「しづらい」「しずらい」どっち?違いは?「しにくい」との使い分け

日本語には、よく似た音や表現が数多く存在します。その中でも、「しづらい」と「しずらい」は、多くの人が迷いやすい言葉のひとつです。どちらも「何かをするのが難しい」という意味合いで使われますが、「どっちが正しいの?」と疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
さらに、「しにくい」という言葉も似たような意味で使われるため、「しづらい」と「しにくい」の使い分けに困ることも少なくありません。たとえば、
- 「この服は動きづらい」
- 「この服は動きにくい」
どちらも聞いたことがある表現ですよね。でも、それぞれニュアンスに違いがあるんです。
本記事では、「しづらい」と「しずらい」の正しい表記や意味の違い、「しにくい」との使い分け、さらに使い方の例文や類義語まで、わかりやすく解説していきます。「正しく、美しく日本語を使いたい」と考えている方にとって、すぐに役立つ知識が満載です。ぜひ最後まで読んで、モヤモヤをスッキリ解消してくださいね!
目次
「しづらい」「しずらい」どっちが正しい?

まず結論から言うと、正しい表記は「しづらい」です。
◆「しづらい」は正しい表記
「しづらい」は、「する」+「づらい」という形から成り立っており、「〜するのが難しい」「やりにくい」といった意味で使われます。
「づらい」は、「にくい」と似た意味を持つ補助形容詞で、漢字では「辛い(つらい)」と書くこともあります。たとえば、「言いづらい」「行きづらい」など、動詞の連用形に接続して使います。
◆「しずらい」は誤った表記
一方で「しずらい」は、誤用とされる表記です。
これは「しづらい」と「しずらい」の発音が似ているために混同されやすく、口頭ではあまり違いが分からないことから、誤って「ず」を使って書いてしまうケースが多いのです。現代ではスマートフォンやパソコンの自動変換機能によって誤った表記が広まってしまう傾向もあります。
◆国語辞典や公的機関の見解
多くの国語辞典や日本語教育機関では、「しずらい」は掲載されておらず、「しづらい」が正式な表現として扱われています。
- 『広辞苑』:◯「しづらい」/✕「しずらい」は記載なし
- 『明鏡国語辞典』:◯「しづらい」=「しにくい」の意
- NHKなどの放送機関でも「しづらい」の使用を推奨
つまり、「書くとき」は必ず『しづらい』と書くのが正解ということです。
「しづらい」「しずらい」の意味

「しづらい(しずらい)」は、いずれも「何かをするのが困難である」という意味で使われます。ただし、すでに述べた通り、正しい表記は「しづらい」ですので、以下では「しづらい」の意味を中心に解説します。
◆「しづらい」の成り立ち
「しづらい」は、動詞「する」の連用形「し」+補助形容詞「づらい」で構成されています。
- 「〜づらい」=物事をするのが困難、または心理的にためらいがある状態
- 例:
- 話しづらい(話すのが難しい/話すのをためらう)
- 行きづらい(行くのが難しい/行くことに抵抗がある)
- 聞きづらい(聞くのが気まずい/遠慮したくなる)
「〜づらい」は、単に物理的な難しさだけでなく、心理的・感情的なハードルも含んでいる点が特徴です。
◆類義語との違いを意識すると意味が明確に
たとえば、「しにくい」は行動自体が物理的に難しいケースにも使えるのに対し、「しづらい」は気まずさ・遠慮・不快感といった感情的な側面が強調されます。
例:
- ✕「この靴は歩きづらい」(◯:歩きにくい)
- ◯「上司には言いづらい話だ」(心理的な抵抗)
◆誤表記「しずらい」も、意味は通じる?
「しずらい」という表記自体は誤用ですが、話し言葉では「しづらい」と同様の意味で使われることが多く、相手に意味が伝わるケースも多いです。ただし、書き言葉では誤りであるため、避けるのが無難です。
「しづらい」「しずらい」の違い

「しづらい」と「しずらい」は、発音上は非常に似ていますが、意味や用法には違いがないものの、表記としての正誤の違いが大きなポイントです。
◆意味の違いはない
まず確認しておきたいのは、「しづらい」も「しずらい」も意味は同じということです。どちらも「〜するのが困難」「〜しにくい」といった意味合いで使われています。
例:
- 「本音を話しづらい」=「本音を話すのが難しい(心理的に)」
- 「説明しづらい内容だ」=「うまく説明するのが難しい」
この点では、意味において差異はありません。
◆違いは「表記の正誤」
大きな違いは、「しづらい」が正しい表記であり、「しずらい」は誤用であるという点です。
理由①:歴史的仮名遣いの影響
日本語では「づ」と「ず」は、発音が似ていても使い分けが必要な文字です。これは「づ(ぢ)」と「ず(じ)」の使い分け問題とも関係があります。
- 正:鼻血(はなぢ)、続く(つづく)、しづらい
- 誤:鼻じ、つずく、しずらい
このように、「しづらい」は動詞「する」に「づらい」が付いた形で、「づ」は助動詞「づらい」の正しい仮名遣いです。
理由②:国語表記ルールに基づく区別
文部科学省の「現代仮名遣い」でも、「づ」と「ず」は語源や語構成に基づいて使い分けることが推奨されています。
◆混乱の原因:「音」と「見た目」
現代日本語では、「ず」と「づ」の発音がほぼ同じ(※東京方言では区別しない)ため、聞き間違いや書き間違いが非常に起こりやすくなっています。
また、PCやスマートフォンで入力する際に、「しずらい」と入力しても変換候補に「しづらい」が出てくるため、気づかずに間違ったまま使ってしまう人も多いのです。
◆ビジネスや公的な文章では特に注意
日常会話ではあまり問題になりませんが、メールや資料、公式文書などでは「しずらい」は誤りとして見られます。正確な日本語を使いたい場合は、「しづらい」を選びましょう。
「しづらい」「しずらい」NHKでは

「しづらい」と「しずらい」のどちらが正しいかについて、信頼できる基準のひとつがNHKのガイドラインです。NHKでは、放送で使用する日本語に明確なルールを設けており、「NHKことばのハンドブック」では「しづらい」が正用とされています。
この表記は、「辛い(つらい)」に由来する「〜づらい」という補助形容詞の語源を踏まえたものであり、「やりづらい」「言いづらい」などと同様に、「づ」が正しい形とされます。
一方、「しずらい」はNHKの放送原稿では使用されず、誤用として扱われています。放送や出版、教育といった言葉を扱う場では、言葉の正確性が重視されるため、NHKの基準に従うことは非常に有用です。
公的な文章や正しい日本語を意識したい場面では、「しづらい」という表記を選ぶのが適切です。
「しずらい」が誤用される理由

「しずらい」という表記は、日常的に見かけることもありますが、前章までに述べたように正式には誤用です。では、なぜこれほど多くの人が「しずらい」と書いてしまうのでしょうか?
ここでは、その主な原因について詳しく解説します。
理由①:発音上の違いがわかりにくい
現代日本語の多くの方言(特に標準語)では、「ず」と「づ」の発音がほぼ同じ、あるいは完全に同一です。
例:
- 「続く(つづく)」と「図(ず)」は、どちらも「ズ」と発音される
- 「はなぢ」と「はなじ」も、発音上の区別がない地域が多い
このように、聞こえ方に差がないため、表記の違いに気づきにくいのです。
理由②:誤表記でも変換できてしまう
パソコンやスマートフォンで「しずらい」と入力しても、自動変換で「しづらい」が候補に出ることがあります。このとき、「あっているのかな?」と曖昧なまま変換を確定してしまう人も少なくありません。
また、誤って「しずらい」と変換してしまったままSNSやブログ、メールなどに投稿し、その表記が他人に伝播するというケースもあります。
理由③:「ず」を使う単語が多いための影響
「ず」を使った動詞や表現は日本語に非常に多く存在します。例として:
- 「気まずい」
- 「片付ける」
- 「やりづらい」→「やりずらい」と混同しやすい(「やりづらい」が正解)
こうした他の単語の影響で、「『ず』のほうが自然に思える」という感覚が働いてしまい、誤用が定着してしまうこともあります。
理由④:学校教育での明確な指導が少ない
「づ」と「ず」の使い分けについては、小学校や中学校で習うものの、他の文法事項に比べて重視されにくい傾向があります。そのため、大人になってからあいまいなまま使い続けてしまう人も多いのが実情です。
「しづらい」を使った例文

「しづらい」は、心理的・感情的に何かをするのが難しいときに使われる表現です。ここでは、日常生活・ビジネス・人間関係など、さまざまなシーンで使える例文をご紹介します。
◆日常会話での例文
- この靴、ちょっと歩きづらいね。
→(靴の形やフィット感が悪くて歩きにくい) - この映画、子どもとは一緒に見づらいかも。
→(内容が子どもに不適切で、気まずい) - 急に話しかけられて、返事しづらい雰囲気だった。
→(空気が悪くて話しにくい)
◆ビジネスシーンでの例文
- 上司には少し言いづらい内容ですが、報告しなければなりません。
→(立場や関係性のために、話すのが気まずい) - 会議の空気がピリピリしていて、発言しづらいです。
→(心理的なプレッシャーで発言しにくい) - このレイアウトでは、ファイルが探しづらいですね。
→(構造や整理の問題で、見つけにくい)
◆人間関係に関わる例文
- 彼女には本音が言いづらい。
→(相手との関係性が影響して、遠慮してしまう) - 初対面の人にこういう話はちょっとしづらいよね。
→(距離感が近くない相手に話すのはためらわれる) - 相手が落ち込んでいると、慰めの言葉もかけづらい。
→(気を使ってしまい、声をかけにくい)
これらの例文からわかるように、「しづらい」は気持ち・人間関係・雰囲気など、感情的要素を含んだ困難さを表すときに最も自然に使われます。「動作の難しさ」よりも「気持ちのしにくさ」を伝えたいときに使うのがポイントです。
「しづらい」の類義語・関連語
「しづらい」という言葉には、似た意味を持つ言葉がいくつか存在します。それぞれ微妙にニュアンスが異なるため、使い分けを意識することで表現の幅が広がります。
類義語 | 意味 | 「しづらい」との違い |
---|---|---|
しにくい | 行動をするのが難しい | より一般的・物理的な困難にも使える |
やりにくい | 行動や作業がやりづらい | 実務や操作に関する場面でよく使う |
言いにくい | 言葉にしにくい | 「言いづらい」とほぼ同義だが、やや口語的 |
気まずい | 心理的に居心地が悪い | 「しづらい」の背景にある感情をより強調 |
ためらわれる | 躊躇する気持ちがある | 行動の決断に迷いがあることを強調 |
遠慮する | 控えめにする | 相手に配慮して行動を控えるときに使う |
「しづらい」は幅広い場面で使える便利な表現ですが、状況に応じて類義語を使い分けることで、より具体的で伝わりやすい表現が可能になります。たとえば、実際の作業や操作性については「やりにくい」が自然で、「このソフトは操作がやりにくい」のように使われます。
一方で、感情面に焦点を当てたい場合は、「気まずい」「ためらわれる」「遠慮する」などの言葉が適しています。「発言しづらい」は雰囲気や対人関係の気まずさを含む場合が多く、「ためらわれる」や「遠慮する」は相手を思いやる気持ちを含んだ控えめな態度を表します。
このように、「しづらい」に限らず、類義語を適切に選ぶことで、自分の感じている状況や心理状態をより的確に表現できるようになります。文脈に合わせて柔軟に言葉を選ぶことが、伝わる日本語表現のコツです。
「しにくい」の意味

「しにくい」は、「〜するのが難しい、困難だ」という意味で使われる、非常に一般的な日本語表現です。「しづらい」とよく似た意味を持ちますが、使われる場面やニュアンスには違いがあります。
◆「しにくい」の構造
「しにくい」は、動詞「する」の連用形「し」+補助形容詞「にくい」で構成されます。
- 「にくい」は、もともと「難い(かたい)」という意味があり、「〜しにくい」で「〜するのが難しい」という意味になります。
例:
- この機械は操作しにくい → 操作が難しい(物理的・機能的な問題)
- 子どもには理解しにくい話だ → 内容が難しい(知識や経験が足りないため)
◆「にくい」は漢字で書くと?
「にくい」は文脈によって、以下のように漢字を使い分けることもあります。
表記 | 意味 | 例 |
---|---|---|
難い(にくい) | 実行が難しい | 理解し難い、使い難い |
ただし、日常的な文章では「〜にくい」はひらがな表記が一般的です。特に、「しにくい」はひらがなで書くことで読みやすく、親しみやすくなります。
◆使われる場面の幅広さ
「しにくい」は、心理的な困難だけでなく、物理的・技術的な難しさ、環境的な条件の悪さなど、非常に広範な意味で使われるのが特徴です。
例:
- 雨の日は自転車が乗りにくい(物理的困難)
- このデザインは使いにくい(機能性の問題)
- 相手が感情的だと話し合いしにくい(心理的な難しさ)
「しにくい」は、あらゆる動作に対して使える汎用性の高い表現です。物理的に困難な場合や、技術的に扱いづらい状況、さらには心理的にためらいがある場面など、幅広い意味で柔軟に使うことができます。また、「しにくい」はひらがな表記が基本となっており、文章中でも読みやすく、フォーマル・カジュアルを問わず使いやすい点も魅力です。
「しづらい」と「しにくい」の違い

「しづらい」と「しにくい」は、どちらも「〜するのが困難だ」という意味を持ち、似たような場面で使われます。しかし、ニュアンスや使われるシーンには明確な違いがあります。ここでは、それぞれの違いを分かりやすく比較して解説します。
◆意味の共通点
まず前提として、「しづらい」も「しにくい」も、「〜しにくいこと」「〜が困難であること」を表す点では共通しています。
表現 | 共通する基本意味 |
---|---|
しづらい | 〜するのが困難である |
しにくい | 〜するのが難しい |
◆大きな違い:心理的 vs 物理的
項目 | しづらい | しにくい |
---|---|---|
ニュアンス | 心理的・感情的な抵抗 | 物理的・客観的な難しさ |
使う場面 | 人間関係、空気を読む、ためらい | 操作、状況、構造の問題 |
主観性 | 高い(感情が関係) | やや客観的(状態・構造が関係) |
◆具体例で比較
文脈 | しづらい | しにくい |
---|---|---|
上司への指摘 | 上司にはちょっと言いづらい(心理的) | ✕ 言いにくい(違和感あり) |
タッチパネルが反応しない | ✕ 操作しづらい(心理的な問題ではない) | 操作しにくい(物理的に難しい) |
会議での発言 | 発言しづらい雰囲気(空気的な抵抗) | ✕ 発言しにくい雰囲気(やや不自然) |
小さな文字の読書 | ✕ 読みづらい(視覚的な問題) | 読みにくい(適切) |
◆ニュアンスの違いを感覚的に覚えるヒント
- 「しづらい」=心がつまずく
- 言いづらい、頼みづらい、入りづらい
- 「しにくい」=体がつまずく
- 開けにくい、使いにくい、歩きにくい
◆どちらを使うか迷ったときは?
- 感情が絡む場面、人間関係が関係するなら → しづらい
- 物の構造、環境、機能的な問題なら → しにくい
これを意識すると、迷いなく使い分けられるようになります。
「しづらい」と「しにくい」の使い分け・例文

前章では「しづらい」と「しにくい」の意味とニュアンスの違いを解説しました。
この章では、それぞれを実際の例文で比較しながら、使い分けのコツを身につけましょう。
◆比較しながら学ぶ使い分け例
1. 【対人関係】
- ❌ 上司にこの話は言いにくい。
- ✅ 上司にこの話は言いづらい。
→「心理的にためらいがある」→しづらいが適切。
2. 【操作性・構造】
- ✅ このボタン、小さくて押しにくい。
- ❌ このボタン、小さくて押しづらい。
→「物理的に押しにくい」→しにくいが自然。
3. 【雰囲気・空気】
- ✅ この空気じゃ、発言しづらいよ…。
- ❌ この空気じゃ、発言しにくいよ…。
→「場の空気・雰囲気」が障壁 →しづらい
4. 【内容の難しさ】
- ✅ この本は専門用語が多くて読みにくい。
- ✅ この本は内容が重くて読みづらい。
→ 単語や構造の難しさ → しにくい
→ 心理的に読みたくない、重さがある → しづらい
5. 【道の歩きにくさ】
- ✅ 雪が積もっていて歩きにくい。
- ❌ 雪が積もっていて歩きづらい。
→「環境による困難」→しにくい
◆一文でニュアンスを変える例
「彼にはちょっと相談しにくいな。」
→ 単に距離がある、機会がない
「彼にはちょっと相談しづらいな。」
→ 人間関係に気まずさや心理的ブレーキがある
同じ動詞でも、使う補助語によって受け手に伝わる印象が大きく変わります。
まとめ
「しづらい」と「しずらい」は発音が似ているため混同されがちですが、正しい表記は「しづらい」です。「しずらい」は誤用であり、NHKをはじめ多くの辞書や公的文書でも使用されていません。
また、「しづらい」と「しにくい」には微妙なニュアンスの違いがあります。「しづらい」は心理的・感情的な抵抗や気まずさを表す場面で使い、「しにくい」は物理的・技術的な困難を含むより広範な意味を持つ表現です。使い分けに迷ったときは、気持ちや空気が関係するなら「しづらい」、行動や機能に問題があるなら「しにくい」を選ぶとよいでしょう。
正確な言葉づかいを心がけることは、伝えたい意図を正確に伝えるための第一歩です。この機会に、正しい表記と適切な使い分けを身につけておきましょう。