たまるか、たっすいがの意味は?朝ドラ「あんぱん」土佐弁【一覧】

よさこい祭り

2025年前期のNHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』は、物語の面白さもさることながら、劇中で使われる独特な言葉――「土佐弁」でも話題を呼んでいます。舞台となっている高知県で話されるこの方言は、言葉の響きが強く、情熱や人情がストレートに伝わってくるのが大きな特徴です。

「たまるか」「たっすいが」など、聞き慣れないけれど印象に残るフレーズがたびたび登場し、SNSでも「この言葉どういう意味?」「土佐弁かっこいい!」「土佐弁かわいい!」と注目が集まっています。登場人物の感情や性格が言葉づかいににじみ出るため、土佐弁を知れば知るほど、ドラマの世界観がより深く味わえるのです。

また、土佐弁は高知県全域で使われるわけではなく、地域によって語彙やイントネーションにも違いがあります。しかし、共通して言えるのは、「土佐人らしさ」を表すのにぴったりな言葉が多く含まれているという点です。頑固さ、素直さ、あたたかさ――そんな人間味を表現する言葉が揃っているからこそ、方言がドラマの演出に生きてくるのでしょう。

本記事では、『あんぱん』に登場する土佐弁を一覧で紹介し、その意味や使い方を解説していきます。言葉の背景を知ることで、ドラマのセリフがもっと楽しく、もっと深く感じられるはずです。

ドラマに出てくる土佐弁一覧と意味

半家橋

朝ドラ『あんぱん』で登場人物たちが交わす会話の中には、標準語ではなかなか表現できない独特の言い回しや感情が詰まった土佐弁がたくさん登場します。ここでは、ドラマに出てきた代表的な土佐弁とその意味を一覧にして紹介します。


■ たまるか

意味:「絶対に許せない」「がまんできるか!」「わぁ」「まぁ」という驚きの表現
解説: 強い否定や反発を表す言葉。怒りや決意の表現として使われます。また、驚いた時にも感嘆語として使われます。例:「そんなこと、たまるか!」


■ たっすいが

意味:「情けない」「中途半端でダメだ」
解説: 物足りない、芯がないという意味で、飲み物や人に対しても使われます。例:「たっすいビールはいかんが!」


■ どういて

意味:「どうして?」「なぜ?」
解説: 理由を尋ねる際によく使われる。例:「どういて泣きゆうが?」


■ どればあ

意味:「どれくらい?」「どのくらいの量や時間?」
解説: 量や程度を尋ねるときの疑問詞。例:「どればあ時間かかるが?」


■ もんてきて

意味:「帰ってきて」
解説: 「もんてくる(戻ってくる)」の命令形・依頼形。例:「はよ、もんてきてや!」


■ こじゃんと

意味:「とても」「ものすごく」
解説: 程度が非常に高いことを強調する副詞。例:「こじゃんと美味しいき、食べてみて!」


■ あて

意味:「私(女性が使う一人称)」
解説: 丁寧で控えめな言い方で、年配の女性がよく使います。例:「あて、昔は踊りゆうたがよ」


■ いごっそう

意味:「頑固者」「一本気な男」
解説: 褒め言葉としても使われる。自分の信念を貫く高知の男性像。例:「あの人は、ほんまもんのいごっそうやき」


■ うちんく

意味:「うちの家」「私の家」
解説: 「うちのところ」がなまった表現。例:「今晩、うちんくに来いや」


■ しゃんしゃん

意味:「元気よく、きびきびと」
解説: 明るく活発な様子を表現。例:「子どもらがしゃんしゃん走りゆう」


■ しわい

意味:「しつこい」「粘っこい」「かたい(食感にも)」
解説: 性格にも食べ物にも使える言葉。例:「この肉、しわいねぇ」「あの人、しわい性格やき」


■ はちきん

意味:「男勝りの元気な女性」
解説: 高知では理想の女性像ともされ、気が強くて行動力がある女性のこと。例:「あの子は、ほんまにええはちきんや」


■ おんちゃん

意味:「おじさん」「年上の男性」
解説: 子どもから大人まで使う親しみある呼び方。例:「おんちゃん、魚釣れた?」


■ にゃー

意味:「いない」「無い(否定)」
解説: 不在や否定の意味。例:「今日、先生にゃーがって」


■ ばあ

意味:「くらい(程度)」
解説: 量や時間の程度を表す。例:「そればあ飲んだら、酔うで」


■ おまん

意味:「あなた」「あんた」
解説: 親しい間柄で使う二人称。丁寧にも、やや荒っぽくも使える。例:「おまん、何しゆうが?」


■ まっこと

意味:「本当に」「まったくもって」
解説: 驚きや感心、呆れなど幅広く使われる。例:「まっこと、えい話やった」


■ ~ちゅう

意味:「~している(現在進行形)」
解説: 動詞に付けて「~している状態」を表す。例:「今、ごはん食べよっちゅう」

■ せられん

意味:「できない」「うまくいかない」
解説: 自分の力では無理だ、できそうにないといったニュアンス。例:「そんな重いもん、せられんわ」


■ なくて

意味:「いなくて」「なくて」
解説: 「ない」「いない」の方言形。例:「あの子、今日は学校におらんなくてね」


■ ちくと

意味:「少し」「ちょっと」
解説: 丁寧で優しい印象を与える語。例:「ちくと寄っていきや」


■ おぞい

意味:「怖い」「恐ろしい」
解説: 子どもから大人まで使う、「怖い」を意味する言葉。例:「おぞい夢見た」


■ ほいたら

意味:「それならば」「じゃあ」
解説: 会話の接続や、結論を促すときに使う。例:「ほいたら、また明日」


■ いらんことしい

意味:「余計なことをする人」
解説: 何でも首を突っ込んでくる人や、お節介な人を指す。例:「ほんま、あいつはイランことしいや」


■ なんちゃあ

意味:「何でもない」「どうってことない」
解説: 軽い否定や、「大したことない」というニュアンス。例:「なんちゃあ、気にせんでえい」


以上が『あんぱん』に登場した土佐弁の主な一覧です。個性的で勢いのある言葉が多く、聞いているだけでも元気をもらえそうですね。

土佐弁がもたらすドラマの魅力

高知県の桂浜

土佐弁は、単なる地方の言葉というだけでなく、その響きや語感、感情の乗せ方によって、登場人物の個性や心の奥を伝える強力な演出ツールとなっています。朝ドラ『あんぱん』では、土佐弁が効果的に使われており、視聴者に強い印象を残しています。

①感情の起伏をダイレクトに伝える

土佐弁は語尾に強さがあり、感情の起伏がそのまま音に表れます。たとえば「たまるか!」という一言には、怒りや悔しさ、どうにも抑えきれない気持ちが凝縮されています。標準語で言う「許せない!」よりも、土佐弁の方がずっと強く、心に響くのです。

また、「たっすいが」という言葉には、単なる「中途半端」という意味以上に、「そんなのは男らしくない」「なんだか情けない」というニュアンスが含まれ、言葉一つでその場の空気をがらりと変える力があります。

②キャラクターの輪郭を鮮やかに描く

土佐弁の使用は、キャラクターの性格や背景を際立たせます。たとえば、「あては、はちきんやき!」と語る女性がいれば、それだけで「気が強くて行動力のある女性像」が浮かびます。一方で、「いごっそう」と呼ばれる男性は、頑固で真っすぐな人柄がにじみ出てきます。

言葉を通じて「どういう人なのか」が自然と伝わるため、視聴者は登場人物により親近感を持ちやすくなります。

③温かさとユーモアを添える

土佐弁には、独特のユーモアと温かみもあります。「こじゃんと美味しい」や「しゃんしゃんしゆう」など、少し笑ってしまうような可愛らしい響きが、シリアスな場面でも重くなりすぎず、程よい和らぎをもたらします。

また、「おまん」「にゃー」などの言い回しは、家庭的な空気や人と人との距離の近さを感じさせ、視聴者に高知の日常や文化をリアルに伝えてくれます。

④土地と人をつなぐ「生きた言葉」

土佐弁は、その土地で暮らす人々の歴史や暮らしと密接に結びついています。そのため、方言を使うことで、単なるセリフ以上の「地域性」や「風土」がにじみ出ます。たとえば、「うちんくに寄っていきや」と言われると、言葉の背景にある人情やおもてなしの心まで感じられるのです。

『あんぱん』の中でも、土佐弁を使ったやり取りが登場人物の成長や人間関係を描く上で欠かせない要素となっており、視聴者の共感や感動を生む一因となっています。

まとめ

はりまやばし

朝ドラ『あんぱん』を通して、多くの視聴者にとって馴染みの薄かった土佐弁が全国に広まり、その力強く、温かい響きが注目を集めました。高知の言葉は、単なる方言という枠を超えて、その土地に根付いた文化や価値観、人と人との関係性までも映し出します。

「たまるか」「たっすいが」といった感情がダイレクトに伝わる言葉、「こじゃんと」「まっこと」のように感覚を豊かに表現する言葉、そして「あて」「おまん」など親しみや温もりを感じさせる表現——いずれも登場人物たちのセリフに魂を吹き込む、欠かせない要素です。

また、土佐弁を知ることで、ドラマの世界観だけでなく、高知という地域そのものに対する理解も深まります。そこに生きる人々の気質や日常、そして人情味を感じ取れるようになるのです。

ドラマを楽しむだけでなく、言葉の背景にある文化を知ることは、作品への理解をより深め、豊かな鑑賞体験につながります。ぜひこの記事で紹介した土佐弁を覚えて、『あんぱん』のセリフの一つひとつを味わってみてください。きっと、より深い感動が待っているはずです。