朝ドラ「ばけばけ」なぜヘブンの目が白い?16歳で失明した理由

2025年の朝ドラ「ばけばけ」は、明治時代を舞台にしたユニークな作品です。物語の主人公はトキという女性ですが、その夫・ヘブンも視聴者の注目を集めています。特に「ヘブンの目が白いのはなぜ?」「どうして失明しているの?」と気になった方も多いのではないでしょうか。
実はこの設定には、きちんとした史実の裏付けがあります。ヘブンのモデルとなっているのは、日本の文化や怪談を西洋に紹介した作家 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)。彼は16歳のときに大きな事故に遭い、その結果、左目を失明してしまいました。その後、彼の目は白く濁り、生涯にわたってコンプレックスとなっていたといわれています。
本記事では、ヘブンの目が白い理由やその背景にある小泉八雲の人生、さらに俳優トミー・バストウさんの役作りについても詳しくご紹介します。
目次
ばけばけ「ヘブン」の目が白い理由
朝ドラ「ばけばけ」に登場するトキの夫・ヘブンは、片方の目が白く濁っているのが特徴です。この姿は、史実をもとにした設定です。
ヘブンのモデルは小泉八雲
ヘブンのモデルとなっているのは、日本文化を深く愛し、怪談や随筆を数多く残した作家 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン) です。ギリシャに生まれ、イギリスで教育を受け、その後アメリカや日本で暮らした国際的な人物でした。
小泉八雲は16歳のときに大きな事故で左目を失い、その後ずっと白く濁った目で生きていました。ドラマではその史実を忠実に再現しているのです。
トミー・バストウさんの役作り
ヘブンを演じているのは、イギリス出身の俳優 トミー・バストウさん。普段の彼の瞳は澄んだ青色ですが、役作りのために 左目に白いカラーコンタクトを装着 しています。
そのため、視聴者からは「どうして目が白いの?」「失明したのはなぜ?」と疑問の声が上がっているのです。
こうした疑問に答えるために、次の章では 小泉八雲が16歳で左目を失明した経緯 を詳しく見ていきましょう。
校庭での悲劇
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が左目を失ったのは、まだ 16歳のとき でした。彼は当時、イギリスのダラム州にある アショウ・カレッジ(St. Cuthbert’s College, Ushaw) というカトリック系の寄宿学校に通っていました。勉強だけでなく、寄宿生同士で遊びや運動に励む日々を過ごしていたといいます。
ある日、友人と一緒に校庭の遊具で遊んでいたときに悲劇が起こります。その遊具は 「ジャイアンツ・ストライド(Giants’ Stride)」 と呼ばれるもので、当時の学校や公園では珍しくありませんでした。
遊び方は単純で、中心の柱に取り付けられた長いロープを握り、走り出すと遠心力でぐるぐると回る仕組みです。まるで空を飛んでいるような感覚が味わえることから、生徒たちに人気がありました。
しかし、その日は運悪く、勢いよく飛んできたロープの先が八雲の 左目に直撃 してしまったのです。瞬間的に強烈な衝撃を受け、目の内部に深刻な損傷を負いました。
八雲はすぐに病院へ運ばれ、長期間の入院をしましたが、残念ながら 視力を取り戻すことはできませんでした。この事故をきっかけに、彼の左目は生涯にわたって白く濁ったままとなったのです。
ジャイアンツ・ストライドとは?

小泉八雲の人生を大きく変えた事故の背景にあるのが、当時の学校や公園で広く使われていた遊具 「ジャイアンツ・ストライド(Giants’ Stride)」 です。
遊具の仕組み
ジャイアンツ・ストライドは、地面に固定された 高い柱 を中心にして、その上部から 長いロープ が何本も垂れ下がっている構造をしていました。遊び方は単純で、子どもたちがロープを握りしめて走り出すと、遠心力で体が外側に引っ張られ、まるで空を飛んでいるかのようにグルグルと回転します。
人気の理由と危険性
19世紀から20世紀前半にかけて、欧米の学校や公共の公園に設置されることが多く、子どもたちにとってはスリル満点の人気遊具でした。しかし一方で、ロープの衝突や転落事故が相次ぎ、常に危険と隣り合わせでもありました。
消えていくことに
その危険性の高さから、20世紀半ば以降にはほとんど姿を消し、「昔の危険な遊具」の代表格として語られる存在になっています。小泉八雲が負傷したのも、まさにその危険性が招いた事故の一例だったのです。
白い目がコンプレックスに
左目を失明した小泉八雲は、その後の人生において大きな劣等感を抱えることになりました。事故で損傷した眼球は、視力を失っただけでなく、時間が経つにつれて 白く濁った状態 になっていったのです。
外傷性白内障の可能性
医学的には、強い衝撃によって水晶体が損傷し、濁ってしまう症状を 外傷性白内障 と呼びます。当時の医療技術では有効な治療が難しく、八雲は生涯その白い目を隠すこともできずに過ごしました。
醜いと思い込んだ青年期
八雲自身、「自分の目は恐ろしく醜くなってしまった」と強く気にしていたと伝えられています。鏡を見るのもつらく、また人前に出るのを避けるようになったともいわれます。そのため、思春期に本来育まれるはずの社交性が失われ、次第に 内気で暗い性格 へと変化していったのです。
対人関係への影響
特に異性に対しては引け目を感じやすく、恋愛や交流に消極的だったと伝わっています。この劣等感は後年まで尾を引き、八雲の作品の中にも「孤独」や「人から理解されない存在」といったテーマが頻繁に登場する背景になったと考えられます。
ヘブン役「トミー・バストウ」の役作り
朝ドラ「ばけばけ」でヘブンを演じているのは、イギリス出身の俳優 トミー・バストウさん です。彼は普段、澄んだ青い瞳を持っていますが、ドラマでは片目だけが白く濁った姿を見せています。
史実を反映した表現
この白い目は単なる演出ではなく、ヘブンのモデルである 小泉八雲が実際に左目を失明していた 史実を忠実に再現したものです。視聴者が違和感なく受け止められるよう、細部にまで配慮された演出といえるでしょう。
役作りの工夫
トミー・バストウさんはおそらく 特製の白いカラーコンタクトレンズ を使用しており、それによって「視力を失った目」の質感をリアルに表現しています。瞳の色を変えるだけでなく、光の反射具合まで考慮されており、カメラに映った際に自然に見えるよう工夫されているのです。
俳優としての挑戦
片目の表情が制限されることで演技は難しくなりますが、そのハンディキャップを逆に利用し、静かな存在感と内面の深さを感じさせる役作りに成功しています。まさに「史実を生かしたリアルな演技」といえるでしょう。
小泉八雲の左目失明後
16歳で左目を失った小泉八雲の人生は、それまでとは大きく変わっていきました。失明は彼の内面や表現活動に影響を与え、その後の作家人生の基盤となったともいえます。
見るから聴くへ
片目を失ったことで、八雲は視覚的な情報よりも 聴覚や感覚的な世界 に強く意識を向けるようになりました。音や声に敏感になり、静かな環境で耳を澄ませることを好むようになったといわれます。こうした感性の変化は、後の作品に大きな影響を与えました。
「耳なし芳一」への共鳴
代表的な怪談のひとつ 「耳なし芳一」 は、琵琶法師という盲目の芸能者が主人公です。目の見えない人物の世界をリアルに描けたのは、八雲自身が「見えない苦しみ」を知っていたからでしょう。失明の経験が、登場人物の心理や感覚の描写に深みをもたらしたのです。
ヘブンのモデル小泉八雲の生涯
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、失明という大きな試練を抱えながらも、日本文化を世界に伝える偉大な作家となりました。その生涯は波乱に満ち、同時に人との出会いによって彩られたものでもあります。
波乱に満ちた前半生:失明、そして流浪の旅へ
1850年、ギリシャで生まれた八雲は、幼い頃に母と離別し、のちにイギリスへ渡ります。寄宿学校での事故によって左目を失明した後、経済的にも不安定な暮らしを強いられました。やがてアメリカに渡り、新聞記者として働きながら執筆活動を始めますが、常に異郷の地で孤独と闘う日々でした。
運命の出会い、妻セツとの絆:怪談を生んだ夫婦の物語
1890年、来日した八雲は島根県で出会った 小泉セツ と結婚します。セツは武士の娘で、伝統的な日本文化や民話に精通していました。彼女の語る怪談や風習が、八雲の作品に直接的な影響を与え、やがて名作『怪談』が生まれることになります。セツは八雲にとって、精神的にも創作面でも大きな支えでした。
代表作『怪談』から見える日本文化への深い愛
八雲の代表作『怪談』は、幽霊譚や民間伝承を題材にしながらも、単なる恐怖ではなく「人間の情」「無常観」「自然と人との関わり」といった日本的な思想を深く描いています。彼は外国人でありながら、日本人以上に日本文化を理解し、愛した存在といえるでしょう。
日本に帰化、そして生涯を閉じるまで
八雲はやがて日本に帰化し、「小泉八雲」と名を改めます。東京帝国大学(現在の東京大学)や早稲田大学で英文学を教え、多くの学生に影響を与えました。1904年、54歳で心不全により急逝します。
小泉八雲の残した言葉
「美しいものを愛し、弱いものに優しく、見えないものを大切にせよ」という言葉が八雲の言葉として語り継がれています。ただし、文献的に確かな記録はなく、後世に広まった逸話の可能性が高いとされています。それでも、この言葉は彼の生き方や作品世界を象徴しており、多くの人の心に残っています。
よくある質問
Q1. なぜヘブンの左目だけが白いのですか?
ヘブンのモデルである小泉八雲は、16歳のときに遊具の事故で左目を失明しました。その後、外傷性白内障の影響で目が白く濁ってしまったため、ドラマでも史実を忠実に再現しているのです。
Q2. 朝ドラ「ばけばけ」は史実通りに描かれているのですか?
ドラマは史実をベースにしていますが、登場人物の心情やエピソードにはフィクションも加えられています。特に人間関係やドラマ的な展開は創作要素が強いですが、ヘブンの「白い目」については実際の史実が反映されています。
Q3. 小泉八雲は日本でどんな仕事をしていたのですか?
来日後、八雲は英語教師として松江や熊本で教壇に立ち、その後は東京帝国大学(現・東京大学)でも英文学を指導しました。同時に作家としても活動し、日本の怪談や民話を集めて出版しました。その代表作が『怪談』で、日本文化を世界に紹介する大きな役割を果たしました。
まとめ
朝ドラ「ばけばけ」に登場するヘブンの白い目は、単なる演出ではなく、モデルとなった小泉八雲の実体験に基づいています。16歳のときに遊具の事故で左目を失明し、その後、外傷性白内障によって白く濁ってしまったのです。この出来事は彼の人生に深い影を落とし、内気で孤独な性格へと導きましたが、同時に「見えない世界」への感受性を育むきっかけにもなりました。
俳優のトミー・バストウさんは、カラーコンタクトを用いて八雲の姿を忠実に再現し、役に深みを与えています。そのリアルな演技によって、視聴者はヘブンの内面や生き様により強く共感できるのではないでしょうか。
小泉八雲は、日本文化を深く理解し、怪談や随筆を通して後世に残しました。白い目というコンプレックスを抱えながらも、それを乗り越えて文学的な才能を開花させた姿は、多くの人に勇気を与えてくれます。
ドラマ「ばけばけ」のヘブンを見るとき、その背後にある小泉八雲の波乱に満ちた人生を思い浮かべると、物語がさらに奥深く感じられることでしょう。