「できる」と「出来る」の使い分け|迷ったら「できる」一択!

疑問

日本語には、同じ意味でも「ひらがな」と「漢字」で表記の揺れが起きる言葉がたくさんあります。その中でも特に迷いやすいのが、「できる」と「出来る」です。どちらも日常的によく使う言葉ですが、文章の種類や目的によって、適切な表記が異なります。

たとえば、公文書やビジネス文書、履歴書を書くとき、「どっちで書くのが正しいの?」と迷った経験がある方も多いのではないでしょうか。さらに、最近ではWeb上の記事やSNSではひらがなが多く使われる一方で、漢字の「出来る」にこだわる人もいます。

本記事では、「できる」と「出来る」の違いや使い分け方を、文書の種類・文法的な観点・表記ルールに基づいて分かりやすく解説していきます。正しく使い分けることで、あなたの文章はより読みやすく、伝わりやすくなるはずです。

公文書、論文、履歴書で迷ったら「できる」と表記

パソコン

結論から言うと、公文書や論文、履歴書などの正式な文書では、基本的に「できる」とひらがなで書くのが正解です。

これは、文書作成におけるルールとして国が定める「公用文作成の要領」に基づいています。動詞や形容詞などの活用語は、原則としてひらがなで表記することが推奨されています。

なぜ「できる」はひらがなが基本なのか?

ひらがな表記が推奨されている主な理由は、以下のとおりです:

  • 読みやすく、分かりやすい
     公的な文書は、誰が読んでもすぐに理解できることが重要。そのため、読み慣れたひらがなが選ばれます。
  • 表記の統一が求められる
     文章中で「出来る」「出来ない」と漢字を使ったり、「できる」「できない」とひらがなを混ぜたりすると、読み手に混乱を与える可能性があります。
  • 形式的でない、親しみやすい印象
     「出来る」はやや堅苦しく、古風な印象を与えるため、現代のビジネス文書や公式書類では避けられる傾向にあります。

履歴書・志望動機でも「できる」を使おう

意外と見落としがちなのが、履歴書やエントリーシートでの表記です。

「◯◯の業務が出来ます」「英語で日常会話が出来ます」というように漢字で書くよりも、

  • 「◯◯の業務ができます
  • 「英語で日常会話ができます

のようにひらがな表記のほうが自然で丁寧な印象になります。特に企業の採用担当者は細かい言葉遣いや表記にも目を光らせているため、注意が必要です。

「できる」と「出来る」の意味は同じ

ノートとペン

「できる」と「出来る」は、意味の上ではまったく同じです。どちらも、以下のような使い方ができます:

主な意味と使い方

意味例文
1. 物事が可能であること(可能)この仕事は一人でもできる
2. 能力・スキルが備わっていること(能力)彼女は英語ができる
3. 物事が完成・成立すること(成立・完成)新しい駅ビルができるらしい。

このように、「できる/出来る」は、

  • 可能(can)
  • 能力(be able to)
  • 完成・成立(be completed)

といった意味で使われます。

違うのは“意味”ではなく“表記”

では、なぜ「できる」と「出来る」が混在して使われるのでしょうか?
答えは、「意味の違いではなく、表記の方針や文体に応じた使い分け」にあります。

たとえば、小説などで重厚な雰囲気を出したいときや、古典的な文体を採用した文章では、あえて「出来る」という漢字表記を用いることがあります。一方で、ビジネス文書、Web記事では「できる」と書くことで、より読みやすく、親しみやすい文章に仕上がります。

つまり、「できる」と「出来る」はどちらを使っても意味は変わらないものの、「どのような文体で」「誰に向けて書いているか」によって選び方が変わるのです。

動詞は基本的に「できる」とひらがな

ノートパソコンと人

文書や文章を書く際、動詞としての「できる」は基本的にひらがなで書くのが現代の標準的な表記です。これは、先ほども触れた「公用文作成の要領」などに基づく表記ルールであり、読み手の理解を助けるための工夫でもあります。

なぜ動詞はひらがな?

動詞は活用(=語尾の変化)があるため、漢字にすると読みにくくなったり、文のリズムが悪くなることがあります。たとえば、以下のような文を比べてみてください。

【例1:漢字表記】×

  • このアプリを使えば、予約が出来ます
  • 英語で会話が出来るようになりました。

【例2:ひらがな表記】〇

  • このアプリを使えば、予約ができます
  • 英語で会話ができるようになりました。

読み比べてみると、ひらがな表記の方が自然でスムーズに読めると感じる方が多いはずです。特にWeb文章や報告書などでは、「読みやすさ」が非常に重要です。

他の動詞も同様にひらがなが基本

このルールは「できる」だけでなく、他の動詞にも当てはまります。

  • 「行う」→ ×行なう、○おこなう(※ここは例外も多いため注意)
  • 「分かる」→ 公文書では「わかる」が基本

つまり、「できる」はその中の一つというわけです。

小説・文学作品では漢字が使われることも

一方で、創作作品や古風な文体を用いる場面では、動詞であってもあえて漢字の「出来る」を使う場合があります。これは文体の選択であり、ルール違反ではありません。ただし、一般的な文書では避けるのが無難です。

名詞の「出来」は漢字

パソコン

これまで「できる」は基本的にひらがなで表記することが望ましいとお伝えしてきましたが、名詞として使う場合は「出来」と漢字で書くのが一般的です。ここが「できる/出来る」の使い分けにおいて、重要なポイントの一つです。

名詞としての「出来」の意味

「出来」は、ある物事の完成・成果・結果などを指す名詞です。動詞ではなく名詞として機能するため、漢字で表記しても読みやすさが損なわれず、むしろ意味が明確になります

【例文】

  • この商品の出来は非常に良い。
  • 作品の出来に満足していない。
  • 今回の試験の出来はいまいちだった。

このように、「出来」は「結果」や「完成度」を表す言葉として使われます。

「でき」とひらがなで書かない理由

ひらがなの「でき」は、どうしても動詞としての「できる」に見えるため、文脈上の混乱が起こる可能性があります。たとえば、

  • この作品のできはいまいちだった。

と書くと、動詞の「できる」と混同されて、読者が文の意味を一瞬考え直さなければならなくなることも。そのため、名詞として使う場合は「出来」と漢字で表記するのが自然で明快です。

「出来」を使った複合語は漢字

本

名詞の「出来」が漢字で表記されることは前章で説明しましたが、それに関連して重要なのが、「出来」を含む複合語も漢字で表記するのが一般的という点です。

よく使われる「出来」の複合語

「出来」という語は、さまざまな言葉と組み合わさって、複合語として日常的によく使われています。以下はその一部です。

複合語意味
出来事(できごと)起こった事象・事件
出来栄え(できばえ)出来上がりの程度・品質
出来高(できだか)実際に出来た量や売上などの成果
出来心(できごころ)一時的な気の迷いで悪事に走る気持ち
出来合い(できあい)あらかじめ作られていること、即席のもの

これらの言葉はすべて「名詞の“出来”が含まれている」ため、漢字で表記するのが一般的かつ自然です。

ひらがな表記にしない理由

たとえば「できごと」「できばえ」などをひらがなで表記すると、幼児向けの絵本や特別な意図がある文章でない限り、かえって読みづらく、子どもっぽい印象を与えることがあります。

また、ひらがなで書くと単語としてのまとまりが分かりにくくなり、読者に意味を伝えにくくなる場合もあります。特に「できだか」や「できあい」などは、文脈がなければ誤読される可能性もあるため、漢字で表記する方が安全です。

公用文は「出来る」と「できる」で使い分ける

図書館

公用文(=官公庁や自治体などが発行する公式文書)では、表記の一貫性と読みやすさを重視して、「出来る」と「できる」を明確に使い分けるルールが定められています。


基本ルール:活用語はひらがな、名詞は漢字

公用文での「できる/出来る」の使い分けは、以下のように整理されています。

使い方表記解説
動詞(活用語)としての「できる」ひらがな(できる「〜することができる」「〜ができた」など、活用する語はすべてひらがな。
名詞としての「出来」漢字(出来「商品の出来が良い」「作品の出来」など、名詞的な使い方は漢字で表記。

このルールは、公文書だけでなく、自治体の広報誌、教育機関の通知文、官公庁の公式発表など、広く適用されています。


実際の公用文例

✔ ひらがな表記(動詞の場合)

  • この制度は誰でも利用することができます
  • アカウント登録後にサービスの利用ができるようになります。

✔ 漢字表記(名詞の場合)

  • 新製品の出来に関するフィードバックをお願いします。
  • 本件の処理出来について報告してください。

一般文書でも応用できる

このルールは公用文だけでなく、一般のビジネス文書やメール、社内報告書などでも応用できます。読みやすく、かつ相手に誤解を与えにくい表記を心がけることで、文章全体の信頼感も高まります。

まとめ

本とノート

「できる」と「出来る」は、意味としては同じですが、使い方や表記の場面に応じて正しく使い分けることが大切です。

以下に、本記事のポイントを簡潔に整理します。


基本ルールのまとめ

用途表記ポイント
動詞(活用する語)ひらがな「できる」公文書・論文・履歴書など、正式な文書では特に重要。読みやすく親しみやすい。
名詞(完成・成果)漢字「出来」「商品の出来」「作品の出来」など、意味の明確さと視認性を優先。
複合語(名詞由来)漢字「出来〜」「出来事」「出来高」「出来栄え」など、一般的にすべて漢字表記。

実践アドバイス

  • 公文書や履歴書では**迷ったら「できる」**を選ぶのが無難。
  • 名詞や複合語としての使用では、**漢字の「出来」**を使うと正確で読みやすい。
  • 文体や媒体(Web/紙/ビジネス文書など)に応じて、適切な表記を選ぶことが、伝わる文章への第一歩です。

「できる」と「出来る」を正しく使い分けることで、文章の信頼性や読みやすさが格段にアップします。日々のメールや資料作成、論文執筆など、さまざまな場面で活かしてみてください。