぶ」はすべて「とぶ」と読みますが、意味・使いどころ・表現のニュアンスが異なります。違いを整理するには、目的・対象・雰囲気の観点から考えると分かりやすくなります。

以下の表をご覧ください。

項目飛ぶ(飛行)跳ぶ(ジャンプ)翔ぶ(詩的な飛行)
主な意味空中を移動する、飛行する地面を蹴って跳ね上がる空を大きく自由に飛び回る
用いる対象飛行機、鳥、虫、人、情報など人、動物、ボールなど鳥、心、理想、詩的な対象
抽象的な使い方話が飛ぶ、記憶が飛ぶなど驚いて跳ぶ、感情で跳ねる心が翔ぶ、夢が翔ぶなど
表現の雰囲気一般的、日常的身体的、動作的、運動的文学的、芸術的、感情的
使用頻度非常に高い中程度(特に運動関連)低め(文芸・作品タイトルに多い)
鳥が空を飛ぶ子どもがジャンプして跳ぶ鷹が大空を翔ぶ

◎簡単な使い分けポイント

  • 空を飛ぶ → 基本は「飛ぶ」、詩的なら「翔ぶ」
  • ジャンプする → 必ず「跳ぶ」
  • 抽象的に飛ぶ(記憶・話・時間) → 「飛ぶ」
  • 自由な心・夢が飛ぶ → 「翔ぶ」

「飛ぶ」の使い方【例文20】

猫が飛んで移動している

「飛ぶ」は日常的にもっともよく使われる表現であり、空を移動する動作のほかにも、抽象的な「飛躍」「消失」などを表現する場合に多用されます。ここでは、「飛ぶ」の代表的な使い方を20の例文で紹介します。具体的な場面ごとに分けて見ていきましょう。

◎1. 実際の飛行・移動に関する例文(物理的な「飛ぶ」)

  1. 鳥が空高く飛んでいった。
  2. 飛行機が成田空港を飛び立った
  3. 紙飛行機が風に乗って遠くまで飛んだ
  4. ドローンが空中を自由に飛び回っている。
  5. ハチが花から花へ飛び移っていた。
  6. カエルが池の向こうへ飛んだ
  7. スーパーマンが空を飛んで悪と戦う。

◎2. 抽象的な「飛ぶ」(時間・思考・情報など)

  1. 彼の話は論点があちこち飛んでいて分かりにくい。
  2. 記憶が一部飛んでしまっている。
  3. ページを飛ばして読んだら内容が分からなくなった。
  4. 噂が一瞬で社内中に飛び交った
  5. 5時間が飛ぶように過ぎた。
  6. 考えが突然未来に飛んだ
  7. チャンネルを飛ばしながらテレビを見ていた。

◎3. 消失・散乱に関する「飛ぶ」

  1. 風で帽子が飛んでいってしまった。
  2. カレーを煮込んでいたらルーがはねて油が飛んだ
  3. 火花が飛んで火災になった。
  4. お金が一気に飛んでいった。
  5. 書類が机の上から飛び散っていた。

◎4. その他の慣用表現的な「飛ぶ」

  1. 緊張で頭が真っ白に飛んでしまった。

「跳ぶ」の使い方【例文20】

ダンスで跳ぶ

「跳ぶ」は、地面や床などから勢いよく跳ね上がる動作を表すときに使われます。運動や動物の動き、あるいは感情的な反応など、身体的なジャンプが中心です。ここでは、「跳ぶ」の代表的な使い方を20の例文に分けて紹介します。

◎1. 身体を使った跳躍動作(スポーツ・運動など)

  1. 子どもが縄跳びで元気よく跳んでいる。
  2. 陸上選手が高跳びで2メートルを跳んだ
  3. バレエダンサーが美しく空中に跳び上がった
  4. ハードルをリズムよく跳び越えていった。
  5. 走り幅跳びで記録を跳んだ
  6. 練習の成果で高く跳べるようになった。
  7. 鳥のヒナが巣の外へ小さく跳んだ

◎2. 動物の跳ねる動作

  1. カエルが池のふちから跳んだ
  2. ウサギがぴょんぴょんと草原を跳び回っている。
  3. ノミが突然足元で跳んだ
  4. 猫が机の上に跳び乗った
  5. リスが木から木へ跳び移った

◎3. 感情・驚き・反射的な動き

  1. 驚いて思わず後ろに跳んだ
  2. 大きな音にビクッと跳び上がった
  3. 嬉しくて思わずその場で跳びはねた
  4. ゲームで勝って思わず跳び上がるほど喜んだ。

◎4. 抽象的・比喩的な表現(やや少なめ)

  1. 心がはずんで、まるで跳んでいるような気分だった。
  2. 舞台での演技がまるで重力を跳び越えるようだった。
  3. 恐怖で心臓が跳ねるように感じた(※「跳ぶ」と「跳ねる」は関連あり)。
  4. 緊張で声が跳んでしまった(やや誤用気味だが口語で見られる)。

「翔ぶ」の使い方【例文20】

かもめが翔ぶ

「翔ぶ」は、詩的・文学的な飛行を表現する際に使われる漢字です。現実の飛行動作よりも、「自由」「理想」「心の高揚」など、精神的・芸術的な意味合いを込めて使われることが多いのが特徴です。

ここでは、「翔ぶ」の代表的な使い方を、実際の飛行から抽象的・象徴的な表現まで幅広く20の例文でご紹介します。

◎1. 鳥・生き物の優雅な飛行

  1. 鷹が大空を優雅に翔んでいる。
  2. 鶴が群れをなして空を翔んでいった。
  3. 白鳥が湖の上を滑るように翔ぶ姿は美しかった。
  4. ツバメが初夏の空を翔び交っていた。
  5. 鳥たちが朝焼けの空に向かって翔んだ

◎2. 抽象的な飛翔(心・夢・未来など)

  1. 若者の夢が世界へ翔んでいく。
  2. 心が未来へと翔ぶような気分だった。
  3. 希望に満ちた想いが胸の中で翔んでいる。
  4. 創造力が自由に空へ翔んでいった。
  5. 彼の音楽は聴く人の心を翔ばせる

◎3. 詩的・物語的な表現(文学・作品タイトルなど)

  1. 詩の言葉が空を翔ぶように流れる。
  2. 『翔べ!ガンダム』は少年の成長を描いた物語だ。
  3. 翔んで埼玉という映画は風刺とユーモアに満ちている。
  4. 物語の主人公は夢と共に翔んだ
  5. 魂が自由に翔んでいくような読後感だった。

◎4. 名前・キャッチコピー・象徴的表現として

  1. 「大空を翔ける志(こころ)」という学校のスローガン。
  2. 翔太は「自由に翔ぶ人になってほしい」との願いから名づけられた。
  3. 「未来を翔ぶ、新しい可能性へ」―企業の広告コピー。
  4. アーティストの新曲『翔び立つとき』がリリースされた。
  5. 翔べる者だけが見える景色がある。

間違えやすい使い方【例文10】

発見マーク

「飛ぶ」「跳ぶ」「翔ぶ」はすべて「とぶ」と読むため、特に文章で書くときにどの漢字を使えばよいか迷いがちです。この章では、よくある間違いや混同しやすい例を紹介し、正しい使い分け方を例文とともに解説します。

◎間違えやすい例と正しい使い方


❌間違い例 1:
× 子どもが公園で楽しそうに飛び回っていた。
→「飛ぶ」は空中移動の意味になるため不自然。
✅ 正しい:子どもが公園で楽しそうに跳び回っていた。


❌間違い例 2:
× 鳩が空を跳んでいった。
→「跳ぶ」はジャンプ動作。鳩は空を飛ぶので不適切。
✅ 正しい:鳩が空を飛んでいった。(※詩的表現なら「翔んで」も可)


❌間違い例 3:
× 夢に向かって大空を飛ぶ若者たち。
→物理的な飛行ではなく比喩的・詩的表現のため、「翔ぶ」が適切。
✅ 正しい:夢に向かって大空を翔ぶ若者たち。


❌間違い例 4:
× カエルが草むらを飛んだ
→カエルの動作はジャンプなので「跳ぶ」が正しい。
✅ 正しい:カエルが草むらを跳んだ


❌間違い例 5:
× 話の筋が翔んでしまった。
→抽象的な思考の飛躍には「飛ぶ」が適切。
✅ 正しい:話の筋が飛んでしまった。


❌間違い例 6:
× 雲を跳んでいくような心地。
→空を自由に移動するイメージには「翔ぶ」が自然。
✅ 正しい:雲を翔んでいくような心地。


❌間違い例 7:
× ページを翔ばして読んだ。
→具体的な動作には「飛ぶ」が適切。
✅ 正しい:ページを飛ばして読んだ。


❌間違い例 8:
× ライオンが柵を飛び越えた
→ジャンプなので「跳び越えた」が正しい。
✅ 正しい:ライオンが柵を跳び越えた


❌間違い例 9:
× 感動が胸を跳んだ
→「跳ぶ」は身体動作。「飛ぶ」もしくは「翔ぶ」がより自然。
✅ 正しい:感動が胸を翔んだようだった。


❌間違い例 10:
× ドローンが空を跳び回っていた。
→空中を移動しているので「飛び回って」が適切。
✅ 正しい:ドローンが空を飛び回っていた。


◎ポイントまとめ

  • ジャンプ → 跳ぶ
  • 空を移動(実際) → 飛ぶ
  • 空を優雅に自由に(詩的) → 翔ぶ
  • 話・記憶・ページなどの飛躍 → 飛ぶ

よくある質問

Q&A

「飛ぶ」「跳ぶ」「翔ぶ」の使い分けは、日本語学習者はもちろん、日本語ネイティブでも悩むことがあります。ここでは、読者の方からよく寄せられる質問をQ&A形式でわかりやすく解説します。


Q1:「翔ぶ」は日常会話で使っていいの?

A1:
基本的に「翔ぶ」は文語的・詩的な印象が強いため、日常会話ではあまり一般的ではありません。例えば「鳥が翔んだ」と話すと、やや文学的・詩的すぎる印象を与えることがあります。会話では「飛ぶ」を使う方が自然です。ただし、創作、詩、キャッチコピー、スピーチなどでは「翔ぶ」が効果的に使えます。


Q2:「跳ぶ」と「飛ぶ」の違いが分かりにくいです。

A2:
両者ともに「とぶ」ですが、主な違いは動作の種類です。

  • 跳ぶ:地面から跳ね上がる(ジャンプ)
  • 飛ぶ:空中を移動する(浮遊、飛行)

たとえば、人がジャンプするなら「跳ぶ」、鳥が空を移動するなら「飛ぶ」です。動作の「跳ねる感」があるかどうかを基準にすると分かりやすくなります。


Q3:「翔ぶ」を使うときのコツは?

A3:
「翔ぶ」は感情や美的表現と組み合わせると自然になります。たとえば:

  • 心が翔ぶ
  • 夢が翔ぶ
  • 青空を翔ける

など、「自由」「のびやかさ」「詩的な美しさ」を感じさせたいときに使うと効果的です。また、人名や作品タイトルでは高い頻度で使われるため、文脈を意識して取り入れると良いでしょう。


Q4:文章を書くとき、どの「とぶ」を選べばいいのか迷います。

A4:
迷ったときは以下のように考えてみましょう。

  • 物理的にジャンプしている? → 跳ぶ
  • 空を飛行している? → 飛ぶ
  • 自由や理想、感情の飛翔を表現したい? → 翔ぶ

また、一般的で自然な表現にしたい場合は「飛ぶ」が最も無難です。文学的・詩的な印象を出したいときだけ「翔ぶ」を選ぶと良いでしょう。


Q5:「翔ぶ」「跳ぶ」は学校で習いますか?

A5:
「飛ぶ」は小学校の早い段階で習いますが、「跳ぶ」「翔ぶ」はやや後になります。特に「翔」は常用漢字ですが、日常の語彙としては中学生以上で習うことが多いです。そのため、読み書きには少し注意が必要ですが、大人の文章表現には積極的に活用されます。

まとめ

「飛ぶ」「跳ぶ」「翔ぶ」は、すべて「とぶ」と読む同音異義語ですが、それぞれ意味や使い方に明確な違いがあります。

  • 飛ぶは、空中を移動する一般的な飛行動作や、情報・記憶・話の流れなどの抽象的な移動にも使われます。
  • 跳ぶは、ジャンプする動作に特化した表現で、身体の跳躍や動物のはねる動作、スポーツの動きに適しています。
  • 翔ぶは、空を自由に、優雅に飛ぶ詩的なイメージを持ち、文学的・象徴的な表現に用いられます。

それぞれの使い分けを正しく理解することで、文章に深みと美しさが生まれ、場面にふさわしい表現を選ぶことができるようになります。日常的な文章では「飛ぶ」が最も自然ですが、感情や芸術的表現を豊かに伝えたいときには「翔ぶ」、動きの迫力や勢いを出したいときには「跳ぶ」を選ぶと良いでしょう。

70の例文を参考に、ぜひ実際の文章の中で使い分けを意識してみてください。言葉の選び方ひとつで、伝わり方が大きく変わることを実感できるはずです。