説明できる？「辞典」と「事典」の違いと使い分けを徹底解説
mako
「辞典」と「事典」。この二つの言葉、見た目も読み方も似ているため、何となく同じものとして使ってしまっていませんか？
確かにどちらも「調べるための本」ではありますが、実はその目的や扱う内容、構成の仕方において、はっきりとした違いがあります。
この違いを理解しておくことで、より正確に情報を調べたり、人に説明したりすることができるようになります。特に、文章を書く仕事や勉強をしている人にとっては、この使い分けが重要なポイントになります。
この記事では、「辞典」と「事典」の定義から始まり、それぞれの違いや使い分け方を、表や具体例を交えてわかりやすく解説していきます。
また、よく混同されがちな「解放」と「開放」の違いにも触れながら、実際の使い方をイメージしやすくしています。
最後まで読めば、「辞典」と「事典」をしっかり区別して使えるようになりますよ。
「辞典」と「事典」の違い
「辞典」と「事典」は、どちらも「知識を得るための本」ですが、その調べる対象・目的・構成などに明確な違いがあります。以下の表で比較しながら、その違いを整理してみましょう。
| 項目 | 辞典（じてん） | 事典（じてん） |
|---|---|---|
| 調べる対象 | 言葉（語句・単語） | 事柄（事象・トピック） |
| 目的 | 言葉の意味・用法・読み方などを確認する | あるテーマや分野に関する知識を得る |
| 構成 | 語句が五十音順やアルファベット順で並ぶ | テーマ別や五十音順で構成されるが、内容はより詳細 |
| 情報の深さ | コンパクトに要点を解説 | 背景・歴史・関連事項まで網羅的に解説 |
| 使用例 | 国語辞典、英和辞典、漢和辞典など | 百科事典、歴史事典、美術事典など |
| 対象読者 | 言葉の意味や使い方を知りたい人 | 分野を深く学びたい人、研究・調査目的の人 |
| 例 | 「愛」という言葉の意味・用法を調べる | 「愛」という概念の歴史・哲学的意味・文化的背景を調べる |
- 辞典は「言葉」を調べるもの
- 事典は「ことがら」を調べるもの
- 辞典＝「言葉の意味」／事典＝「意味の背景」
このように、「辞典」と「事典」は似ているようで、実は役割がまったく異なる書物です。目的によって使い分けることが大切です。
「辞典」とは
「辞典（じてん）」とは、言葉の意味や使い方、読み方、語源、文法などの情報を収録した書物のことです。「言葉を調べるための本」として、国語辞典・英和辞典・古語辞典などが代表的です。
主な特徴
- 語句が五十音順またはアルファベット順に並んでいる
→ 調べやすさを重視して構成されている - 単語ごとに意味・品詞・用法・例文などが掲載されている
→ その言葉がどう使われるか、どんな意味があるかを詳しく解説 - 対象は「言葉」そのもの
→ 物事の背景や歴史よりも、「言葉の使い方」に重点がある
用途
- 小説やビジネス文書を書く際に、正しい言葉を確認する
- 言葉の意味や使い方に迷ったときに調べる
- 話し言葉と書き言葉の違いを学ぶ
たとえば、ある単語の正確な意味や使い方を知りたい場合には、「辞典」が最も適した資料になります。
「事典」とは
「事典（じてん）」とは、特定の事柄や分野に関する知識・情報を体系的にまとめた書物です。百科事典、美術事典、音楽事典、医学事典など、多様な分野の知識を網羅的に扱います。
主な特徴
- 対象は「物事」や「事象」、つまり「事柄」
→ たとえば「戦国時代」というトピックについて、その背景や重要人物、文化などを詳しく解説する - 辞典よりも1項目あたりの情報量が多く、深掘りされている
→ 用語の意味だけでなく、関連知識や歴史的背景まで扱う - 体系的・学術的に編集されていることが多い
→ 専門家が執筆し、信頼性が高い
用途
- 特定のテーマについて体系的に理解したいときに使う
- 調べ物やレポート作成などで背景知識を深めたいときに便利
- 分野の全体像をつかむための導入資料としても有用
つまり、「事典」は単に言葉の意味を調べるためのものではなく、背景知識や関連情報を広く深く知るための資料なのです。
「辞典」と「事典」の使い分け
前章で違いを整理しましたが、実際にどんな場面で「辞典」と「事典」を使い分けるべきか、具体的なシーンごとに見ていきましょう。
①日常会話や文章作成で言葉の意味を調べたいとき
→ 辞典を使うべき
たとえば、「斡旋（あっせん）」という言葉を初めて聞いたとき、どういう意味か知りたいと思ったら国語辞典を使います。意味、使い方、読み方、例文などが簡潔にまとまっているため、すぐに理解できます。
②特定の分野の知識を深く学びたいとき
→ 事典を使うべき
「印象派」という美術用語について調べるとき、その定義だけでなく、誰が代表的な画家なのか、時代背景や技法などを知りたいなら、美術事典や芸術事典が役立ちます。背景知識が詳しく記されているのがポイントです。
③学校の宿題やレポートでテーマを掘り下げる必要があるとき
→ 事典が適している
たとえば、「戦国時代の武将」について調べる場合、辞典では個々の武将名の意味しか載っていないことが多いです。一方、歴史事典では人物の功績、時代背景、人間関係なども含めて詳しく説明されており、内容の充実度が違います。
④ある言葉が複数の意味を持つときに正しく使い分けたいとき
→ 辞典が向いている
たとえば「解釈」という言葉には法律・宗教・文学など文脈に応じた異なる意味があります。こういった語の意味の違いや用法を整理したいときは、国語辞典や専門辞典のほうが効率的です。
「辞典」の英語
「辞典」は英語で一般的に “dictionary（ディクショナリー）” と訳されます。英語学習者であれば、最もよく目にする単語の一つです。
Dictionary の意味
“dictionary” は、語句の意味、発音、文法、語源、例文などを記載した書籍やデータベースを指します。まさに「辞典」に対応する概念です。
主な種類
| 英語表現 | 日本語訳 | 用途 |
|---|---|---|
| English dictionary | 英語辞典（国語辞典に相当） | 英単語の意味や使い方を調べる |
| English-Japanese dictionary | 英和辞典 | 英語→日本語の意味を調べる |
| Japanese-English dictionary | 和英辞典 | 日本語→英語の表現を調べる |
| Bilingual dictionary | 二言語辞典 | 英和・和英のように、2言語で構成された辞典 |
| Learner’s dictionary | 学習者用辞典 | 英語学習者向けに語義や例文をやさしくした辞典 |
「事典」の英語
「事典」は英語で一般的に “encyclopedia（エンサイクロペディア）” と訳されます。これは、ある分野やテーマに関する知識・事実・背景情報を網羅的に収録した資料を意味します。
Encyclopedia の意味
“encyclopedia” は、ギリシャ語の「全体（enkyklios）」と「教育（paideia）」を語源に持ち、「人類の知識を一冊（または一連）にまとめたもの」という発想から生まれました。特徴としては以下のようになります。
- 言葉の意味ではなく、事象・概念・分野の情報を体系的に解説
- 項目ごとにまとまった文章量で詳しく説明
- 図表・写真・年表なども豊富
主な種類
| 英語表現 | 日本語訳 | 用途 |
|---|---|---|
| General encyclopedia | 総合百科事典 | 全分野を網羅（例：ブリタニカ百科事典） |
| Subject encyclopedia | 分野別事典 | 科学事典、歴史事典、美術事典など |
| Online encyclopedia | オンライン事典 | WikipediaやDigital Britannicaなど |
| Children's encyclopedia | 子ども向け百科事典 | 小学生・中学生向けのやさしい解説が中心 |
よくある質問
ここでは、「辞典」と「事典」について読者からよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。混乱しやすいポイントを改めて整理しておきましょう。
Q1. 電子辞典と電子事典の違いは何ですか？
A：基本的な違いは紙の辞典・事典と同じです。
- 電子辞典：単語の意味や用法など、言葉に関する情報を検索できるデジタルツール（例：英和辞典、国語辞典）
- 電子事典：分野別の知識や背景情報を収録したデジタル資料（例：百科事典、美術事典）
ただし、多機能な電子辞書には辞典・事典の両方が搭載されていることが多く、ユーザーが区別せずに利用していることもあります。
Q2. 辞典と事典のハイブリッドはありますか？
A：はい、あります。
一部の出版物では、「言葉」と「事柄」の両方をカバーするハイブリッド型の資料も存在します。例としては：
- 「現代用語の基礎知識」：時事用語の意味（辞典的）と背景解説（事典的）を兼ね備えた年鑑
- 「大辞泉」や「広辞苑」：基本的には辞典ですが、文化・歴史などの事典的要素も一部含んでいます
このように、完全な境界線があるわけではなく、近年は両者の融合も進んでいるのが現実です。
Q3. 子どもにおすすめなのは「辞典」と「事典」どっち？
A：目的によって異なります。
- 言葉を学ばせたい場合（国語力強化）
→ 子ども向けの「国語辞典」や「ことわざ辞典」などの辞典 - 好奇心を育てたい場合（知識の幅を広げる）
→ 図鑑や「子ども百科事典」などの事典
特に小学生には、イラストが豊富な事典や、読み物感覚で使える辞典など、楽しく学べる形式のものが効果的です。
Q4. 「辞典」と「事典」のどちらが正式な表現ですか？
A：どちらも正式な日本語表現であり、用途によって使い分けるのが正解です。
「辞典」と「事典」は用途と目的が異なる別の言葉ですので、正誤の問題ではなく、適切な場面で正しい語を選ぶことが大切です。
まとめ
「辞典」と「事典」は、どちらも「じてん」と読み、知識を調べるための本であるという点では共通しています。しかし、実際にはその内容や目的に大きな違いがあります。
「辞典」は、語句の意味や使い方、読み方などを調べるための書物で、言語に関する情報を簡潔に整理してくれます。国語辞典、英和辞典、漢和辞典などが代表的で、日常的に最もよく使われるタイプです。
一方で「事典」は、特定のテーマや分野に関する知識を体系的にまとめた資料で、言葉そのものではなく、その背景や関連する知識を深く理解するために使われます。百科事典、美術事典、歴史事典などがあり、調査や学習に役立ちます。
このように、辞典＝言葉を調べるもの／事典＝ことがらを調べるものという使い分けが基本です。目的によってどちらを選ぶべきかが異なりますので、正しく理解して使い分けることが重要です。
また、英語では「辞典」は dictionary、「事典」は encyclopedia と訳され、それぞれ異なる役割を持っています。関連語や類語との違いも押さえておくと、より正確な情報収集が可能になります。
この記事を通して、「辞典」と「事典」の違いが明確になり、場面に応じて適切に使い分ける力が身についたのではないでしょうか。正しい知識を身につけることは、日常の言葉づかいや文章作成にも必ず役立ちます。
