ひな祭りの歴史とは?本当の意味と始まった理由を解説

ひな祭り

ひな祭りの歴史とは?

ひな祭りは、現代では「女の子の成長と幸せを願う日」として親しまれています。しかし、その起源をたどると、日本独自の文化だけでなく、古代中国の風習にまでさかのぼることができます。本章では、ひな祭りの歴史について詳しく解説します。


ひな祭りのルーツは中国の「上巳(じょうし)の節句」

ひな祭りの起源は、古代中国における「上巳の節句(じょうしのせっく)」に由来します。上巳の節句とは、旧暦の3月の最初の巳(み)の日に、川で身を清めて厄を払う行事のことです。この時代、人々は「水には清めの力がある」と信じており、春の訪れとともに川で身体を洗い、身を清めることで災厄を払おうとしました。

特に3月は、寒い冬が終わり、気温が上昇して病気が流行しやすくなる季節でした。当時の人々は、「病気は邪気(悪い気)によって引き起こされる」と考えており、邪気を払うための行事として、上巳の日に川で身体を清める習慣が広まったのです。

また、中国ではこの日に「祓禊(ふつけい)」という風習がありました。これは、川辺で体を洗い、罪や穢れを流す儀式のことです。こうした禊の文化が発展し、やがて人形(ひとがた)を作り、それに自身の厄を移して川に流す「流し雛」の原型となる習慣が生まれました。

この風習が日本に伝わったのは、奈良時代(8世紀ごろ)とされています。当時の日本では、中国から伝わった文化が貴族社会の間で広がっており、特に「穢れ(けがれ)」を落として健康を願う行事として取り入れられました。

平安時代に「ひな遊び」と結びつく

平安時代(794年~1185年)には、貴族の子どもたちの間で「ひいな遊び(お人形遊び)」が流行しました。「ひいな(雛)」とは、小さくてかわいらしいものを指す言葉です。

この「ひいな遊び」「上巳の節句」が結びつき、「紙や草で作った人形(形代)に自分の厄を移し、川に流す」という風習が生まれました。この風習が、現在でも一部地域で行われている「流し雛」の起源です。

鎌倉・室町時代に武士階級へ広がる

鎌倉時代(1185年~1333年)に入ると、貴族文化が武士階級にも広がり、ひな祭りも武家社会で行われるようになりました。

室町時代(1336年~1573年)になると、ひな人形がより精巧に作られるようになり、川に流すのではなく、家の中で飾る習慣が生まれました。この時期から、ひな人形は「お守り」としての意味合いが強くなっていきます。

江戸時代に庶民の間にも広まる

江戸時代(1603年~1868年)になると、五節句の一つとして「桃の節句」が正式に制定されました。五節句とは、人日(1月7日)、上巳(3月3日)、端午(5月5日)、七夕(7月7日)、重陽(9月9日)の5つの伝統行事のことです。

幕府の政策もあり、ひな祭りは武家社会だけでなく庶民の間にも広がりました。また、豪華なひな人形が作られるようになり、現在のような「ひな壇に人形を飾るスタイル」が定着しました。

このように、ひな祭りは長い歴史の中で少しずつ形を変えながら、日本独自の文化として発展してきました。

ひな祭りの本当の意味とは?

ひな人形

ひな祭りは「女の子の健やかな成長を願う行事」として広く知られていますが、その本当の意味は、単なるお祝いではなく、「厄払い」の要素が強いものです。

もともと、ひな祭りの起源である「上巳の節句」は、中国で邪気を払い、健康を願うための行事でした。日本でも、川や海で身を清めて厄を払う風習があり、平安時代には「形代(かたしろ)」と呼ばれる紙や草で作った人形に自身の災厄を移し、それを川に流すことで厄を祓う「流し雛」の習慣が生まれました。この風習は、現在でも一部の地域で受け継がれています。

江戸時代に入ると、ひな人形は川に流すものではなく、家の中に飾るものへと変化しました。これは、「人形が厄を引き受けてくれる」という信仰が広まり、ひな人形が子どもを守るお守りのような役割を果たすようになったためです。特に、赤ちゃんや幼い子どもは病気や災厄に遭いやすいため、ひな人形を飾ることで「身代わり」として厄を遠ざける意味が込められました。

また、ひな祭りが「桃の節句」と呼ばれるのは、「桃の花」が持つ特別な意味によるものです。中国では、桃の木には魔除けの力があるとされ、古くから儀式や占いに使われてきました。さらに、桃の花は3月頃に咲くため、春の訪れを象徴する花として、ひな祭りと結びついたのです。

このように、ひな祭りは「厄払い」「お守り」の意味を持つ伝統的な行事であり、単なるお祝いではなく、子どもを守るための大切な文化として受け継がれてきたのです。


ひな祭りが始まった理由とは?

平安神宮

ひな祭りが始まった理由は、平安時代の「ひいな遊び」と厄払いの「流し雛」が結びついたことにあります。

平安時代の貴族の子どもたちの間では、「ひいな遊び」と呼ばれる人形遊びが盛んに行われていました。紙や布で作った小さな人形を使い、宮廷生活を模倣するこの遊びは、貴族の子女の間で広く親しまれていました。一方で、厄払いの風習として、紙の人形に自身の厄を移し、それを川に流す「流し雛」が行われていました。やがて、この二つの文化が融合し、ひな祭りの原型が誕生しました。

江戸時代に入ると、幕府が3月3日を「五節句」の一つである「桃の節句」として定めたことで、ひな祭りは武士や庶民の間にも広まりました。この頃から、技術の発展により豪華なひな人形が作られるようになり、「ひな壇に人形を飾るスタイル」が確立されていきます。

もともと「流し雛」として川に流していた人形は、江戸時代以降は家の中に飾るものへと変化しました。これは、単に技術の向上によって立派なひな人形が作られるようになっただけでなく、「人形を飾ることで厄を引き受けてもらう」という信仰が強まったことも影響しています。こうして、ひな祭りは「子どもの厄除けの儀式」として「ひな人形を飾る文化」へと変化し、現代に受け継がれるようになりました。


ひな祭りの文化と風習

ひな祭りには、さまざまな風習や食べ物の文化があります。本章では、代表的なものを紹介します。


ひな人形の種類と飾り方

ひな人形7段飾り

ひな人形は、時代とともにさまざまな形が生まれました。

  • 親王飾り(しんのうかざり):天皇・皇后を模した男女一対の人形
  • 七段飾り:最も豪華なひな壇で、親王・三人官女・五人囃子などの人形を飾る

一般的に、ひな祭りの数週間前から飾り、3月3日が終わったらすぐに片付けるのが良いとされています。「片付けが遅れると婚期が遅れる」という言い伝えもありますが、これは迷信です。


ひな祭りの伝統的な食べ物

ひな祭り食べ物

ひな祭りには、特定の食べ物を食べる風習があります。

  • ちらし寿司:彩り豊かで縁起が良いとされる
  • ひなあられ:色とりどりのあられで、四季を表すと言われる
  • 白酒(しろざけ):桃の節句に飲まれる甘いお酒(子どもは甘酒を飲むことが多い)

これらの食べ物には、健康や幸福を願う意味が込められています。


子どもに甘酒を飲ませて大丈夫?

甘酒

ひな祭りの定番の飲み物といえば甘酒ですが、子どもに飲ませても大丈夫なのでしょうか? 結論から言うと、「アルコールを含まない甘酒」であれば問題ありませんが、「酒粕から作られた甘酒」は避けるべきです。ここからは、甘酒の種類や子どもへの影響、安全に楽しむ方法について詳しく解説します。


甘酒には2種類ある

甘酒には、「米麹(こめこうじ)から作られたもの」「酒粕(さけかす)から作られたもの」の2種類があります。

  1. 米麹甘酒(ノンアルコール)
    • 米麹と水を発酵させて作る
    • アルコールを含まないため、子どもも飲める
    • 自然な甘みがあり、栄養価が高い(ビタミンB群やブドウ糖が豊富)
  2. 酒粕甘酒(アルコール含有)
    • 酒粕を湯で溶かし、砂糖を加えて作る
    • 微量のアルコール(約1%)が含まれるため、子どもには不向き
    • 加熱しても完全にアルコールが抜けるわけではない

子どもに甘酒を飲ませる場合は、必ず「米麹甘酒」を選ぶことが大切です。


酒粕甘酒のアルコールは加熱すれば大丈夫?

「加熱すればアルコールが飛ぶ」と思われがちですが、完全にアルコールを抜くには長時間の加熱が必要です。

  • 一般的な温め方(80℃程度、数分) → アルコールが一部残る
  • 長時間煮詰める(沸騰状態で10分以上) → ほぼアルコールは抜けるが、風味や栄養が損なわれる

そのため、子どもに与えるなら最初から「酒粕甘酒」を避け、「米麹甘酒」を選ぶのがベストです。


子どもにおすすめの甘酒の飲み方

子どもに甘酒を飲ませる場合は、次のポイントに注意しましょう。

「米麹甘酒」かどうかを確認する(商品ラベルをチェック)
薄めて飲ませる(甘さが強いため、お湯や牛乳で割ると◎)
初めて飲む場合は少量から(アレルギーや消化の負担を考慮)

また、甘酒は栄養豊富ですが糖分も多いため、飲みすぎには注意しましょう。


まとめ

ひな祭りは単なる「女の子のお祭り」ではなく、もともとは「厄払い」の儀式でした。

  • 古代中国の上巳の節句が起源
  • 平安時代の貴族文化「ひいな遊び」と結びついた
  • 江戸時代に「桃の節句」として定着し、全国に広まる
  • ひな人形には「お守り」の意味があり、厄を引き受ける役割を持つ

現在でも、ひな人形を飾り、伝統的な食べ物を食べることで、家族の絆を深める大切な行事となっています。歴史や意味を知ることで、より一層ひな祭りを楽しめるのではないでしょうか?